自由への欲求と承認欲求の矛盾をどう解決するか
NHKの「100分de名著」のお正月スペシャルとして放送された
「100分de幸福論」を録画しておいたのを昨日見たのですが、
これがなかなか面白かったです。
「幸福とは何か?」をテーマに名著を読み解きながら考えるという内容で、
小説家の島田雅彦さんが井原西鶴の「好色一代男」と「好色一代女」、
経済学者の浜矩子さんがアダム・スミスの「国富論」、
哲学者の西研さんがヘーゲルの「精神現象学」、
心理学者の鈴木晶さんがフロイトの「精神分析入門」を取り上げていました。
ぼく自身はこの中で読んだことがあるのは「精神分析入門」だけで、
それも学生時代に読んだきりでほとんど内容を忘れていたので、
それぞれの内容と、その内容がどう幸福に結びついていくのかを
わかりやすく解説してくれていて興味深かったです。
例えば、「精神現象学」に関する解説をまとめてみます。
「精神現象学」によると、
人類の歴史は、個人が自由を自覚していく歴史だとのこと。
ルソーやカントは自由を礼賛していたが、
ヘーゲルは自由には危ういところもあると考えていた。
それは、自由を追求すると孤独になり、
生きる意味がわからなくなるということ。
他の人とつながる道まで発見できないと幸福にはなれない。
自由に生きたいという欲求と、承認を求める欲求は、
しばしば矛盾するが、
その矛盾をどう解決していけばいいのか。
意識の成長過程の第1段階は、生死を賭けた承認の戦い。
承認を求めて死をかけて戦うことで、人間には競争的な本性がある。
意識の成長過程の第2段階は、自分だけの価値の追求。
他人から認められないと思うから競争になるのであって、
世間の競争に巻き込まれず、自分たちの価値にしたがって生きればいい。
意識の成長過程の第3段階は、普遍を求める意識の誕生。
自由は求めるけど承認は拒否せず、自分の個性を作品として表現するが
自分も他人もいいと思えるものを追求しようとする。
魂は次々とこれらの段階を遍歴していき、
それを歩み尽くしたとき、自分の本来の姿を知るのだとのこと。
最近は、よくネット上でも承認欲求がテーマになっているので、
この自由への欲求と承認欲求の矛盾を
どう解決していくかという視点が面白かったです。
1月25日の午後3時からEテレで
「100分de幸福論」の再放送があるようなので、
「幸福とは何か?」というテーマに興味がある方は、
ぜひ見てみるといいと思います。