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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

「経験学習」-松尾睦先生のセミナーに参加した! 人が成長するためのキーワード。

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先日(11/29)、ダイヤモンド社主催「OJTの実践知」セミナーに参加してきました。来場者50人くらい。人事、人材開発や現場の育成担当者、育成に興味ある方が来場されていたようです。

講師は、神戸大学松尾睦教授。経験学習のご研究で第一人者です。

松尾睦先生の本(『「経験学習」入門』)は、以前、このブログでたびたび取り上げましたが、以前からファンだったので、目の前でお話しを伺い、ワークショップに参加できること自体がワクワク!でした。

★以前、このブログで『「経験学習」入門』について熱く語っていたシリーズはこちら。(途中でとん挫しているので、再開しなければ、と今思いました。汗)
序章について
1章について
2章について

さて、『「経験学習」入門』(ダイヤモンド社、2011年)の中でも触れられていますが、「教え上手な上司」と「教え上手ではない上司」の違いが明確にあると言います。また、成長する当人に焦点を当てれば、「成長する人」と「成長しない人」の違いとも言えます。何が違うのか。

人が育つ際のキーワードは、大きく3つ+2つ。

「ストレッチ」
「リフレクション」
「エンジョイメント」

「思い」
「つながり」

「ストレッチ」とは、いわゆる「背伸び」のことです。「ストレッチ目標」「背伸び目標」。ただ「背伸びさせればよい」のではなく、「ほどよいストレッチ」がポイント。「背伸び目標」とも言うくらいですから、背伸びして手が届く程度ではないとダメ。

相当高く高くジャンプしないと届かない目標は、返って部下・後輩をつぶしてしまう。また、「背伸び」といってもスモールステップでストレッチしていくことが大事だとも。

そうですよね。背伸びしすぎて、脚攣ることありますから。脚攣ると、ずっと痛いですし、歩行に影響がでることも。無理ない背伸びというのがポイントなんですね。

「リフレクション」。これは「内省」とか「ふりかえり」とも言いますね。
「何かしたとき」に「しっぱなし」ではなく「何があったか」「どこがよかったか」「どうすればよかったか」を振り返ることです。

その「ふりかえり」は、自問自答で行うこともできますが、他者との対話によってより深化するもの。Refectionって、反射という意味もあるので、他者が鏡のようになって、自分の気づきや学びを照らしてくれる、というニュアンスがあるのでしょうか?(違うかな)

それから「失敗」を振り返るだけではなく、「成功」もきちんと振り返っておく。

ずーっと前の上司に「成功体験の振り返りは必須」と言われたことを思い出します。なぜかというと「間違った成功体験もあるから」と。間違ったまま「これでいい」と、たまたまうまくいったことを自分のセオリー(成功法則)にしてしまうのはよくないから、言うのです。もちろん、「本当にうまくいった」だとしても、振り返ることで「自分なりの”正しい”セオリー」にして、応用が利く形にまで転換しておくこともできますし。だから、失敗も成功も「振り返り」は大事なのですよね。

3つ目の「エンジョイメント」。「楽しむ」ってことですね。

適切なストレッチとタイムリーで深いリフレクションがあっても、「難行苦行」みたいな状態が続くと学び続けられない、成長し続けられない。仕事に「楽しみ」を見つけることも必要です。

よくOJTの現場を見聞きしていて感じるのですが、「上司や先輩が仕事を楽しんでいるか」がまず重要で、その姿を見て、部下や後輩も「どうやって楽しめるか」を考えるようになると思うのです。

上司がため息ついて、先輩が眉間に皺を寄せて、それなのに、部下や後輩に「仕事に楽しさを見い出せ!」と言っても、説得力がない。だから、部下後輩の前でどう振る舞うかって気を付けないといけない。

さて、その3つ「ストレッチ」「リフレクション」「エンジョイメント」の3つを支えるものとして、「思い」と「つながり」があります。

「思い」とは、仕事への思い。価値観、信念と言ってもいいものでしょう。

「自分への思い」だけではなく、「他者への思い」。プロフェッショナルな人は、かならず「他者への思い」を持っているものなんだそう。

これ、心当たりあります。「自分のため」「自分が成長したい」と自分に興味関心があるのは20代の修行時代。あれこれ学ぶためにまず自分に関心を持つし、持たなければ勉強することもままならない時期もあります。でも、ある程度の年齢を重ね、経験も積んでくると、「誰かのため」という「相手視点」「他者視点」が湧いてくる。

最後の「つながり」。

人と人とのつながりですね。
人が成長するときに「つながり」があることと、人の成長支援をするときに「つながり」があることの両方が大事だと捉えました。

自分が一人で学べること、体験できることには限りがあるけれど、「上司や先輩」あるいは、「社内」だけでなく「社外」の様々な人間関係から学びを得ることができる。最近は、「越境による学習」という言葉もよく耳にするようになりましたし、ソーシャルなツールを使って色々な方と交流し、リアルにも会い、そこから何かを得ることもできるようになりました。

以前、このブログで紹介した「弱い紐帯(弱いつながり)」というのも、「つながり」に一役買うはず。

人の成長支援をする側もつながりが必要。自分で教えきれないこと、示せないことは、自分以外の誰かの力を借りる。『職場学習の探求』で関根雅泰さんが「OJT指導員に適しているのは、仕事の知識技術経験が長けているよりも人脈作りが上手な人のほうではないか」といったことを書かれていますが、そういう「つながり」の力もあると思います。

「ストレッチ」「リフレクション」「エンジョイメント」そして「思い」と「つながり」。

自分のこれまでの成長を振り返っても、後輩指導の場面に置き換えて考えても、「なるほどなるほど」と思うことばかりです。

さて、セミナーでは、そういう講義もありましたが、4-5人1グループでの対話の時間がとても楽しく、有意義でした。「自分が部下後輩を教え育てた時の成功例と失敗例」を思い出し、何があったのか、何が良かったのか/悪かったのか、どうすれば良かったのか、今ならどうするかを考えて紹介。他者からのフィードバックを得るものです。

それぞれの方が、「いい経験しているんだなあ」と思ったり、「同じことがわが身に起こったら、自分はどう対応するだろう?」といっしょに悩んでみたり。もともと「人材育成」に興味があるからこそ参加されている方ばかりでしょうから、生々しいお話も多く、とても勉強になりました。中でも上司としてかなり心を砕いて接した部下なのに、部下自身がどんどんやる気を失い、反抗的にすらなり、そのことが直接要因ではないとはいえ、最終的には退職してしまった、というケースは、聴いていて胸が痛みました。退職された上司にも心の傷になるんですよね。もちろん、部下側の言い分を聴いてみないと何があったのかはわかりませんが、「うーん」とうなるような事例でした。

個人的には、私の25年以上前の経験を話した時、同じグループの方から、当時の上司について言及されたことが目からうろこでしたが、その話はそれだけでも1000文字超えそうなので、また明日にでも。

松尾睦さんのご本を紹介します。

【『「経験学習」入門(ダイヤモンド社、2011)』】
*ビジネス書として書かれているので平易な表現で読みやすいですよ。

【『経験からの学習】(同文館、2006)プロジェクトマネージャやITコーディネータについての研究も載っています。成長の仕方が異なるそうです】
*ITコーディネータ、コンサルタントなどIT系の職種の成長についてかなり細かく調査、分析なさっています。IT業界の方にはより身近に感じられる内容でしょう。

上記で紹介したその他の本。

【『職場学習の探究』(関根さんの論文はこの本に掲載されています)】

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