トラブル・プロジェクト化した体制をスリム化するのは結構に勇気と戦略が要ることだ。
事情や背景がどうあれ、一定確率でプロジェクトがトラブルに見舞われ、大きな問題を抱えながら迷走を始めたのち、そのプロジェクトのマネジメント支援を行う仕事が私のビジネスの何割かになります。
なぜトラブルになるかというと、のちのち支援に入る私の経験・統計から意見させていただきますと、
1. コミュニケーション不足
2. 悪い話を報・連・相する文化がない
3. 大量の残業・休日出勤が発生
4. 煩雑なスコープ変更
5. マイルストンの不足・欠落
6. 進捗・品質の評価指標定義が不十分
大体こんなところかと思います。
1については、スキル不足の要員構成が主因としてあげられます。
l プロジェクトマネジャーが主要メンバーのITスキルレベルを精査した上で採用判定していない
l スキルチェックを定期的にチェックするレビュープロセスが存在しない
のような状況のため、各自がどのように十分な質・量のコミュニケーションを図ればいいかがわからず全体が機能しなくなってしまうのです。
2については、例えばリーダーシップの欠如があげられます。
l プロジェクトマネジャー(或いはリーダー)がスキルは高いが人格は著しく欠如している
l リーダーシップが複数に分散しすぎているため、全体を誰も統率できない
悪い話はリーダーシップ発揮側から気づいてあげるもしくは知らせてもらえる雰囲気を作る、ことが重要です。
3については、契約体系の不備が起因しないよう配慮が必要です。
l クライアントが十分契約書を精査しないままプロジェクトが始まった
l 全体プロジェクト管理責任を負うベンダーが契約上どこにも存在しない
大抵請負では残業は請求対象外になってしまうので誰がどれだけ残業したか気にしなくなりがちですが、そうなると「質」に対する意識もさがり、慢性疲労で士気も下がってプロジェクトが迷走してしまいます。
4については、経営センスの欠乏に注意も必要です。
l トップからの強い要望で、根拠もなくスケジュールを短縮したり予算を縮小した
優秀なマネジメントといっても、特定のプロジェクト要件に対して常に適格な意思決定や指示ができるとは限りません。場当たり的、短絡的ではないにしても、そのプロジェクトからみればかなり無理な要求が押し通されたり、経営戦略上のイベント・ドリブンに影響を受けた大方針の変更などは意外にあることです。
また4に5~6も含めて、マスタースケジュール/プロジェクト計画が形骸化しないよう、こちらはプロジェクトマネジャー側が頑張る必要があります。
l 初期作成時点でマネジメントが現実性をきちんと内容精査をしなかった
l 特定個人が勝手に作ったため、各チームやメンバーが内容をコミットしていない
先日も「WBSの書き方がなっとらん」という議論がありました。しかし書き方はどうあれ、現場の意志で作ったWBSには、現場のオーナーシップが強固に存在はします。これをマネジメントの意志で書き換えをさせすぎると、オーナーシップも失われる=コミットメントが薄れる、ので注意が必要です。
まあそれぞれが詳細には複雑に絡み合うことも多いのですが、シンプルに整理するとこんな感じでしょうか。
こういう「問題を抱えた」プロジェクトを支援するには、まず「他人が汚した」とか「別に自分のせいじゃない」みたいな考え方から超越した、「必ず立て直してみせる」という強い勇気が必要です。
そしてそれを、気持ちだけの話にとどまらず、綿密な再建計画をたてて、その強い意志でそれを実行していくための戦略をきちんと持つことが重要です。
最近の典型的再建手法の1つに、「体制のスリム化」というものがあり、ある節目を狙って、思いっきりだぶついた体制を減らしてしまうことがあります。
一時的に要員不足が顕著になりパニックになりかかることも多いのですが、明らかな要員不足の状態に直面することで、かえって冷静に「その不足をどう補うのが正しい要員配置か」を見極めることも可能ではあります。それをねらってスリム化をやります。
もちろん失敗することもありますからリスクは伴います。
経験的には結構この手法を用いることは最近増えています。特にこの「期末期初」は顕著。一時的にヘッドカウントを減らすのは、本質的かどうかは別にすればそもそも経営管理手法としてもよくある話でもあります。
戦略もなくただ「減らす」と確実といっていいほどに失敗します。が、綿密な戦略と計画がなされていれば、なかなか汎用的な詳細解説が難しいので、後日の宿題にひとまずさせていただいて、今回は御容赦いただき、ですが、「勇気を持って」減らしてみようと思われる方、ちゃんと綿密な戦略と計画をする前提で、是非お試しあれ。
(REMINDしておきますがあくまで「一時的に減らす」のであり、計画された一定期間以内に適性な要員体制に増員・増強することが必須であることを付け加えておきます)
たまに「私はトラブル・プロジェクトの再建がやりたくこの業界・この仕事に就いたわけじゃない」と言う方に出会います。それはそれで多いに結構、誰だってそればかりを生業にはしたくありません。とはいえ、所詮クライアント・サービスでもあり、目の前に「自分のクライアントが困っている」状況があるのであれば、それを救うのはコンサルタントの使命。
確かに個人的にも毎回毎回そんなリクエストの連発だと確かに気が滅入るのはそうなんですが(苦笑)、でもやっぱり私にとっては「客商売の原点」にたちかえり、それがクライアントにとって自分がすべきTOP PRIORITYなのであれば、やはり私はまずそれに着手したいと考えています・・・