【Citrix】VAIOはtype P、仮想化はType 1が美しい
6月26日の夜に霞が関のシトリックス・システムズ・ジャパン株式会社(以下Citrix)で開催された、ブロガーズ・ミーティング@シトリックスに参加しました。
Citrixと言えば、Windows NT Serverの頃から仮想化に定評がある会社です。私はJ.D.エドワーズに勤務していた頃にCitrix MetaFrameと出会い、その後に、ある会社で情報システム部長をしていた時に、Citrix Presentation Serverを基幹システムに導入したことがあります。その頃から、仮想化は大好きです。
少し前の私の印象では、サーバーの仮想化はVMware、デスクトップやアプリケーションの仮想化はCitrixが得意とするように思っていましたが、近頃ではどちらの会社もサーバー側とパソコン側の両方に力を入れています。
今回のミーティングは、当初4月に予定されていて、諸般の事情で延期になっていたものです。最新のCitrixの製品はどうなっているのか、興味津々で参加しました。
現時点で商品化されているのは、データセンター向けのXenSever、オフィスワーカー向けのXenDesktop、タスクワーカー向けのXenAppの3種類です。
XenServer
XenServerは、サーバーOSを仮想化する製品です。ハードウェアの上でXenServerが動いていて、仮想化されたWindowsおよびLinuxのゲストOSを、XenServer上で複数動かすことができます。XenServerは、Citrixを中心に、インテル、富士通、IBMなどがいっしょに開発しています。CitrixはXenServerを無償で公開するとともに、より高機能なEssentials for XenServerを商品化しています。
XenApp
XenAppは、アプリケーションを仮想化する製品です。以前はPresentation Serverと呼ばれていました。アプリケーションを配信する方法は、2種類あります。1つは、サーバー側でアプリを実行して、アプリケーションの描画イメージをICAでクライアントに転送する方法です。もう1つは、アプリケーションの実行環境をパッケージ化して、オンデマンドでクライアントにストリーミング転送し、クライアントで実行する方法です。このやり方では、オフラインでもアプリケーションの利用が可能になります。
XenDesktop
Windowsデスクトップ環境を、いつでもどこでも配信できるようにするのが、XenDesktopです。仮想マシン環境のサーバーの上でクライアントOSが動いていて、クライアント端末から1対1で接続する形になります。データセンター側で単一のマスターデスクトップイメージを管理し、ユーザーがログオンするたびに、最新で新鮮なデスクトップを提供することができます。
XenDesktopとXenAppを組み合わせることもできます。例えば、デスクトップをアプリケーションがインストールされていない最低限のひな形だけにして、アプリケーションはXenAppで集約して管理することが可能です。この場合はアプリケーションをXenAppから配信することになりますが、スタートメニューにアイコンを置くことができる等、一般のユーザから見ると、あたかもデスクトップにあるように見えます。ここまで仮想化が進むと、Windowsやアプリケーションがいったいどこで動いているのか、だんだん訳がわからなくなります。
仮想化は非常に楽しい技術ですが、考えすぎると「~の時、~すれば、~できる」という答えを出すことが目的の”クイズ”になってしまいがちです。本末転倒にならないように、何のために仮想化するのか、その目的をしっかり押さえておくことが重要でしょう。
現時点では、仮想化技術の導入が進んでいるとは言えない状況だと思います。個人的には大好きな仮想化ですが、以下を考えると今後の普及はどうなるか、微妙な部分があると考えます。
疑問1
常時接続・固定料金の回線が64KのISDNしかなかった2000年頃は、クライアント/サーバーのアプリケーションを実用的な速度で使うために、MetaFrameによる仮想化が必要とされた。今のように高速で安価な有線および無線のネットワークが利用できる時代に、テクノロジーは同じでいいのか。
疑問2
