QWERTY配列キーボードにまつわる伝説
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ITmedia読者の多くならすでに聞き飽きたネタの一つなのかもしれないが、お恥ずかしいことに自分はほんのつい最近まで、キーボードのキー配列がQWERTYになった理由が、「初期タイプライターの機械的な性能の問題で、タイピング速度を落とすためにわざと打ちにくい配列にした」というものであることを信じて疑っていなかった。
もろんこれは、とんでもないデタラメだ。
詳しくは、安岡夫妻が著された本「キーボード配列 QWERTYの謎」を是非ご一読いただきたいが、長い話を乱暴に要約すると、元々は打ちやすいパターンを試行錯誤しているうちに登場した数あるキー配列の一つでしかなかったQWERTYが、それを採用した大手メーカーの思惑によりデファクトスタンダード化していったということらしい。まるでどこかのOSやオフィス用ソフトと同じ…。
面白いのは、今もまことしやかに流布する「わざと打ちにくい配列にした」という伝説が、実は異なるキー配列の提唱者が自説を有利にするために打ち出したネガティブキャンペーンに端を発しており、それがそのまま一人歩きして今も生き残っているという点。
「キーボード配列 QWERTYの謎」では、米国のPC用キーボードで使われる通称「ASCII配列」と、日本のPCで使われる「JIS配列」が微妙に異なる理由なども説明されている。自分は最初に初期Macintoshでキーボード操作を覚えてしまったため、いまだにASCII配列でないと気持ち良くパソコンを操作できないのだけれど、それがIBMの陰謀にまんまとはめられた結果だったとは思いもしなかった(笑)。
キーボード配列QWERTYの謎 安岡孝一・安岡素子 エヌティティ出版 2008/03 タイプライターのQWERTY配列は、本当はどのようにして決まったのだろう。それはどのように普及していって、そしてどのような形でコンピュータのキーボードに採り入れられたのだろう。あるいは、「タイピストがなるべく打ちにくいようなキー配列」なんていうガセネタを最初に流したのは誰で、このガセネタはどう広まっていったのだろう。本書では、これらを明らかにすべく、1840年代から1980年代まで、約140年間の歴史を旅することにしよう。(「まえがき」より) |
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