30. ヨドバシカメラさん、それは「不具合」というのだよ
昨日(2016年12月15日)のYahoo!ニュースに、次のような記事がありました。
リンク切れになるといけないので、要点だけ転載しますと(まずい場合はご指摘ください)、
高価な電化製品が割安で購入できることで人気のヨドバシカメラの福袋。今年は、ヨドバシカメラ専用の通販アプリだけで予約を受け付ける方式となったが、全48種類の福袋は、受付開始からわずか20分で完売した。
だが、そんな福袋の新しい「予約システム」をめぐり、一部のAndroidユーザーから「アプリに不具合があったのでは」という指摘がネット上に相次いだ。こうした指摘によれば、Android端末では、最新版のアプリをインストールしていても、
「ご注文整理券の発行のお申し込みには、最新の『ヨドバシ』ショッピングアプリの
ご利用が必要です。(略)アプリのバージョンアップをお願いします」というエラーメッセージが表示され、予約手続きができなかった場合があったというのだ。
ただ、福袋を購入しようとした全てのAndroidユーザーが、「アプリの不具合」を訴えているわけではないようだ。実際、ネット上には「Androidでも問題なく買えますよ」「Androidだけど買えました」といった報告も数多く見られる。
J-CASTニュースは12月15日、ヨドバシカメラの広報担当者に詳しい話を聞いた。電話取材に応じた担当者はまず、
「結論から言えば、Androidアプリでは予約ができない状態となっていた、という不具合はありませんでした」
と説明する。
「まず前提として、アプリに大量のアクセスが集中したため、予約ページに繋がり辛い状態になっていました。その影響で、ページへの接続がタイムアウトしてしまうケースがあったようです」
「その際に、iOS版では『インターネットに接続できません』と表示されました。ですが、Android版ではアプリのバージョンが判定できなかったことから、結果として『最新のアプリではありませんでした』という内容のメッセージが出たのです」
と、いうことだそうです。私はこの記事に書かれていることがすべて真実かどうかを検証するすべがないので、いちおう「すべて事実が書かれている」という前提で話をしますが・・・
ヨドバシカメラ(の広報担当者)さん、それを「不具合」というのですよ。
詭弁を弄すれば、確かに「アプリに『予約できない』という不具合はなかった」というのは正しいかもしれません。正確には、予約ページに繋がりにくい状態になった時のエラーメッセージが正しくなかった(正しいエラーメッセージ画面への遷移ができなかった)、ということなのでしょう。しかしそれでも、ユーザにしてみれば、不具合以外の何物でもありません。不具合とは、プログラムのバグのことを指すのではないのです。
ITサービスに不具合があるかどうかは、100%ユーザーの体験が決めることです。ユーザーが目的を達成できなかったと感じたら、その時点でそれは不具合なのです。「サーバアプリの不具合」というのが正しいでしょうね。やっぱり、アプリに不具合はあったのです ^_^。もしサーバ側で正しいエラーメッセージ画面への遷移ができていたのなら、大半のユーザーは「繋がりにくいのか、そりゃぁ、人気あるからなぁ、仕方ないなぁ。少したってからもう一度チャレンジするか」と感じ、上記のような憤りには至らなかったでしょう。
アプリを単なるプログラムだとかシステムだとかって考えてしまうと、ヨドバシカメラさんのような誤った認識をしてしまうのでしょう。アプリは(フロントエンドのアプリであってもサーバアプリであっても)あくまでも、ユーザーの期待に応える「サービス」を提供できて、初めて成立するのです。言い換えれば、ユーザーの期待に応えることができなければ、それはもう「不具合」と言うべきなのです。
とはいえ、今回のように、サーバが繋がりにくい状況もあり得ます。つまり、キャパシティや可用性の限界が原因でユーザーの期待に100%応えられない、ということは少なからず存在します。私だって、「ユーザの期待は100%応えなければならない」とは思っていません。その場合は、「つながにくくてごめんなさい」という画面を表示し、ユーザーの期待を少し冷ます、という工夫が不可欠です。今回は、その工夫を怠ったがために発生した騒ぎであると考えます。こういう事態も、アプリの(あるいはシステムの)不具合であると捉える必要があるのです。
それが、(IT)サービスというものです。