梅干を作る
奥さんの実家に梅の木がある。
「梅を切らずして桜切る阿呆」
と言われるように、梅は剪定してやらなければいけない。
昨冬、梅のつぼみが着かない頃に奥さんの実家に行った。
少し枝が伸びているようだったので、「私がやりましょうか?」と申し出て剪定をした。
先日になって、今年は梅がとても良く実ったと電話があった。
名古屋に生まれ育った人間としてはタダで実った梅を
そのまま土に還すのはもってぇぁにゃー(注:もったいない)と思った。
色々予定が立て込んでいたので、自分で取りに行く事は叶わないように思われたが、
「もったいないですね」「せっかく実ったのに」「きっとおいしいでしょうね」
という言葉に「梅をくれ」という念を込めて伝えたところ……
UME2.0
梅が来た。UME2.0と書くとUML2.0と間違いそうだ。
私と比較すると飛車と歩ほど肩書きに違いのあるお義父さんに
これだけの数の梅を収穫してもらったのかと思うと申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
せめてものご恩返しにおいしい梅干にして贈ろう。半年かかるけど。
まだ青いのでしばらく熟すことにした。
傷がひどい梅ときれいな梅にわける。
これが数日放置した後の様子。
ところどころに赤く熟れた梅がある。
見た目だけでなく香りもスモモに似ている。
レモンをかじってトパーズ色の香気がするなら
この梅をかじったならばルビー色の香気がするのだろうか、
ということを考えてみる。実は高校の国語の資料集で
そのフレーズを見たことがあるだけでその前後は一文字も読んだ事がない。
メッキがはげるのでこれ以上は触れないでおこう。
(注:メッキは伏線になっている)
焼酎を用意する。大学のサークルで何度かこのお酒にお世話になったが、
あまりにも口あたりがきついので自主的に禁止した。
その代わりに大五郎やビックマンなどが投入されて余計につらくなった。
梅についたカビを落とすため、焼酎で洗う。
実はこの工程に入る前に、梅のヘタを外さなくてはならないが写真を撮り忘れた。
竹串でヘタを取るのを忘れずに。
洗い終わった梅をボウルにあげる。
忘れずにボウルも消毒しておく。
なんと今回は梅だけでなく、漬けるための容器まで
お義父さんが持ってきてくれた。ありがとうございます。
それくらい気が回らないと飛車にはなれないのかもしれない。
「環境ホルモンは出ません!」と
爆発スタイルとエクスクラメーションマーク入りで力説される。
高校のときだったと思うが、まだ環境ホルモンという言葉が
有名になる前にNHK教育のサイエンスアイという番組で
環境ホルモンのことを知った。25メートルプールに1滴で
生物の調子が狂う物質だという。その時はもう生命は子孫が残せなくなって
みんな絶滅するしかないと思ったが、10年経った今もそんなことは無い。
人間が子孫を残すにあたっては環境ホルモンよりも
出会いのほうが3000000倍くらい強い影響力がある。
塩を用意する。今回は重量比で梅の15%とした。
にがりが多めに残ったおいしい塩を用意したので、
肉眼で見ると黄色味が差した白色をしている。
それを蛍光灯の光の下で、反射を起こすステンレスボールの中に入れて撮影した。
デジカメのホワイトバランスのテストでもこんなひどい環境じゃないと思う。
ボウルの中で塩をまぶす。
焼酎で濡れた梅を転がせば塩まみれになるはずなのだが……
この塩は粒子が粗かったからか、全然絡まなかった。
梅干に梅ジャムに梅ジュースに梅ガムなど様々なフィールドで活躍する梅も
「こいつ絡みづらいわー」と思っている事だろう。
なんとか梅に塩をまぶして、全量を甕に並べる。
普通にやれば塩がボウルに残るはずなので、
残った塩を上からパラパラとかける。
上から重石を載せる。梅干の世界において、重石に適正な重量というのは無いようだ。
今回は1.5kgの梅に対して2kgの重石を用意した。
それで24時間後に様子を見てみると梅酢の上がりが良くない。
そのため3kgにしてみたところ、その翌日には内蓋まで梅酢が上がり、
すべての梅が浸かった状態になった。
梅干が何kgならば重石は何kgというのはOracleで言えば
テーブルの個数に基づいてSGA_MAX_SIZEはいくつだと決めつけてしまうようなものだ。
梅の性質や甕の大きさなどによって、柔軟に対応しなくては良い梅干はできない。