仮想化すると、クライアント側にプリインストールされているWindowsやアプリケーションに加えて、ゲストOSで動く分のライセンスが必要になる。わかりやすく言えば、マイクロソフトWindowsやOfficeのライセンスを”二重に”買わなければならない。ノートパソコンやネットブックの価格は下がる一方であり、高性能なサーバーハードウェアやCitrix製品のライセンス料金の初期費用が相対的に割高に見える。仮想化によって、TCOは本当に下がるのか。
疑問3
Google Waveのようにブラウザの中がデスクトップになっていくトレンドがある。Windowsデスクトップ自体の重要性は、今後下がるのではないか。デスクトップの仮想化は、今後どうなるのか。
企業の規模やどこまでをTCOに含めるかによって、仮想化に対する考え方は異なるでしょう。
これからの仮想化を考える時に、Citrixがモバイルワーカー向けに開発を進めている一つの答えが、XenClientです。
ハイパーバイザと呼ばれる仮想マシンを実現するための制御プログラムは、Type 1とType 2の2種類があります。
Type 1では、ハイパーバイザがハードウェア上で直接動いて、全てのゲストOSはハイパーバイザ上で動作します。Citrix Xen、VMware ESX/ESXi、マイクロソフトHyper-Vなどはこの方式です。マニアックなところでは、IBMのLPARハイパーバイザがあります。ハードウェアの上で、すべてのOSが横並びに動くのが特徴です。この横並びというのが重要で、きれいなアーキテクチャだと思います。
Type 2では、ハードウェア上でホストOSと呼ばれるメインのOSがまず動きます。そして、ホストOSの上でハイパーバイザが稼働し、さらにその上で別のOS(ゲストOS)が動きます。メインのOSの上で複数のゲストOSが動く二階建てのイメージです。VMware VMware Server/WorkstationやマイクロソフトのVirtual PCはこの方式です。
XenClientは、主にノートパソコンを対象にしたType 1方式の製品です。インテルvProテクノロジーに対応したハードウェアで動きます。
XenClientはハードウェアの上で直接動いて、その上で、複数のWindows XPやVistaを動かすことができます。それぞれのWindowsは互いに隔離されています。使い方の一例としては、個人・私用のWindowsと会社・業務用のWindowsを、1台のパソコンで分離かつ共存させて、安全で自由度が高い使い方を実現することが考えられます。今どきのノートパソコンは、8GBのメモリを搭載できるものがあります。1つのWindowsに2GBずつ割り当てても、4種類のWindowsを同時に動かすことができることになります。
また、XenClientはモバイル用途ならではの機能が考慮されています。ネットワーク接続が切れても作業を継続できるだけでなく、パソコン上のファイルなどの変更は、データセンター側に自動でバックアップされます。一方、データセンター側のイメージに対してWindowsのアップデートなどの修正を行うと、パソコン側にそれが反映されます。この双方向の同期が特徴です。
加えて、Type 2の仮想化が標準的なハードウェアで構成された仮想マシンを前提としているのに対し、XenClientは、グラフィックドライバや無線ネットワークドライバは、その機種固有のドライバをパススルーでアクセスします。これにより、3Dゲームなどのアプリケーションであっても、ハードウェアの性能を活かした高速な仮想化ができるとのことです。
そのうちにXenClient上にWindows 7をプリインストールしたノートパソコンが各メーカーから市販されて、弊社のように複数のお客様の仕事をする場合は、それぞれのお客様からXenClient対応のWindowsイメージを支給されて使い分けることになるのかもしれません。一部の業務用の携帯電話では、紛失した時に内蔵の電話帳を管理者がリモート操作で消す機能が付いています。その流れで考えると「このWindowsはプロジェクト終了後、自動的に消滅する♪♪スリーツーワン タイ~ム ボカン」になる日も近いでしょう。
機会があれば”XenClientの上のWindowsで動くXenDesktopのWindowsの裏で動くXenAppのPowerPoint”で、亀の絵を描いてみたいです。
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