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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

仕組みやチーム力やマーケティングだけでモノが売れるとでも思っているのか?

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51EeGBm2I9L__AA160_.jpg営業スキルがほとんどなくてモノが売れるのだろうか?

 

業のシロウトばかりの営業所が、全国100個所の営業所の中でダントツのトップになったという実話がある。僕は、それをベースにしたフィクションを2009年に上梓した。『奇跡の営業所』というタイトルの本である。

実話では15人の営業部員がいたらしいが、それでは個々のキャラクターが引き立たないので、フィクションのほうでは8人にした。それと営業スタッフが2人。そして、その「奇跡」を成し遂げた所長。これが主人公たちだ。

※リンク先はアマゾンアソシエイトです。画像はアマゾンから拝借しました。

 

長の実名は、吉見範一という。フィクションでは、吉田和人という名前にした。当時50歳前後。彼のミッションは、マイラインのシェア奪還だ。本来はマイラインを知り尽くしたベテランでないと難しい仕事だ。ところが・・・・・・。

営業部員は下記の8人。どれも実在の人物をモデルにしている。

普段はチベットで暮らし、ときどき生活費を稼ぎに日本に"出稼ぎ"にくるロバさん。

アラフォーのシングルマザーで、息子の学費稼ぎのためにきたマザー。法人営業は怖いので嫌だと言う。

大学を出たばかりで職がなく、外国暮らしの方が長く日本語が少したどたどしいクォーター。営業よりも日本語を覚えにやってきたという感覚で、彼女も法人営業は嫌だと言う。

かと思えば、営業経験も少ないのに、大企業ばかり行かせてくれという若者が二人。大口ばかり狙うのと、大口ばかりたたくので、大口兄弟とあだ名されたタカシとショージ。

コールセンター出身なので外出は嫌だというイケメン。

元プログラマーでITに詳しいのだが、鍼灸師の免許を取るも口下手なので集客・接客ができず、営業を経験したいとやってきたオタク。

以上は派遣営業なのだが、もう一人本部から来て、本部の人事にやたら詳しいジンジ。

実際、こんなメンバーばかりだったという。これでは、どんな優秀な所長でも、初日から絶望感に襲われても仕方がない。


かし、吉見さんは半年後にこの営業所をダントツの日本一にする。そのきっかけとなった事件を『奇跡の営業所』では描いている。

面白そうでしょう?

買ってくれとはいいません。でも、読んでほしい。

実は、原作が誠Biz.IDにあるので、そちらでいいので読んでほしい。続編もある。

http://bizmakoto.jp/bizid/writer_shigeyuki_morikawa.html

このリンク先の下のほう、「奇跡の無名人」というのが原作で、そのうえの「大口兄弟の伝説」が続編です。作者としては続編のほうが気に入っているのだけど、書籍化はされなかった。


Biz.IDの連載の元になった取材がある。吉見さんと知り合って間もない頃だった。

まだ吉見さんという人が良く分かっていなかった。だから、僕は勘違いしてしまったのだった。

『奇跡の営業所』は物語としては美しい。実話も、この物語以上に感動的だ。

ただ、白鳥が水面下では一生懸命水をかいているのと一緒で、「奇跡」の裏側にも必要なものがあったのだ。

僕はシロウトばかりの営業所でも売れる、売れない会社はマネジメントが間違っているのだということを書きたかった。

このような主張をしているコンサルタントもたくさんいるので、僕はそうだと思い込んでいた。

ところが、マネジメントの問題だというのは半分は正しいのだが、半分は間違っている。

 

までまったく営業ができなかった会社が普通にできるようになったという話であれば、マネジメントの改善だけでできるのかもしれない。

しかし、この話はたった半年で全国でダントツの日本一になったという話なのだ。

こんなことがマネジメントの力だけで可能なわけがない。

例の取材で、僕は吉見さんに惚れ込んでしまい、それからずっと一緒に仕事をしている。

彼がセミナー講師で、僕がセミナーの企画、集客、事務をやるという形でのパートナーシップだ。

あれからもう3年半経った。吉見さんのセミナーを僕は主催者として50回は見ただろう。ようやく自分の間違いを僕は明確に意識できるようになった。


の前に吉見さんのことを知らない人も多いと思うので、少しプロフィールを描いてみたい。

高校時代は物理が得意だったらしい。しかし、本人いわく「それ以外はパァー」だったので、大学には行けずレントゲン技師の専門学校に通う。ところが勉強についていけなくなって、すぐに辞めてしまう。

