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そのエレベータ、安全ですか?

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今朝(2007年6月8日8時30分頃)、東京メトロ東西線の停電に居合わせました。
いつもどおり駅に着いて電車が止まったと思ったら、
突然車両内の電気が消えました。ホームの明かりがありましたし、
すぐに復旧したのでさほど怖くはありませんでしたが、
やはり乗り物に関する異常は些細なものでも恐ろしいです。

乗り物と言えば、本ブログでもジェットコースター
高速船の事故について考えてみたことがありました。
思えばエレベータも乗り物の一種と言えると思います。

日本のエレベータの乗り心地の良さは世界的に見てもトップクラスだそうで、
プロジェクトXでも取り上げられていました。
良い製品は床に立てた十円玉が倒れないまま昇降できるそうです。

また、世界最高クラスの高層タワーである台北101には日本のエレベータが
導入されており、分速1000メートルもの猛スピードで稼動しているそうです。
時速60キロにもなることから空気抵抗を考慮する必要があるため、
カゴが流線型になっているとか。是非一度乗ってみたいものです。

更に話は横道にそれますが、1000メートルクラスの超高層建築が実現した場合、
それを1本の連続したエレベータで昇降するには問題が伴います。
それだけ長いワイヤーは自身の重量だけで大変な重さになってしまうからです。
それを日本のエレベータメーカが打ち破ります。
リニアモーターカーと同じ仕組みで完全ワイヤレスなエレベータの実験に成功したとか。
ちなみにワイヤレス化することにより、エレベータが上下左右前後にも
動くことができるようになり、建物のデザインの自由度が増すというメリットもあります。
地上1000メートルに電磁石で浮くというのは、電磁石で時速500キロを出すのと
どっちが怖いのか想像もつきません。でも両方乗ってみたいです。

さて、そんな便利なエレベータですがここ最近になって
点検時にワイヤーの破断が発見される事例が多数報告されています。
エレベータは法定点検があり、1年に1回は必ず点検するものと決まっています。
その実施結果に対して「見落としはなかったのか?」という問題が出てきました。

エレベータは、複数本の素線がより合わされたストランドと呼ばれる束が、
さらに複数本より合わさって構成されたロープで吊り上げられます。
ロープは1本でも十分にカゴを支えられる強度があります。
そのロープが複数セット使用されているとあれば、かなり運が悪い人でなければ
全部が切れてしまうことは無いでしょう。

何本か素線が切れ始めても日常の運用に支障がないことを知ってしまえば、
人間の性質として、検査に身が入らないことは想像に難くないです。
そうこうしているうちに、危ないエレベータが数多く発見されてしまいました。
どうやら日本中にはストランドが切れたままぶら下がっているエレベータが
たくさんありそうです。死亡事故のときに検査したのは何だったのでしょうか?

万一の場合にも、エレベータには安全装置があります。法定の装備だそうです。
ロープが全部切れる=そのまま落ちることはありません。

その安全装置も動作しないでカゴが落下を始めた場合、
空気抵抗が大きくて自由落下とは程遠いゆっくりさで落ちるので
重大な事故には至らない、という説もあります。
エレベータシャフト内には空気の逃げ場が無いからです。
しかしこれは実験によって可能性の低い話だということがわかったそうです。

そうするとやっぱり落ちることになります。
エレベータの下には漫画のごとくバネがついていますので、
それらがあなたをしっかり受け止めます。
着地の瞬間ジャンプしてもダメージは変わりませんのでご注意下さい。

 

記憶に新しいところでは、シンドラー社製のエレベータによる死亡事故がありました。
エレベータの事故と言えば、落下事故というイメージが一般的と思われますが、
こちらの事故ではブレーキ部品の故障により、動いてはいけない場面で
カゴが上昇してしまうという意外な原因でした。
ブレーキが常に効いたまま長いこと運用を続け、ブレーキパッドが磨り減ったせいで
扉が開いて人が乗降している最中にカゴが吊りあがってしまったそうです。

素人からの意見になりますが、車のブレーキには磨耗を知らせる針が
仕込まれています。「これ以上このブレーキパッドを使うと危ないよ」
という時期が来るとブレーキがすごい音でキーキー鳴きます。
これがエレベータにも適応されていれば、エレベータ工学に詳しくない人でも
「最近キーキー言ってるけど大丈夫か?」ということを管理会社に問い合わせるくらいの
きっかけになると思うのですが。そんなに技術的に難しいのでしょうか。

日々の安全は日々の地味な努力によって支えられていることを確認させられる一件です。

# エレベータに大きな鏡がついているものがありますが、
あれは容姿を整えるためのものではありません。
車椅子の方がエレベータから出るときに後方を確認しやすいようにするものです。


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