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多言語・多通貨・多文化間の電子商取引(EC)を支える現場から

海外向けECで「買いたい!」の種を蒔く5つのアイデア(前編)

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(「海外向けECの集客でSEMがうまくいかない2つの理由」の続きです。長いので前・後編に分けました。)

前回は海外からの集客~購買における課題について書きました。「お客様に自社の商品を買ってもらう」。そのためにはいかに相手の立場になって心理をくみ取るかが重要になるのではないでしょうか。本当は事例で考えると良いと思いますが、ここでは特定の国や地域にフォーカスするのではなく、汎用性のあるモデルから考えてみようと思います。

消費者の心理プロセスを示したモデルとしては、1920年ごろにアメリカで生まれた有名な「AIDMA」があり、最近電通が提唱している、インターネットを活用した消費行動に着目した「AISAS」があります。その他にもいろいろなモデルが提唱されていてどれも興味深いのですが、今回は一般的に知られていそうな「AISAS」モデルを用いて考えます。(AISASは電通の登録商標です)。

「AISAS」では以下のようなプロセスで、主にネット上の購買行動をモデル化しています。

        A: Attention(注意)
         I: Interest(関心)
        S: Search(検索)
        A: Action(行動、購入)
        S: Share(共有、商品評価をネット上で共有しあう)

前回の「海外向けECの集客でSEMがうまくいかない2つの理由」で挙げた2つの理由は、上記モデルに当てはめると以下のようにも表現できます。

1)SEMは 3番目の「Search(検索)」のプロセスが活発に起こってこそ有効だけれども、そもそも「Search(検索)」が少ない。それは前段階の「Attention(注意)」「Interest(関心)」が十分ではないから。

2)既に現地で知られている概念(=「Attention(注意)」「Interest(関心)」が十分なキーワード)に関連付けてSEMを行う場合、価格などでの競争力の弱い日本からのECサイトの多くは「Action(行動、購入)」に至る前に、「Search(検索)」における検索結果内での比較競争に負けてしまう傾向がある。

ということは対策として考えられるのは、

   ・自社商品・ブランドの「Attention(注意)」「Interest(関心)」を増やす
   ・価格等の競争力を高め、現地概念内での比較競争に勝つ

の2つになります。

今回は前者の“自社商品・ブランドの「Attention(注意)」「Interest(関心)」を増やす”方法について考えてみます。
ところで、海外の消費者の気持ちに立つために、最近購入したもの、あるいは凄く欲しいものを振り返ってみてください。その中でわざわざ海外から買ったものってありますか(DELLやAmazonの商品と回答する人は多そうですが、後者の「価格などの競争力」を改善した例にあたるのでこの場では除かせてください。該当する例だと、最近ならiPadを輸入した方がいらっしゃるのでは)?あるとすればどんなものでしょうか。

私が海外から購入したことのあるものはソフトウェアやPC周辺機器なのですが、わざわざ海外から購入したのは専門誌やWeb上のニュースで読んで非常に興味を持ったけれど日本では手に入らない(輸入代理店もない)ことがわかったからでした。

実際にとった行動プロセスとしては次のようなものです。

   1. 普段「ここが何とかなればなぁ」という漠然とした不満がある
   2. 専門誌の記事で役に立ちそうな商品を見つける。しかしその商品は海外の店舗しか扱っていないらしい。
   3. 知人に聞く、国内外で同様の商品がないか検索してみる
   4. 見つからない(似たものはあるが当初見つけたものより有意に劣る)のでその商品を販売しているサイトへ行く
   5. 購入
   6. 当初話を聞いた知人にフィードバックする

多分私は2のプロセスがなければ検索行動はしなかったはずです。1の段階ではその不満を解決する商品があるとは想像していませんでした。なお、2の後に検索・比較をしても、最初の商品の印象が強く、その商品が打ち出すコンセプトで検索する限りでは、他の類似商品は見劣りがしました。
このような購買確度の高い検索行動は、引き金となる「その商品の魅力を伝える情報」がどこかから入らない限り、なかなか生まれないのではないでしょうか。

引き金となる情報には

   1. 「知人から紹介された」
   2. 「誰かが使っているのを見た」
   3. 「広告を見た」
   4. 「記事で見た」
   5. 「店頭・展示会などで見かけた」

等が考えられます。(「車がパンクした」とか「急に来客が増えた」とか、緊急性の高い引き金もあるでしょうが、そういったものはそもそも海外のソリューションで解決しようとはしないので今回は除外します。)

次の記事では、この5つの引き金となりうる例やアイディアを具体的に挙げてみます。

(※この記事は過去にはてなへ投稿した記事を加筆修正したものです)

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