金を稼がないといけないということで、はじめたのが百科事典の飛び込み営業だった。吉見さんは、たいへんなアガリ症で、彼のセミナーに参加した人には信じられないと思うのだが、今でも緊張で変な汗をかくのだそうだ。それを克服したくて営業を始めたらしい。

最初はまったく売れなかった。誰も営業を教えてくれなかったので、先輩に頼みこんで同行させてもらい、その技を盗んだ。

技を盗むといっても簡単に盗めるものではない。表面的に盗んだつもりでやってみてもなかなか本質は盗めない。試行錯誤の連続だったが、とにかく売らないと食えなくて死んでしまうという危機感で踏ん張った。

意志は天に通じるもので、だんだんコツが分かってきて、毎月1万円札が立つぐらいの給料がもらえるようになった。

その後、いろいろな業種の営業を経験し、ほとんどの会社でトップクラスの成績を残す。そして、知人が電器の卸会社を始めたので、そこの営業部長に就任する。

半年でエリアのほとんどの小売店に卸すようになり、「新規開拓の神様」というあだ名をもらう。

その会社は10年続いたのだが、大型量販店が大挙して進出してくると、取引先が軒並みつぶれてしまい、連鎖倒産する。

48歳のときのことだ。

この歳で資格もなく、営業一筋だった人間にハローワークは厳しい。吉見さんは持ち前の"営業力"で派遣会社に自分を売り込み、マイラインの営業の仕事をもらう。

そのときの実績が認められて、『奇跡の営業所』の所長に就任することになる。

 

自身は、最初にマイラインの仕事をしたときに、若い派遣営業が何も教えてもらえず、成績が悪いとどんどん切り捨てられ、その後フリーターにしかなれない現実を見て、義憤にかられる。それで、営業を教える人になろうと誓ったのだという。

営業はよく分かっているのだが、どう教えたらいいのかは分からない。同行して教えるのでは、救える人数が限られる。

そこで、教えるプロになるために1万時間勉強することにする。たくさんの本を読み、自分が言いたいことを表現してくれている個所を抜き出す。1冊に数ヵ所あるかないかだったが、地道に続けた。

毎朝早起きして1日4時間勉強すれば、約7年で1万時間になる。

僕が出会ったのは、7年の勉強期間が終わってから1年後ぐらい。今度はプロの講師になるために、100回の講義を経験するということを始めて、半分ぐらい達成した頃だった。


は、これまでずっと営業のプロということで吉見さんに講義をお願いしていた。しかし、それは勘違いだった。吉見さんは、もちろん営業のプロなのだが、いまは「営業の基礎を教えるプロ」なのである。

この違いは小さいようで、果てしなく大きい。

営業の基礎を教えるプロはいるようでいない。その証拠に、僕はいま吉見さんに3つのセミナーを担当してもらっているのだが、その内容を書籍で見かけたことはない。少なくとも、この形でまとめている本はない。全部得ようと思ったら何10冊も読み、それでも漏れはあるだろう。

中にはたくさんの営業セミナーに参加している方が我々のセミナーにも来てくださる。その方たちも口をそろえて他で聞いたことはないと言う。

世の中、日本で一番高級車を売ったとか、そういう人たちのセミナーが花盛りだ。たしかに参考になる話や元気の出る話が聞けるだろう。だから無価値とは言わない。

ただ、彼らは営業のプロであり、営業を教えるということについて、吉見さんのように7年勉強し、その後5年ほど試行錯誤してきたわけではない。

営業を教えるプロではないのだ。おそらく(聞いた話も加味すると)自分ができたことを人ができない理由が良く分かっていないはずだ。


こで『奇跡の営業所』の話に戻ると、吉見さんはやはり営業スキルをきちっと教えていたのである。

当時、いまほどの教えるための方法論があったわけではない。だから同行して教えるということもやったし、また営業会議などでも驚くべき工夫をしている。

教えるということに関して意識的であったのは間違いない。だから、「奇跡」ともいえる成果が出たのだと思う。

※吉見さんが、どうやって営業マンたちを組織していったかについては、こちらに動画があります。

http://www.itbt.biz/333eigyo/etc/free_seminar_001.html


はSE出身である。僕が入社したころは、将来SEが足りなくなるということがまことしやかに言われていた時代で、工学部以外のシロウトも大量に採用し始めた頃だった。

なので、新人教育も一生懸命で、入社後2ヵ月間、みっちりコンピュータの基礎をたたき込まれた。

エンジニアリングは教科書が作りやすい。かなりのところまで教科書で教えられる。それを飛び越える部分はOJTということになるのだが、基礎の部分はシロウトでも身につけられるようなカリキュラムができあがっている。

 

方、営業はどうだろうか? きちっとした営業の教科書はあるのだろうか?

