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「教育の4段階」で学校選びを考え直してみてください

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このエントリーは、教育についての新たな取り組みをしようとする友人の、熱くて分かりづらいブログ記事に触発されてご紹介する内容です。

人材開発の分野でコンサルタントとして働いていた当時の経験・研究などをベースとして、小学校・中学校・高校・大学・・・と、学校選びに頭悩ます当事者の方々に、ぜひともお読みいただきたく。

###この記事の要旨

■教育には4つの段階(Level)が存在する
■学校選びにハマってる時点で、Level4を放棄している
■Level4に必要な要素は「時間軸」と「影響軸」の広い捉え方
■「自分で学校は変えられない」は大きな誤解

それでは本編です。

■教育には4つの段階(Level)が存在する

まず、この図をご覧ください。

Learninglv4

これは、およそ学校で身に付ける学習要素を、ある切り口で4つのレベルに切り分けたものとなります。

まず、Lv.1(レベル1)。この教育は、過去の人類の学んできた内容を理解できるようになったり、他の人が発する意見を理解できるようになったりするために、文字を読めるようになるところからスタートします。これと対になるのが、書くという技術。これによって、自分の瞬間的な思考を、記録し、他の人へと伝えることができるようになります。

次に、Lv.2(レベル2)。この教育は、例えば小学校で国語・算数・理科・社会という大きなカテゴリー別の学習をすることに始まり、世の中の捉え方の様々なフレーム(枠組)を学んでいきます。この学習体系を身につけることで、例えば男女が2人で買い物をしている風景が、「この二人は、合わせて幾ら支払ったんだろう?」(数学)、「この二人は、それぞれどんな気持ちで相手のことを考えているだろう?」(国語)・・・という風に、世の中を様々な観点から捉えることができるようになります。

更に、Lv.3(レベル3)。これは、Lv.2で学んだ観点が、実際にどのように社会の中の中で使われているかを理解し、そこで自分が果たすべき役割や、位置付けなどを見出し、自分がそれをどう活用していけばいいかを学習します。

例えば、理系の大学生であれば、自分が学会発表をするときに、その学会がどのように運営されていて、自分が新たに提示する発表内容がどのように参加者に捉えられ、そこからどんな議論が起きたり、どうしたらその蓄積によって自分が評価されたりするかを、学び取っていきます。

そして、Lv.4(レベル4)。これは、Lv.3である程度世の中の仕組みを理解し、体感した上で、それとは違う、独自の仕組みやルールを作り出し、他の人にそれを使ってもらうことを学ぶ段階です。言い換えると、既存の社会やシステム、既存の学問に対して、新たなエッセンスを持ち込み、それまでにない世界を世の中に創り出すことを学ぶ段階です。

このLv.4の力、「仕組み・ルールを作る側に回る力」こそ、アップルがiPhoneで世界の携帯市場の独占を導いたり、Facebookが世界中の人のソーシャル・コミュニケーションのスタンダードになったり、みんながTwitterで呟いたりと、おおよそこの時代に最も大切な力であることは、疑う余地がありません。

ルールにしたがって泳ぐLv.3の力ではなく、ルールを作るというLv.4の力こそ、組織が発揮すべき力であり、その構成メンバーである個人が強みとすべき力であるわけです。

■学校選びにハマってる時点で、Level4を放棄している

さて、ここで子供の小学校・中学校・高校・・・と続く学校選びに関して、多くの親が行うのは、「どの学校がいいか?」ということを、学校評価をしている本や、学習塾が発行しているガイドブック、はたまた雑誌などを基に比較し、検討するというプロセスです。

この姿勢こそが、今回テーマとしたい「Lv.4の放棄」につながってしまいます。

つまり、本来は自分の子供にとって最も大切である「教育」を考えるときに、実は親がとっている行動は、既存のルールや仕組みを参考にして、「どの学校がいいか?」という判断を行う側に回るというLv.3の行動に終始してしまっているのです。

