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IT製品は普通名称になりにくい

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世の中には一般名詞化、普通名称化した商標や商品名がたくさんあります。

カップヌードル、ホッチキス、写ルンデス、ホカロン、シャチハタなどが
普通名称化した商標の代表的なものです。
そういえば中学生の時に英語の辞書を引いていてxeroxの項に
「動詞:コピーを取ること」と書いてあって驚いた事を思い出しました。

これらを何日かかけてコツコツとメモしていました。
そしてさきほど「きっとネットで同じ事調べてる人がいるだろう」と思って
検索してみたところ、wikipediaに項目がありました。

普通名称化した商標一覧

自分の努力はなんだったのかと思いました。
しかし自分の作ったメモに列挙した商標のすべてが
wikipediaに出ていたのには驚きました。集合知には勝てません。

さて、心強い味方が見つかったところで、本題に行きます。
IT製品の名前は普通名称化しているのでしょうか。

例えば日本の6割のPCでスタートページがYahoo!Japanになっているそうです。

スタートページは「Yahoo!JAPAN」が6割(ITmedia NEWS)

しかし私の周りでインターネットをしたり検索をしたりすることを「ヤフーする」とは言いません。
知り合いにはSEもいますがそうでない人もたくさんいます。
インターネットのつなぎ方がわからないという電話を先輩からよくもらったりもします。
(その先輩はお世話になった方ですので、いつの日からか24×365でサポートしています。)

それでは検索する事を「ググる」というのが通じるかというと、普通の人にはそれが通じません。
また、ググるというのが通じる人にしても、文字通り「googleで検索する」という意味になります。
その言葉を聞いてYahoo!やgooで検索するということは少数例のようです。

ホカロンや写ルンデスのすごいところは「ホカロン買って来て」と頼んで
そのメーカの商品以外の商品を買ってくることが自然に感じられることです。
すなわち、ホカロンという言葉が指すものが使い捨てカイロ全体であることです。
なのでホカロンを買いに行って桐灰の使い捨てカイロを買っても
違和感を感じる事がありません。

しかし、上のwikipediaのページを見てみると、
「写メール」と「着うた」が少しIT業界寄りなくらいで、
他に収載されているものがありません。
そこで、自分の身の回りから考えてみました。

携帯音楽プレーヤーはどうでしょうか?
ひょっとするとiPodが普通名称化するのではないかと思って
見守っているところです。しかしうっかりiPodじゃないシリコンプレーヤを
「新型iPodですか?」と聞くと気まずくなるのはなぜでしょうか?
まだまだiPodはApple社製の特別な製品のことを指しているように感じます。
私はと言うとTVQという消えたフォーマットのプレイヤーを持っているので
iPodは意地でも買いません。音楽も聴きません。No Music, No Life!なんてのは他人事です。

CPU市場はどうでしょうか?
Pentium(Core Duo)はCPUの世界でかなり大きなシェアを握っています。

2006年のプロセッサ市場、AMDがシェアを拡大

上のニュースは海外の事情なのですが、日本では海外と比較して更に
AMDよりもIntelが強い傾向にあるという背景があります。
そのように考えると、パソコンショップで「Intel下さい/Pentium下さい」という人が
いても良さそうですが、どうもそういう人はいないようです。
もしそのように店員さんに話しかけるとカモられるからかもしれません。

73.9%の独占的安定シェアを突破していると思われる
Intel製CPUですら普通名称化していないのですから、
他のもので普通名称化できそうなものを探すのも大変です。

オブジェクト指向の事を「JAVAで設計してね」とは言いませんし、
関係データベースを使うことを「Oracleでやろう」とは言いません。
それらの用法はまさしくその商品名を言いたくて使っているケースだからです。

感覚的には、企業向け製品は少し難しそうです。
コンシューマ周辺に範囲を絞って探ってみます。

少し前ならばPCのことを「キューハチ」と呼ぶ方もおられたかもしれません。
それはその人が時代についていけなかったのか、それともその人が
本当にキューハチを欲していたのか、今となってはわかりません。

オフィスソフトの場合は、最初からバンドルされていることも多いですし、
互換性の問題からMicrosoft製のWordとExcelのシェアが高いです。
それぞれ明確にMicrosoftの製品を意識した上でワードとエクセルと呼ばれます。
決して一太郎の事も含めてワードと言うことはありませんし
ワードを一太郎とは言いません。いや、ワードを一太郎と言う人は稀に見ます。
それは一時期のジャストシステムがそれだけの力を持っていたという証でしょう。
そういえば花子とか三四郎、五郎ってのもありましたね。元気にしているでしょうか。

フォトレタッチソフトで「フォトショで修正する」という言い方がありますが、
このあたりは段々普通名称化のボーダー例のように思います。

「ウイルスバスター」はトレンドマイクロ社の製品です。
「ノートン」または「アンチウイルス」はシマンテック社の製品を指すことが多いです。
ともに、アンチウイルスソフトの代名詞です。
このあたりも「ウイルスバスター買ってくるわ」といって
違う会社のソフト買ってくることはありますのでボーダー例かと思います。
ついでにウイルススキャンがネットワークアソシエイツ社の商標であることが判明しました。びっくり。

 

以上とりとめもなく考えてみました。ITの世界にはソフト・ハードを問わずに
「デファクトスタンダード(業界標準)」となるまでシェアを握ったものがたくさんあります。
しかしそれが普通名称化するほど普及することは比較的珍しいようです。

それでは「業界的な言葉」がすべて普通名称化しづらいのかというと、
上のwikipediaのページにはケブラー、ユンボ、パワーゲート、テトラポッドあたりの言葉が出ています。
普段の生活ではあまり使わない言葉ですが、これらは普通名称化しているようです。
それなら何か別の理由があって普通名称化が妨げられているのではないでしょうか。

それはワードとエクセルの例で言うように、ワードと思って一太郎を買ってきたら
動かない!というトラブルで痛い目を見た経験によって、
正しく名前を使うことを学習したユーザが多いせいかもしれません。

その分、JPEGでやり取りすることの多いアマチュアのフォトレタッチの世界や、
ウイルス監視さえできれば良いというアンチウイルスの世界では
シェアの大きな製品が普通名称化する素振りを見せ始めているように思います。
それを狙って似たような機能、名称で低価格な製品というのが
多く投入されているようです。

競争が激しいIT業界ですので、様々な製品が迅速に市場に投入されます。
普及していると思っていたソフトが急速にシェアを失っている事も
珍しくありません。そのせいで、ワープロソフト全般を指して「一太郎」と
呼ぶことをおかしく感じるように、普通名称が定着しづらいのかもしれません。
うっかり時代に取り残されてしまったような発言になりがちですが、
CD-RやUSBフラッシュメモリの事を「ちょっとー。おっきいフロッピー取って」
と言っても伝わる事は伝わりそうな気がします。

私は結局「これだ!」というものは見つけられませんでした。
皆さんの周りで普通名称化したIT製品がありましたら教えて下さい。

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