オルタナティブ・ブログ > 一般システムエンジニアの刻苦勉励 >

身の周りのおもしろおかしい事を探す日々。ITを中心に。

私が「はてな」をすごいと思う理由

»

はてながすごいところ、それは「はてな村」を開拓したところであると考えています。

 

はてなの知名度は低い

上のITmediaの記事によれば、はてなの近藤社長が「はてな」を誰も知らないことを認識して驚いた、とのことです。

確かにはてなの知名度が低い事を実感することは多いです。私がブログを書いているということを知っている友人に「有名なの?」と聞かれる事があります。それに対して「知名度低いよ。はてな界隈でも話題にならないし。」と答えると「はてなって何?」と聞かれます。他のオルタナブロガーの中でもはてなの存在を知らない人は少なくありません。(エンプラ系のITの世界ではすごい人でも、です。)

でははてなはすごくないのでしょうか。私ははてなはすごいと考えています。それはインターネットの上に領土を築く事に成功しているからです。

インターネットは広い

今日ではインターネットはとても広大な空間になっています。日本国内でも様々なサービスが開発されていますが、国境がないために海外からも多くのサービスが入ってきています。また、開発に多くの資本を必要とするサービスもありますが、日曜プログラマが趣味のレベルで始められるサービスも少なくありません。そこから商業ベースに乗ることもありますので、学生によるベンチャー的な挑戦も盛んです。

以前のインターネットはそこまで広大な空間ではありませんでした。Yahoo!JAPANによるカテゴリに従えば、だいたいは自分の興味のあるサイトを発見することができました。また、自分の希望通りのサイトにリンク集があればその興味の裾野を広げていく事ができました。

これは今ではweb1.0的な世界だったと回想されます。人と人とのつながりはそこまで積極的でなく、足あと帳、掲示板、カウンターのキリ番などをきっかけとしてメール中心のつながりだったと言えます。メールは誰と誰が交換しているか公開されませんので、つながりが広がっていく事はありませんでし、どこに村ができているか把握しづらいところがありました。

はてなの運営開始は2001年とあります。これはweb2.0的な世界の代表的プレイヤーであるgoogleの日本法人が設立された年でもあります。この2年後の2003年にはブログ技術を支えるシックスアパート社の日本法人が設立された年であり、このあたりから日本のインターネット界隈もweb2.0へ生まれ変わっていく事になります。

私はこの2003年からの数年間、インターネットはサービスの多様化と参加者の増加により広大すぎるように感じていました。以前はメールとサイト閲覧以外の用途で積極的にインターネットに情報発信をする人は限られており、誰もがなんとなく似たようなオタクさを秘めていたように思います。ところがユーザの裾野が急に広がり、誰ともつながりにくくなったように感じました。田舎の農道で人とすれ違う時と、都会の雑踏で人とすれ違う時の違いのようなものがありました。

そこにあったのは「はてな」でした。おそらくは近藤社長のキャラクターを当初のきっかけとして、はてなははてなーっぽいキャラクターの人々により形成されるはてな村的な共同体に成長しました。それまでにも2ちゃんねらであったり、スラド民であったりと他にコミュニティはありましたが、原則として全ユーザがIDにより識別可能なのがはてなに特徴的であったことだと思います。はてなー因子を持つ人々がはてなに立ち寄ればそこに居付き、はてなー因子を持たない人々ははてなを立ち去る事ではてな村は成長してきたと考えています。

今ははてな以外にもたくさんのコミュニティがあります。それはSNSだったり、既存のサイトがSNS的な要素を取り入れてコミュニティ化したものであったりします。では足あと機能や誕生日お知らせ機能を作ればコミュニティはできるのでしょうか。それは否です。そうやってゴーストタウン化したサイトは数多くあります。cookpadのように一旦は成功したのに会員を減らすような失敗をしてしまったサイトもあります。コミュニティを作ることはとても難しいことです。

はてな村のすごいところ

でははてな村と言えるコミュニティに成長したことのメリットは何でしょうか。RSSリーダーであれ、ソーシャルブックマークであれ、ブログサービスであれ、サービスは相互に引越しをすることができます。それを引き止める、すなわちサービス忠誠度を上げるのに効果的なのは機能が充実していることであったり、惰性であったり、アフィリエイトや懸賞による収入が期待できることなどが考えられます。ここにアイデンティティを持ち込むことも可能です。自分ははてな民だ、という自負からはてなのサービスを利用しているという方もおられるのではないでしょうか。また、はてな村の他の皆さんの意見が自然と目に入るというメリットを享受できることも今のはてなのメリットです。こういった要因により、形成されたコミュニティが利用者のサービス忠誠度を上げていると思われます。

