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ドラゴンクエストの宿屋の市場

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ドラゴンクエストなどのロールプレイングゲームでは、
町と町の間を旅するという設定が多いです。

町と町を結ぶ荒地を移動するときは敵が出現します。
敵に襲われるとダメージを受けてHP(体力)が減ります。

HPを町以外の場所で回復するためには、
町の道具屋で「やくそう」などの道具を購入する必要があります。

HPを町で回復するには、宿屋を利用します。
ドラゴンクエストシリーズのいくつかでは、
宿屋の値段は変動制です。
先へ進むにつれて値段が高くなる仕組みです。

仮に、主人公パーティの収入が一定だったとします。
そうすると、宿屋の使用頻度は以下のグラフのようになります。

たーらーらーらーらったったーん

価格が高い状態、すなわちグラフの左側の状態では
宿屋に泊まる回数を抑制します。
すなわち数量が少なくなることを意味します。

ゲームの序盤ではお金が少なく、気軽に宿屋に泊まることができません。
そのため、HPがギリギリの状態でも戦いを続けることになります。

価格が低い状態、すなわちグラフの右側の状態では
宿屋に泊まる回数を抑制しません。
すなわち数量は多くなることを意味します。

ゲームが進んでお金が貯まると、気軽に宿屋に泊まることができるようになります。
全員のHPがゼロになってパーティが全滅すると、
「おお、ゆうしゃよなさけない」と叱られてスタート地点に戻らなくてはなりません。
それは面倒なのでリセットボタンを押すと、セーブポイントまで戻ってしまいます。
このため、宿屋には念のため泊まっておく、という進め方になりがちです。

ここで、ホイミ系の魔法が使えるパーティの場合を考えます。

ホイミは回復系の魔法です。そうすると、魔法でHPを回復すれば
宿屋に来る回数を減らすことができます。

ホイミの利用回数には限度があります。限界が来たら
宿屋に泊まれば、MPも一緒に回復することができます。
ので、まったく宿屋いらずの状態にはなりません。

この条件で、宿屋の値段が変動するところを想像してみます。
このパーティでは、HPの減少を「ホイミで回復する」という代替手段で解決できます。
そうすると、宿屋を割高に感じると、利用回数が減りやすくなります。
宿屋を割安に感じるならば、いつもどおり利用します。

ホイミベホイミベホマラーベホマズン

価格がP1だけ変動すると、数量がQ1ほども大きく変動します。
このことを価格弾力性が大きいと言います。
弾力性が大きいものと言えばスーパーボール。
スーパーボールは少しの力でたくさん弾みます。
「私たちはホイミがあるので、ひとまずホイミでしのぎます。」という意思決定です。

この場合、少しの価格変動が大きな需要量の変動を生みます。
身近な例でいうとレンタルビデオの通常価格と割引価格でしょうか。

一方、戦士ばかりのパーティの場合を考えます。
回復キャラがいません。
回復にはアイテムの利用か、宿屋という選択肢しかありません。
アイテムによる回復は宿屋と比較すると費用対高価に劣ります。
傷ついたまま外に出て、更にひどい傷を負ってしまうと、
宿屋よりも割高である回復アイテムを使わざるを得ません。
そこで、町では積極的に宿屋を利用することになります。

 

棺桶ひきずったまま宿屋に泊まりたくはない。

# 2007/6/5 上図においてグラフの補助線がずれていた点を修正。

価格がP2だけ変動すると、数量がQ2しか変動しません。
このグラフのP2の幅は、上のホイミを使えるパーティのグラフのP1と等しいです。
なのに上はQ1ほども変動し、こちらはQ2しか変動しません。
このことを価格弾力性が小さいと言います。
弾力性が小さいものと言えばお手玉。
お手玉は低いところから落としても高いところから落としても
くしゅっと言ってあまり跳ね返りません。
「私たちには宿屋しかありませんので、お願いですから泊めてください。」という意思決定です。

この場合、少しの価格変動は需要量の変動にあまり影響しません。
身近な例でい言うとタバコの値上げでしょうか。

そういうわけで、アリアハンやダーマで宿屋を営もうと思っている方は
良く来るパーティの職業構成を観察し、宿泊価格の落としどころを検討されると
よろしいかと思います。

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