自動SGAメモリー管理のように梅酢の上がり具合によって
動的に重石に注水するなどして重量を変更してくれる重石があったら欲しい。Omoshi10g。
そして梅干は赤紫蘇を買いに行くまでは監視するだけになる。
梅干に傷ついた梅を使うと失敗しやすい。
傷の部分にはカビが既に入り込んでいる可能性が高いからだ。
そのため、検定に不合格となった梅がたくさんある。
それらの梅を焼酎で消毒して竹串で穴をあける。
この写真の手がか細いのは自分の手じゃなくて奥さんの手だからだ。
そしてガラス瓶に詰める。
たまたま用意した瓶がぴったりで嬉しかった。
ぴったんぴたんと梅ぴったん。
そして蜂蜜を注ぐ。1kgの梅に対して500gくらいの蜂蜜を入れた。
全国はちみつ公正取引協議会のラベルつきの純正蜂蜜だ。
先日、純正はちみつである旨のラベルがついた蜂蜜の
2割は加糖したり水あめを加えたりしたものだったというニュースがあった。
本物の蜂蜜はコップの水の中に垂らすと溶けずに沈むらしい。
加糖などがされていると、添加された成分が水に溶けやすいために
溶けながら沈むと言う。調べてみるとこの蜂蜜は本物だったようだ。
本当はヒタヒタくらいが良いのだと思うが、
ほんのわずかに蜂蜜が足りず。
水分が抜けて縮むとちょうど良くなるかもしれない。
そういうわけで梅干より早く完成する梅シロップが準備完了となった。
冷蔵庫で1ヶ月くらい寝かせた後に解禁するつもりである。
解禁の日には暑い日を選んでカキ氷にかけて食べたい。
薄めて飲めばレモネードのような味がするとか。
さて、今年の梅干の梅サイドの仕込が終了しました。
ここからは紫蘇サイドの仕込になります。
こちらは昨年に作った梅干です。
瓶内の右側に入っている赤紫蘇はベランダで取った紫蘇にしました。
しかし今年は赤紫蘇を植えるタイミングを逃してしまいました。
仕方なく、お気に入りの八百屋で買ってきました。
ちょうど今週、べつやくメソッドで有名なデイリーポータルZに
「デジカメは紫が苦手?」という話が掲載されました。
この写真も肉眼で見た色とディスプレイで見た目が全然違います。
以下、ツンデレな赤紫蘇をお楽しみ下さい。
梅「ちょっおまっ赤紫蘇!何やってんだ塩なんかかぶって。
お前は俺みたいな実と違って葉っぱなんだから枯れちまうぞ」
赤紫蘇「べ、べつにあんたのためにアク出してるわけじゃないんだからねっ。
ちょっと塩で揉まれたい気分になっただけなんだから!」
梅「お前ぼろぼろじゃねーか。おいもうやめろって。」
赤紫蘇「あ……あんたには……か、関係ない……ほっといて……(沈黙)」
梅「おい、赤紫蘇?返事しろっておい。生きてるか?
3回もアク抜きして平気なわけないだろ。赤紫蘇ー!」
梅「こうなったら俺の梅酢でっ!待ってろ!すぐ行くからなー」
『じゃばっ』
カッ
赤紫蘇「ごめんなさい。こんな時、どんな顔すればいいか分からないの」
梅「笑えばいいと思うよ」
そういうわけで、赤紫蘇はツンデレなアントシアニン系の色素を
持っていますので、pHが高いと青く見えます。
その色素は「シソニン」と言います。
直球な名前がですが可愛いですね。シ、シソニン(;´Д`)ハァハァ
梅から出る梅酢は赤紫蘇を加えていない間はほぼ無色透明です。
これは思いっきり酸性です。ので、それを紫蘇に加えると
紫蘇のシソニンが赤くなります。
梅酢の酸は昔から簡単に大量生産することができたので、
奈良の大仏のメッキは梅酢により行われたとも言われます。
それで前段でメッキがはげるとか言ってみたテスト。
最後のところの工程を全然説明しませんでしたが、
赤紫蘇を葉っぱだけにして3回塩もみします。
3回とも塩もみして出てくる水分をきっちり捨てます。
塩もみが終わった紫蘇に白梅酢を加えてほぐしていると
梅酢が真っ赤になります。
それを紫蘇ごと梅干にかけると完成です。
もし紫蘇を食べる習慣がない方は紫蘇を抜いて
赤くなった梅酢だけを入れるとカビにくくなります。
梅干にカビが入る原因の多くは紫蘇の消毒不良だそうです。
また、紫蘇の葉っぱの形をきれいに残したい方は
全工程で力をいれすぎないように気をつける必要があります。
私はすべての梅干に均等に色がつくように
一度梅干を取り出してから全体にまんべなく紫蘇を入れました。
うちの母は上から載せるだけにしてましたが
それでもきれいに発色してました。気休めかもしれません。
以上、梅干作りの記録でした。