「どんな学校を作って、何を学んでもらうのか?」
「自分自身が、新たな学習環境の醸成にどう寄与できるか?」

という観点・発想には、全く至らない。

一番大切だと思われるテーマに臨むときに、自分の親は既存のルールや仕組みに頼り、そのルールや仕組みを問うたり、新しいものを創造しようとする行動(Lv.4)をしない。

この事実を、最も身近で目の当たりにする子供に対して、将来的なLv.4学習への素地や、指向性を期待するのは酷です。

大切なものにアプローチするとき、既存の仕組みやルールに頼ってばかりいて、新しい仕組みやルールを自ら考え、その制作の一員となり、世の中を変えていこうという「大人の背中」を見せる機が失われてしまっているのです。

■Level4に必要な要素は「時間軸」と「影響軸」の広い捉え方

では、なぜ多くの場合「学校選び」というLv.3のスタンスに陥ってしまうのか?
それは、結局自分の身近なことしか見えていないからではないでしょうか。

自分が親になって初めて、教育に関心を持つ。学校を選ぶ段階になって、短期間でその問題を解決せざるを得なくなる。そして、自分の子供が目的の学校に入れたら、それはそれでよしとしてしまう。

これでは、仕組みやルールを変えるという、Lv.4を発揮するために必要な準備や取り組みを取れなくなって当たり前です。

これを捉え直すと、多くの状況において、Lv.4の取り組みをするためには、「長期的な視野に立って」「自分だけでなく、他の子供、社会に存在する多くの子供のことを考える」という2つの要素が必要だという分かります。

世の中への捉え方が、「時間軸」と「影響軸(=自分に間接的に関わっているところにも、視野を拡げる方向性)」という2つの軸で拡がることによって、初めてLv.4の取り組みを行うことができ、それそのものが、自分の子供にとっても「Lv.4の取り組みとはこういうことなんだ!」と実感し、その行動を将来学び、できるようになることに繋がります。

■「学校を変えることはできない、与えられた選択肢を選ぶだけ」は大きな誤解

さて、ここまでの流れで、こう思う方が多いのではないでしょうか?

「学校そのものを変えるなんて、行政やなんやら色々あるし、とても自分が変化させるというイメージなんて想像がつかない」

という風に。でも、それを子供の将来に置き換えると

「世の中のことを変えるなんて、既存の仕組みとかルールが色々あるし、とても自分が変化させるイメージなんて想像がつかない」

という風になってしまいます。それって、とてもさみしいですよね。

実際、学校そのものに関わり、影響力を発揮し、変化させるという行動は、国によってはごくごく日常的に、当たり前に行われています。

これらの国での特徴は、学校が地域と根強く密着しており、その運営や方針に、地元の人たちが影響力を発揮し、「自分自身の子供、地域の子供に、よりよい教育環境を提供しよう」ということに、自らが関与しています。

そして、そんな親たちの「社会のルール・仕組みの変化に直接参加する姿勢」を子供たちはいつも目の当たりにすることで、「ルールや仕組みを変化させることは、自分自身のやるべきことなんだ」という実感を持つわけです。

こうした、「直接自分たちの手で学校を、教育を変えていこう」という営み、日本でも最近、色々な形で行われていたりします。

例えば、友人が行なっている下記のプロジェクトでは、一般の人と地方の議員が連携し、その流れから学校変化を試みようということを仕掛けていたりします。

▼地域から全国へ教育の変化を働きかけるプロジェクト例
http://www.k3japan.org/

いかがでしたでしょうか。

「時間軸」「影響軸」を広くとっていけば、「学校」「教育」は、多くの人にとって自分ごとの課題となります。

あなたは、「学校」「教育」にLv.4の力を発揮しませんか?

それでは。

▼本文中にて、本記事のきっかけとなったとご紹介したブログはこちら
http://blog.habataku.co.jp/2012/09/blog-post.html

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