これは一般的な企業に例えるならばブランドロイヤリティが高いと言い換えることができるでしょう。その商品を使っている既存ユーザと自分が近い存在であり、彼らと同一視されたいという要望は商品の購入にプラスに働きます。ベンツに乗っている人が尊敬されるのを羨ましく思っている人は、大金を手にした時にベンツを買いたいと思うでしょう。RX-8を走らせる人をかっこいいと思って眺めている人は、同じくいつかRX-8を買いたいという気持ちを持っているでしょう。既存はてな民のものの見方、考え方に共感する人は何かのきっかけにはてな民になる可能性が高いと言えます。

コミュニティ作りは難しい

上でコミュニティを作ることは難しいと言いました。これは商品を思い通りに売ることの難しさに通じるところがあります。RX-8をもう一度取り上げ、商品企画の段階で「団塊世代にもう一度スポーツを」がキャッチフレーズだったと仮定します。もしRX-8が初期の販売活動に失敗し、金持ちの坊ちゃん層に大量のRX-8が販売されてしまったらどうでしょうか。おそらくメインターゲットにしたかった団塊世代は嫌になることでしょう。商品開発の時点で団塊世代が喜びそうなオプションを多数準備していたら大量の不良在庫を抱えてしまいます。

売り込む層を事前定義し、商品を企画し、生産して、販売する、という流れはコミュニティ作りに似ています。呼び込みたい層を事前定義し、コミュニティ維持のためのサービス群を企画し、開発して、リリースするという流れになります。例えば今のはてなの機能は理系寄り、オタク寄り、PC詳しい人寄りといった印象を受けます。もし初期にサイトを周知する時期において作戦を誤り、女性雑誌にQRコードつきの広告を配布して女性ユーザを集めまくっていたとしたらどうだったでしょうか。女性だらけのところにそれら理系ユーザは参加したでしょうか。はてな的でないユーザをうまく排除した事、それがはてなのすごいところであると思います。私は大学時代を京都で過ごしましたが、京都もそういう文化が育っています。無駄な衝突を避けるというか。

今のはてなは平和だ

はてなの戦略がどうであったか知りませんので鶏が先だったか卵が先だったかよくわかりませんが、今のはてなは利用者の性質とサイトの機能がバランスした理想的なコミュニティになっていると言えます。少なくとも当面の間は既存ユーザと仲良くやっていけることでしょう。しかしその裏を返せば、冒頭のITmediaの記事のように他のユーザを呼び込むことは難しいと思われます。現在のはてな村がコミュニティとして完成しているからです。また、これ以上のはてな民を発掘するのは厳しいでしょう。若い潜在はてな民が加齢とともにネット環境を手にして補充されてくる事はあっても、今ネット環境がなくて潜在になっている大人は少なそうです。はてなーな人は既にはてなーになっている、とも言えます。と考えると、現行はてな村の成長を維持することは厳しいように思います。いくら機能を追加して、いわゆる水平的に広げていこうとしても縦に流れる水の量=使うユーザの数が変わりそうにありません。今のはてな民の多くはネット大好きでしょうから、既に限界に近いほどネットを使っている人が多いかもしれません。となると今以上に1人あたりの利用時間を拡大していくことも難しいでしょう。

ここから拡大を考えるとすれば、いわゆる垂直的に発展する方向が考えられます。はてなのコミュニティ形成がなぜうまくいったかを過去の資産から分析し、コミュニティ形成の成功モデルを作成します。あとは女性エンジニアであったり、主婦であったり、中高生であったり、それぞれのコミュニティに合わせたサイト設計を行なって初期ユーザの呼び込みを成功させればうまくいくでしょう。その点においてはmixiやモバゲーなどよりもはてなのほうが優れた力を眠らせているのではないかと思います。

