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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

まずは目立て!~大事なことは、共感以前の段階にあった(#177)

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私は夫を愛しているが、腹を立てることもしょっちゅうだ。(ヤンミ・ムン)

昨日に引き続き『ビジネスで一番、大切なこと』から学んだことをご紹介したいと思います。

●顧客のために競争すればするほど顧客からそっぽを向かれる

前掲書を簡単にまとめると、以下の個条書きのようになります。

  • 競争の激しい市場では、差別化しようとすればするほど、似たような製品ばかりになり、カテゴリ自体がユーザーから飽きられてしまう
  • 製品を改善する努力をメーカーが重ねれば重ねるほど、ユーザーは製品の素晴らしい機能・性能に麻痺していき、やがて製品に飽きてしまう
  • こうして巷には似たような製品があふれてしまい、その結果、あるブランドに固執していた人が、そのカテゴリ内のブランドなら何でも良くなってしまう
  • この流れを断ち切ることができた「アイデア・ブランド」が現在の市場では注目を集めている

「アイデア・ブランド」に関しては、

  • 「リバース・ブランド」(時代に逆行する; 例: Google)
  • 「ブレークアウェー・ブランド」(新しい意味を持たせる; 例: SONYのAIBO)
  • 「ホスタイル・ブランド」(分かる人だけ分かればいい; 例: ミニ・クーパー)

の三種類が挙がっています(詳しくは、同書をお読みください)。

ただ、この分類は、まだまだアイデアレベルだとし、当てはまらないものとしてハーレーダビッドソン、すべてを組み合わせているものとしてアップルをそれぞれ挙げています。 

●愛している人に、腹を立てることもしょっちゅうある

もし本書を貫く一本の糸があるとしたら、それは消費や行動、文化の一貫性が、私たちの周囲で崩壊している、ということだ。あるブランドは、敵対的であると同時に吸引力を持ち得る。人は、満足しながらも変化を求める。関係性は、いらだちを感じさせると同時に満ち足りたものにもなり、共生的であると同時に自由でもある。私たちは日々、その中で生きていて、すでにこのことを知っている。私は夫を愛しているが、腹を立てることもしょっちゅうだ。

(前掲書より)

この中で、特に重要なのは、「あるブランドは、敵対的であると同時に吸引力を持ち得る」という部分です。

これは、先の分類でいえばホスタイル・ブランドのことを指していると思います。

まずいだけでなく、牛の睾丸で作られていると噂されるようなエネルギー飲料が愛されるなんてことを、市場調査が予測できるとは思えない。

(前掲書)

レッドブルの話です。著者は、市場調査に頼るのは危険だということで、この例を挙げています。ほとんどのメーカーは、ユーザーの要望を聞きすぎなんですね。ユーザーの要望を取り入れすぎると、結局他のメーカーの作るものと変わらなくなってしまう。

レッドブルの販売元の社長D・マテシッシは、ヨーロッパでテスト・マーケティングをして、調査会社から「これほど失敗が確実な製品は見たことがない」と判定されたそうです。それを聞いたマテシッシは「いいぞ!」と言ったとか。

レッドブルの例は、極端かもしれませんが、ユーザーに関心を持ってもらうには、一般の人が不快に思うようなことから入っていくやり方もあるのです。

そして、分かる人だけ、分かってくれればいいという「ひるまないブランドが強い愛着を得られる」のです。

●共感や感動などというのはあとの話

顧客のためにと、市場調査を重ね、アンケートを分析し、役に立つ新機能を付け加えていく。誰でもできることだし、はっきり言って考えずに済むことです。だって、顧客の望むことをやっていればいいだけだから。

どの企業も考えずに、顧客満足を高めることばかりをやっている。これが現実です。そうなると、どの会社の製品も同じようなものになり、顧客はカテゴリ全体に対して愛着がもてなくなる。なので安いものを買う。これがコモディティ化と呼ばれる現象の正体です。

しかし、ごく一部の企業は、一生懸命、どうやったらユーザーから飽きられつつある市場で目立つことができるかということを考えているのです。

まずは、今までとは全然違ったものだということを認知してもらう。目立つことが大切なのです。

これを称して、共感マーケティングとか、感動マーケティングとかいう人たちもいるようですが、共感も感動もどちらも認知のあとの話です。

さらにいえば、ホスタイル・ブランドのように、一般人の共感を求めないブランド戦略もあります。

我々は、この数年、「多くの人が共感し、感動すること」は何だろうかと考え続けてきましたが、そんなことは実はどうだって良いことのようなのです。

今までと違ったものだということを目立たせる。これが大事です。

●誰にでもビジネスの成功のチャンスがあるということ

今までと違うものを作り出し、それをアピールする。

もちろん簡単なことではありません。

ただ、元手もいらないし、突出した技術力も要りません。

アップルという会社が、その典型例です。

アップルが起業したときは、たしかガレージで世界最初のパーソナル・コンピュータを作っていたと思います。金なんかありません。

現在はどうでしょう。資金は潤沢です。しかし(ジョブズのプレゼンとは裏腹に)突出した技術力も、安定した品質での製造能力も同社は持っていません。おそらく日本の製造業のほうが技術力も製造能力も上でしょう。

しかし、日本にアップルはない。言い方を変えると、「分かるやつだけに分かればいい」という態度で、「一緒にあのうっとうしいWindowsやスマートでないスマートフォンをこの世からなくしちまおうぜ」などというメッセージをぶち上げるCEOが日本にはいない。

アップルと日本のメーカーの違いは、それだけだと思うのです。

要するに、腹をくくって、今までと違うものを本気で考えて、目立つことができれば、ビジネスで成功できるということです。

資金力も家柄も性別も――おそらく才能も――何も関係ない。必要なのは考えることだけ。これほど公平なことはなかなかありません。 

あと、もう1回、同書で書きたいと思っています。

ところで。

リバース・ブランドの観点で言えば、iTunesはすでに機能過多であり、アップルもそろそろ飽きられる可能性が出てきたなという感じがします。同じことはGoogleについても言えており、そろそろIT業界にも新しいスタープレーヤーが登場するのではという予感がしています。

え?それがFaceBookやTwitter?まだ、分からないですね。もっとシンプルで画期的なのが来る!というのが私の予想です。

どちらにしろ、来年か再来年にははっきりするのではないかと思います。

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