僕は、40歳を過ぎてから転職して、1年間営業をやっていたことがある。そのときに痛感したのは、営業には教科書がないということであった。

教科書がないということは、基礎が確立していないということだ。考えてみれば、営業の基礎なんて大学のような教育機関で研究されていないのだから当然だ。

ところが、僕が思ったのは、営業にも基礎があるはずだということだった。

トップ営業は、僕が知らない何がしかのことをやっているに違いない。何となくイメージはできる。でも、明確には分からない。そういうモヤモヤ感があった。これは、営業のビギナーにはつきまとっているはずだ。

トップ営業のトークと自分のトークとでは明らかに違う。でも、その違いが良く分からない。言語化しようすると逃げていく。

言語化されていないということは、世の中の営業マンのほとんどすべてが営業の基礎を教わっていないことに等しい。


る営業コンサルタントは、営業成績=営業量×営業能力だという。これに異論はない。

営業量はテレアポとか飛び込みの量。一定の割合で客に当たる。ほとんどの営業マンはこれを怠っているとそのコンサルタントはいう。ここまでも同意する。

ただ、基礎ができてない営業マンと長年鍛えてきた営業マンとでは能力は10倍近く違う。平凡だが経験のある営業マンの能力を1とすると、ビギナーは0.1ぐらいだ。

昔は1になるまで会社は待ってくれた。しかし、いまは数年で切り捨てる。中にはリストラの手段として、エンジニアを営業に配置転換する会社があるのだそうだ。

いまの時代に必要なのは、短期間で0.1を1に近づける方法論ではないだろうか。

そうしないと、ビギナーは戦力になる前にクビになるか辞めていく。


見さんと僕がここ数年、あまり意識はせず、結果としてやり遂げたことは、営業の基礎を言語化するということだった。

我々が作り上げたコンテンツは唯一無二のものと言っていいと思う。営業本は年に何冊も出ているが、僕が昔感じたモヤモヤ、すなわち多くの営業ビギナーが抱えているモヤモヤを解消してくれる本は見たことがない。それに近い話をしている人すらいない。

確かに営業の基礎を教えるという本はあふれている。ただ、売れない営業を経験した僕にはもの足りないものばかりだ。考え方だけの本が多い。考え方というのは確かに基礎なのだが、どちらかといえばある程度経験のある営業マンが自分の頭の中を整理するのには役に立っても、ビギナーには何のことだか分からない。

たとえば応酬話法というものがある。お客の断り文句への対処法である。応酬話法についてはネットで調べればいくらでも記事は出てくるが、吉見さんが長年の経験からまとめた「11のシチュエーション×7つの対応法」で考えるというような話は他で読んだことがない。

吉見さんの独壇場である、文字をほとんど使わない商談ツールの話も見たことがない。プレゼン資料では文字を大きくなどということをよく聞くが、この件について2時間でも3時間でも語れる人はなかなかいないだろう。ましてや商談ツールはヒアリングのためにあるという話をあなたは聞いたことがあるだろうか?たくさんの実例とともに。

※我々のコンテンツはこちらです。

http://www.itbt.biz/333eigyo/event.html


のに、吉見さんはブレイクしているとは言い難い状況である。日本中の商工会議所や公共団体からお座敷がかかってはいるのだが、そんなレベルでいいわけがない。

これは僕の責任が大きい。今のコンテンツが唯一無二であることをきちっと伝えるということができていなかった。

そして、それ以前に吉見さんの位置づけを間違えていた。彼はいまや営業のプロではなく、営業を教えるプロなのだ。

であれば、たとえば営業マンを育成できない会社に、育て方を教えるということも可能になってくる。

 

人営業ではなく、チームと仕組みで売れという営業コンサルタントがほとんどの時代に、いっけん逆行しているように見えるが、そうではない。

SEの話でいえば、コンピュータの基礎も分かっていない新人をプロジェクトに入れるわけにはいかない。

営業にも、チームに入るための参加資格があると思うのだ。これには多くの営業マネージャが同意してくれるだろう。

しかし、常に参加資格のない人が自分のチームに紛れ込んでくるというのが営業マネージャの大きな悩みではなかったか?