また、今は全体で大きなはてな村になっているためにはてな村の辺境でまごまごしているユーザを取り込みきれていないかもしれません。しかし彼らを取り込もうとしてサービスの軸をずらしてしまうと、既存はてな民に影響を与えてしまう恐れがあります。1つの網で多くの獲物を捕えたいときに、どこに中心の狙いを定めて網を投げるか、という問題になります。もし1つの網というところのこだわりを捨てる事ができれば、既存はてな民を分割してそれぞれの特徴にあったサービスを提供することもひとつの方向性です。例えばネガコメ派とポジコメ派に分割した場合、ポジコメがしたいけどネガコメが目に付くのが嫌で不参加になっていたユーザを引き寄せることができます。旧来のカオスな感じが好きな人には両方を表示する機能を搭載して剥落を防ぐということも考えられるでしょう。いきなり新しいコミュニティを作ろうとするよりも、そういった隣接分野を目指す方向性のほうが確実に裾野を広げていけることができそうです。

収益はどうする

上のほうでインターネットのサービスを運営するのは安上がりというようなことを書いていますが、決して無料で続けられるものではありません。ボランティアで運営していくならともかく、そこから収益を上げて何期も企業を存続・成長させるのはとてつもなく大変なことです。インターネットを広大な平原とすれば、ユーザは牛で、サービスは農場です。牧場主は良い牧草地を作って農場を開きます。そして牛は牧草を食べに農場に入ります。そしてここから収益をあげなくては牧場主は食べていけません。

多いのは広告やアフィリエイトによる収入です。ユーザは広告を目的としてサイトを訪れることはありません。広告はユーザに取って副次的なものです。これを例えるならば牧草を食べに来た牛の糞を集めて販売するようなモデルと言えます。例えは悪いですが、牧草を食べた牛は必ず糞をしますので、サイト利用者を集める事ができるならば長期に安定して収益基盤を築く事ができます。

サービスを有料化するという方法も考えられます。これは牧場の入場料を取ることと言えるでしょう。となると周囲よりも良い牧草がなくてはなりません。牧草の質を追求していくことが肝要になるでしょう。

他にはボランティア運営者により運営を賄う=牧草の世話をできる牛を探すことや、出版や商品開発によりリアル世界で成功する=太った牛を肉にする、といったマネタイズ手法が考えられます。

この点においてはてなが優れていることは、均質な牛が勝手に集まってくる事です。そしてこれからも集まり続けるだろうということです。先日はてなの広告商材がPDFで公開されていました。どこの牛の糞かわからない肥料よりは成分がよくわかる肥料のほうが使いやすいでしょうから、はてな牧場からは均質な肥料が取れるということを訴求できます。(ただしその成分の肥料を欲しがる人がいるかどうかは別ですが)

広告掲載について
http://hatenasales.g.hatena.ne.jp/filelist

この面から考えてもせっかく均質になっているはてなの利用ユーザを崩して新しい世界からユーザを呼び込む事がプラスになるかどうか不安な面があります。もし広告が売れないのであれば、それよりもピンポイントにお金を投じてくれるような企画を考えるということもひとつの手です。はてなを広告の出稿先のひとつとしか見ないような企業から少ないお金をもらうよりも、はてな村のはてな民にこれを見てもらいたい、ですとか一緒に何かをしたい、という企業からまとまったお金を受け取れるような企画を検討することもひとつの方向でしょう。mixi年賀状はその好例であるかと思います。

はてながんばれ

私のブログははてな界隈ではほとんど話題にあがりません。むしろ↓のタグのほうが有名なのではないかと思います。

タグ「明日山口に教えてやる」を含む注目エントリー - はてなブックマーク http://b.hatena.ne.jp/t/%E6%98%8E%E6%97%A5%E5%B1%B1%E5%8F%A3%E3%81%AB%E6%95%99%E3%81%88%E3%81%A6%E3%82%84%E3%82%8B

でもはてなが好きです。これからもインターネットの楽しいところをたくさん見せてください。

 

Comment(2)

コメント

私は、はてなの名前をきいたことがある程度で、全く中身は知りません。使ったことがないです。
使わなくても不自由ないですし、使うと便利だよと教えてくれる人もこれまでいなかったからです。
Googleは会社の同僚に教えてもらって使うようなったのがきっかけです。
はてな村の人は口コミをしないのでしょうか。

テクネコさん、コメントありがとうございます。
我々の世代にとってのアスキー的存在と言ったら言い過ぎかもしれませんが、何かやってくれそうな感があって目が離せません。夢を見させてくれそうな魅力を持っています。
クチコミで広がる、というのはIT業界ならありえるかもしれませんが非IT業界では厳しそうですね。そもそもソーシャルブックマークであったりRSSであったりというもの自体がクチコミで広げられるほど敷居が低くないように思います。

コメントを投稿する