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多言語・多通貨・多文化間の電子商取引(EC)を支える現場から

メモ:東北地方太平洋沖地震の海外向けECへの影響

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いつもぎりぎりですみません。先月末にアップした際は3月こそはと思っていたのですが、地震と年度末のラッシュであっという間に31日になってしまいました。

このたびの東北地方太平洋沖地震で被災された多くの方に、心よりのお見舞いを申し上げます。
今回は、この震災に関して、海外向けECに絞って書きたいと思います。
具体的には、私はマルチリンガルカートという海外向けのネットショップを作るASPサービスを運営している立場にあるので、支障のなさそうな範囲でマルチリンガルカートのデータや体験をメモします。

■トラフィックと流通額
3月11日の震災直後、特に翌日12日はトラフィックが通常より10%程度増加、その後13日には通常の70%程度に落ち込みました。落ち込んだトラフィックは日々ゆるやかに回復傾向にありますが、依然、震災以前の水準よりは低い総量で推移しています。
震災直後のトラフィックの一時的な増加はおそらく、11日の震災報道を知った海外消費者が、今後の店舗運営や自分の注文の取り扱い確認のために店舗にアクセスしたものと思われます。
その後の恒常的なトラフィックの低下としては、生産地が東北にあり商品供給ができないものが発生した、オフィスや倉庫が首都圏およびその近郊にあり計画停電などの影響をうけている、などの店舗側の事情、および日本の被災状況を悲観視した海外消費者の買い控えなどが考えられます。決済流通額も11日以降減少しており、緩やかに回復を続けています。

■システム、サーバ
マルチリンガルカートのサーバは、ハウジングしているフィジカルなサーバとクラウドの仮想サーバで構成されますが、特に支障なくサービスを提供し続けることができました。今回の震災ではアクセス集中や電力などの問題でダウンするサイトがあった一方で、クラウドへ緊急にミラーリングされたサイトによって情報提供がされ続けるなど、クラウドサービスや堅牢な通信インフラの価値が光った事件でもありました。また、電力供給が不安定になったことから、データセンタの場所(停電対象かどうか)や停電時の対応についての問い合わせを何件かいただきました。今回の震災をきっかけに日本以外へのサーバの分散やクラウドへの移行を行うサイトは増加するのだろうと予想されます。
システム面では、震災直後の14日に関西のユーザーから義援金機能のリクエストをいただき、急遽開発。16日にこの機能をリリースしました。商品の売り上げが落ち込む中で、義援金への寄付は増加しています。この機能をご活用いただける店舗が増えてくださったのは非常にうれしいです。そして、日本のことを考えてくれる海外の消費者がこんなにいるのだということを数字で見ると、ちょっと胸が熱くなります。

■これから海外に対してできること
今回の震災は、いろいろな意味で日本に対する注目が集まった機会だったと思います。その反響はなんとなく以下の3とおりのどこかに当てはまる気がするのですが、
1.大災害の被害者への同情、共感
2.一連の災害よる健康被害、あるいはビジネスへの悪影響に対する懸念
3.これから復興するであろう日本への期待や励まし
個人的には3の意味合いでのメッセージを、海外の方からたくさんいただいたことに驚きました。そして、日本に対するこういった信頼感や好感に対して、きちんと応えていかなくてはならないと考えさせられました。

と、書くと何やら大仰になってきますが、私にとってその信頼に対してなんらかの形で応える手段は今目の前にある「マルチリンガルカート」というサービスしかなく、より多くの企業にとって海外進出のお役にたてるよう、日々改善をしていくしかないのだろうと考えています。

取り留めもないメモで恐縮ですが、少しでも良いサービスを提供できるよう、2011年度もがんばります。

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