いくら仕組みを作っても、基礎がない人がきたら十分には回せない。

その基礎をほんの数日で理解するコンテンツは、やはり求められているのではないだろうか。

 

お、我々のセミナーは誰でも参加可能だ。営業コンサルタントにも門戸を開いている。

コンサルタントの参加を断るセミナーも多いと聞くのだが、我々には自信があるから問題ない。

コンテンツは持っていってもらっても全然構わない。ただ、数多くの現場を渡り歩いた経験を一生懸命言語化し、またその言葉を伝える努力をずっと続けてきた吉見さんほどの迫力で話ができる人はどこにもいない。下手にまるごと人に教えようとすると火傷する。

なので、部分的にでも取り入れて、多くの人に伝えてくれればいいと思っている。


だろう、この記事は?

事業の宣伝がしたかったのか? 自著の宣伝がしたかったのか?

そういう下心もあります。ないといったら嘘だ。

だが、それよりも今この段階で、こういう人がいて、こういうことを成し遂げたということをどうしても書いておきたかった。その気持ちのほうが100倍強い。

ビギナー営業マンに基礎だけでも教えておきたいと考える会社、会社は教えてくれないので自腹で学びたい人、両方にどうしても伝えたかった。

 

見さん自体は僕と何らかの契約関係で結ばれているわけではないので、直接仕事を頼むのは全然問題ない。「吉見範一」で検索して、彼のHPにいけばコンタクトは取れる。

そうしてもらって構わない。むしろそうしてほしいのだが、IT業界の会社で吉見さんの話を聞きたいというところがあれば、それだけは僕を経由してもらった方がいい。翻訳者が必要だからだ。IT業界ぐらい営業の基礎を教えないところはないので、ニーズはあると思っている(実際、営業に強いと思っていた某社から営業研修を発注いただいたので驚いている)。

我々は、いま日本の企業がどんどん社員を使い捨てにしている状況にアンチテーゼを叩きつけたいと思っている。そのためには実績が必要だ。

同じような気持ちの方々、どうぞよろしくお願いいたします。


※さすがに1つの記事で6000字を超えるのは長いなあ・・・。読んでくださった方には感謝しかありません。

記事に共感した方は、ぜひ下記のサイトにもお立ち寄りください。

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▼マーケティングで最も大事なことは自分軸を持つこと。
 Who、What、Whyの3Wメソッドで、行き詰まりからの起死回生を!

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▼自社の考えをインタビューして文書化してほしい方は

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Comment(2)

コメント

ランキン

森川さんこんにちは。
例の件はこれだったのかな。

最近は誠では力の抜けたエントリーが多かったので、久々に熱いエントリーでしたね。

吉見さんの話では、メルマガだったのか何だったか失念してしまいましたが、女のコと二人で営業いったら仕事が取れたっていう話が印象的でした。

奇跡シリーズも楽しみに読んでましたし、引っ越しや禁煙も好きですがこの二つは後半がややダレ気味になってしまった感じがしました。

大口兄弟は事実だったとしてもちょっと出来すぎだったのが書籍化されなかった理由かもですね。

奇跡なら「震えるひざを押さえつけて」の回が印象に残ってますね。自分も震えちゃいそうです。

森川滋之

ありがとうございます。

まあ、こういう方向性で今後はやっていこうと考えています。こう考えた理由は、メルマガのほうで話します。公開度の高い場で言うような話ではないもので。

「後半ややダレ気味」は、まあちょっと言い過ぎかと思いますがw(←怒っていないという意味のwですよ)、なかなか実話ベースの話を収束させるのは難しく、かっこよく終わらせるよりも、余韻を残した方がいいのかもしれません。そこを作りすぎてしまったとの反省はしています。

大口兄弟は確かに出来過ぎなんです。本当に締め日のギリギリまでハンコがもらえなかったらしいのだけど、嘘っぽくなるんですよね。

実話ベースは難しい。ノンフィクションのほうが書くのは簡単(脚色のしようがないので)ですが、当時は取材や調査をする暇もお金も、またその技術(ノンフィクションはこちらが大事)もなかったので、ああいう形で始めました。

そういう意味では、@IT自分研の取材記事のほうが、ウケがいいようです。

http://jibun.atmarkit.co.jp/lskill01/index/index_fullscruch.html

まあ、こちらはターゲットも課題もはっきりしているからでしょうが。

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