マニュアル化によるお礼状の形骸化
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しばらく前に、興味深い記事を読みました。ジャーナリストの池上彰さんと、東京大学先端科学技術研究センター教授の御厨貴さんが、政治家の育成システムについて対談している記事です。
その中に、以下のくだりがありました。
御厨:僕は一度だけ、松下政経塾に話をしにいったことがあるんです。すると数日後、話をした塾員全員からお礼状が届いた。「ほう、たいしたものだ」と感心しながら、最初のお礼状を読み、次のお礼状を開いて読み始めると、おや、なんだか読み覚えのある文章が。なんと、最初のお礼状の文章とほとんど同じだったんです。残りのお礼状もみんな同じ(苦笑)。池上:テンプレート化されているお礼状を、全員がそのまま送ってしまったんですか。マニュアル化にもほどがありますね(笑)
御厨:彼らは「絶対に自筆でお礼状を書け」と言われているらしいんです。なので、封書もあれば絵葉書もある。でもお礼状の文章がほとんど同じなんですよ。「先生のお話はためになりました……」と書いてあるんですが、本当に「ためになった」のか、と(笑)。お礼状というのは、出した当人の素直な感想が書いてあるからこそ「お礼」になるわけですよね。言葉が命のはずの政治家を育てるための教育で、お礼状を出すことが形骸化しているのに、びっくりしました。
第一級の政治家を育成するはずの松下政経塾の塾生ですら、このようなマニュアル化の弊害に陥ってしまっているのですから、我々一般人がマニュアルに頼ってしまうのも無理はないかもしれません(笑)。
私も、メールでのお礼状や取材依頼など、テンプレートをつくっておいて、それを多少書き換えて送ることはよくやってます。相手に合わせて、相手のことを思って、自分の頭できちんと考えて、自分なりの素直な言葉を書いて送るように心がけたいですね。
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