やっぱり忘れちゃいけない、と思うから・・・”あの時の”1月17日を振り返る(前編)
前日の夜から何か体の調子がおかしいな、と感じていた自分は、その翌々日からの出張に備えるため翌日の出勤はフレックスを存分に活かして遅い時間にしよう、としていた。
そして翌日、何かちょっと浅い睡眠になっていた時、突然揺れを感じた。
「あ~、地震かぁ・・・。うーん、眠いなぁ・・・。」
ぼーっとした意識の中、その揺れは今まで感じたことの無い長さで続いている。
なんかちょっといつもに比べて長いよな・・・そう感じ始めた時、その揺れは斜めに振り回されるような感じで急に激しくなった。自分の楽器の上に並べて置いていたCDがドミノ倒しのようにパタパタと音を立てて倒れ、楽器の上から滝のように落ちていく。
自分は思わずベッドの上で立ち上がって「なんじゃこれはー!」と叫んだ。感覚的には20数秒続いていたような気がした。家のきしみはおさまったので、地震はもう終わっているはず。でも、自分の体は揺れ続けているような気がした。
「そうだ、NHK見よう」
自分の部屋の隣の部屋に前日からの不調の体を引き摺りながら向かい、置いてあるテレビを付ける。地震を報道している。その時、神戸が震度7、淡路島が震度7とのこと。
付き合っている彼女の住む家は、丁度その激しい震度の地域を結ぶ軸線上にある。
「あいつ、死んでへんやろな・・・」
不謹慎にも、無事かな、と安易なことを思うより前に、悪い想像が先に出た。
でもまだ呑気なものだ。とにかく俺は不調なんだ。体調を整えるためにもう一度寝よう。自分の部屋に戻ってベッドに入る。でも、さっきのあまりに体験したことの無い地震に興奮させられているのかなかなか寝付けない。ようやくうとうとし始めた時にさっき程、という訳では無いが同じような揺れがやってくる。余震、なんていう言葉を覚えさせられることになったのは自分の場合あの時が初めてだった。
いよいよ寝られなくなって諦めて階下に降り、台所に行くと、両親が朝食を食べている。ひとしきり先程の地震がいかに凄かったか、という話をした後テレビを付けると、朝の番組「おはよう朝日です」でその放送局の1階にある日産のショールームの窓ガラスが全部割れている、というのを報道している。それなりにひどいんだな・・・。体調不良でぼーっとした頭のまま、ゆっくりゆっくり朝食を食べていると、今度は「おはようナイスデイ」でなんだか見覚えのある所の見覚えのある光景が、なんだか見覚えの無い形になっているのを見て愕然とする。
「SANYOとユゲダスの看板の所て・・・深江の所がえらいことになってるやん!」
3日前、走ったばかりの高速道路が斜めに倒れている。切り取られたような高速道路の断面には観光バスがギリギリの所で引っ掛かっており、それをテレビ局のヘリが旋回しながら何度も何度も撮影している。
これは只事じゃ無い!この事態を前に体調不良だとか悠長なことは言ってられない。とりあえず会社に向かうことにする。慌てて朝食を食べ終え、ぼーっとした頭はどこへ行ったやら、急いで着替える。何で会社に行く?車か?・・・いや、バイクだろう。何となく本能的に、いや、先程の高速道路の崩壊を見たからか、いややはり、とにかく、早く動く姿勢を取りたい、ということでバイクに跨り、会社に向かうことにした・・・(後編だか、もしかすると中編に続く)