プログラマーよりも大工が稼ぐ日
日経新聞の10月30日の朝刊に、米連邦準備理事会(FRB)の元副議長アラン・ブラインダー氏の発言として、以下が紹介されていました。
「25年後には平均的なコンピュータープログラマーと大工のどちらが稼げるか? それは恐らく大工だ」米連邦準備理事会(FRB)の元副議長アラン・ブラインダーは言う。平凡なホワイトカラーの仕事は世界のどこかで代替されてしまうのだ。
以前に「今の仕事をこのまま続けていいか」でも書かせていただきましたが、インターネットが普及したフラット化した社会では、他の人や他の場所でもできる仕事は、より安い新興国の労働力やコンピュータによる機械化で代替されてしまいます。
アラン・ブラインダー氏の発言は、その国の現場でしかできない大工の仕事の方が、中国やインドで安く代替可能なプログラマーよりも、収入が高くなる可能性が高いことを述べています。
ダニエル・ピンク著”ハイコンセプト 「新しいこと」を考え出す人の時代”から、今の仕事をこのまま続けていいか、3つのチェックポイントを再度引用します。
1.他の国なら、これをもっと安くやれるだろうか。
2.コンピュータなら、これをもっとうまく、早くやれるだろうか。
3.自分が提供しているものは、この豊かな時代の中でも需要があるだろうか。
1と2の答えがイエス、あるいは、3の答えがノーだとしたら、あなたが抱える問題は深刻だ。
今の時代を生き延びられるかどうかは、対価の安い海外のナレッジ・ワーカーや、高速処理のコンピュータにもできない仕事をやれるか、そして豊かな時代における非物質的で解しがたい潜在的欲求を満足させられるかどうかにかかっている。
だからもはや、「ハイテク」だけでは不十分なのだ。
インターネットを使えば、世界のどこへでもデータを瞬時に超低コストで送ることができます。インターネットでは形のあるモノは送れないように思われますが、保険の申込書をスキャナーで読み込んで電送して、中国で入力作業をしている保険会社の事例を考えると、今や保険申込書のような形のある「モノ」までも送れるようになったと見ることもできるでしょう。
今後もインターネットでできることは、ますます増えてくると思われます。例えば、海外の国で日本語のテレビ番組を制作して、インターネット経由で日本向けに放送することは、技術的にはすでに可能です。そうなれば、日本の放送行政は意味がなくなります。放送業界も安泰ではありません。
しかも、大工の収入がプログラマーより高くなった日に、その大工が米国人や日本人であるとは限りません。日本の建設現場はずいぶん前から海外の労働者に頼っています。
好むと好まざるとにかかわらず、すべての業界や個人が、世界との競争になってきました。世界レベルでの同一労働同一賃金になるのではと考えます。
CMパンチの佐々木さんの「【ベーシック・インカム】について書き始める前に 」に、ゲッツ・W・ヴエルナーが引用されています。
私たちは、労働能力を有する者すべてを完全に雇用するというのは近代工業国家における過去の現象であるという認識に立って、労働と所得の関係がいかに新たに秩序づけられうるかを考慮しなければならないであろう。
折しも世界は「100年に一度」と言われる金融危機の最中にあります。100年に一度の変化が起きるかもしれません。
「労働能力を有する者すべてを完全に雇用するというのは近代工業国家における過去の現象であるという認識」は、非常に重い予言であるように思われます。