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多言語・多通貨・多文化間の電子商取引(EC)を支える現場から

国境を越えて。

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みなさま、はじめまして。百瀬道子と申します。WIPジャパンという翻訳・調査会社で海外へ小売を行うためのASP/SaaSサービス「マルチリンガルカート」の開発や運営をしています。

このエントリを書いている2010年7月現在、楽天が世界各国の著名ECサービスやポータルサイトと資本関係を作ったり、AlibabaとYahoo!ジャパンの提携サービス「淘日本(タオジャパン)」がサービスを開始するなど、ECの国際化が一気に進んできました。海外向けのECが気になっている方も多いのではないかと思います。

ところで、海外にモノを売ることは、従来一部の企業・業種でしか行われていませんでした。


◆企業規模別の輸出業務実施状況(出典:中小企業庁「中小企業白書2009」)

Kf204010_3

このグラフを見ると企業規模別で有意な差がみられます。同白書によると、日本の企業のうち常時雇用者数が301人以上である企業の割合は0.3%です。


◆日本の商品別輸出割合(出典:JETRO「ジェトロ貿易投資白書」2009より作成)
Jetro2009_3
【原典は財務省「貿易統計」(2008年)】
輸出総額における商品別割合です。輸出のうち,約7割を機械が占めることがわかります。(そのうち自動車等の輸送機器だけで、4分の1を占めます。)。


輸出業務実施状況と輸出商品の種類からみて、中小企業が大企業の下請けとしてものを作り、大企業が完成品を海外に売る、という構造がうかがえます。
ただしこれは、島国である日本の企業が海外にモノを売るためには、現地への支店や営業所の開設、それらの設備や人員の維持、現地在庫の問題など大きな投資が必要であり、必然的に大企業でなくては海外へ売りにくいという事情がありました。

ただ、その結果として、国内の多くの企業が国内の取引に依存、および、海外へ供給するには特定の流通ルートに依存する構造が定着し、その流通ルートが破たんした場合に大きな影響を及ぼす体制を作ってしまったのではないかとも推察されます。

さて、近年様々なオンラインサービスが整備されてきたことに伴い、海外へ向けて物を売ることも(以前と比べて)ハードルが下がってきています。

たとえば、Skype(2004年~)。一般の国際電話は結構よい料金なのでこのサービスが出るまでは常に時計を気にしながら話していた気がするのですが、Skype同士なら「電話料金」はかかりません。海外の協力先・取引先と長時間電話会議をしても平気です。
-Skype(日本語)

また、Paypal(日本向けサービスは2007年~)は多様な言語・通貨に対応した決済方法で、維持費・手数料が低いことから少額決済に向いています。このサービス登場以前は、異なる通貨間の送金は銀行手数料だけで数千円~数万円程度はかかっており、大規模な取引はともかく小規模なBtoC、あるいはBtoCには不向きでした。
-Paypal(日本語)

さらに、Mixi(2004年~)やTwitter(2006年~)、facebook(2004年~)などのソーシャルネットワークサービスも普及してきました。こういったサービスをを利用していると、日本語以外の投稿を見かけたり、日本語以外を母語とする方とやり取りを行うことがあるのではないでしょうか。商取引を行うためにお客様を知ることはとても重要ですが、「こんな商品はどう?」「ちょっとここを教えて」と現地の方に訊くことも、意見を傾聴することも、あるいは協力先・取引先を探すことも以前と比べて身近になりました。
-Mixi
-Twitter
-facebook

これらのオンラインサービスはここ5年ほどで急速に普及したもので、海外との取引を行う企業や個人にとってはインフラと呼べるような存在になりつつあります。このような環境の変化により、海外向けの直販を試みる企業も増加してきました。

私は、日本の面白い製品やサービスを持った企業や個人が、従業員数や業種にかかわらず世界と取引できるようになってほしい、そうなった先の社会を見てみたいと思っています。そして、微力ながらそのお手伝いをしたいと考えています。

かくいう私は2007年に海外向け多言語ネットショップASP「マルチリンガルカート」をリリースし、紆余曲折を経て現在に至るのですが、その過程で海外に物を売るための難しさや、まだ解決していない課題、そしてその環境にも負けず海外向け販売にチャレンジする様々な面白い企業と出会いました。と、いいますか、今もそんな企業の皆様と試行錯誤の毎日です。

インターネットを活用して海外へモノを売ろう。

そんな取り組みを支える現場で考えたことを、従来はてなで綴っていましたが、ご縁があってこちらに引っ越してきました。
どうぞよろしくお願いいたします。

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