「Trip as a Service」- インバウンドの動向とITの活用について
今回はインバウンドの動向とITの活用について考えてみました。
そしてインバウンドマーケットにおけるIT活用のコンセプトとして
「TaaS」(Trip as a Service)
というコンセプトワードを考えてみました。
これは訪日外国人が日本に来る場合、言語の問題もありそのほとんどがスマホやインターネットを使って情報を得たり、予約決済をしていることから、「Trip as a Service」つまり「サービスとしての旅行」、旅行の各要素をスマホ、ネットを使ってシームレスにつなぎ、その効率性、利便性を高める「理想的なシステム」としてを「TaaS」を想定してみます。
まず最初にこのインバウンドビジネスの市場規模ですが、2017年の訪日外国人全体の旅行消費額は4兆円4161億円という数字がでています。また、この数字は2016年から17.8%伸びているということです。さらに政府は2020年オリンピック年には8兆円を目指しているようです。インバウンドは「TaaS」のマーケットとして十分に将来性があると言えるでしょう。
その市場の内訳としては次のようになります。
(訪日ラボホームページより、2017年統計資料より)
<買物>
まず買物から見ると、こちらは中国人に代表される菓子、医薬品/健康食品、食料品・飲料・酒・タバコ、そして化粧品などです。
こうした買物は今は日本国内の現地のショップで現金で購入されているようですが、今後この分野はキャッシュレスになり、さらには現地に行かなくても越境ECなどでも購入できるビジネスにシフトしていくと思われます。
「TaaS」として考えるのであれば、スマホ上の買い物サービスでアイテムを選択してキャッシュレス決済をしてしまい、物品を帰りの空港でまとめて受け取ったり、帰国後に送ってもらうなどのサービスが完結するイメージとなります。
<宿泊>
次に宿泊ですが、こちらは既にスマホ、ネットで決済まで完結する「TaaS」が既に実現しているマーケットです。
特に訪日外国人の場合、事前にOTA(Online Travel Agency)でインターネットでブッキングするスタイルがの主流となっています。インバウンドでは以下のような海外の大手のOTAから国内の宿泊予約決済ができます。
Expedia
Trivago
Hotels.com
Booking.com
TripAdviser
また日本だと以下のようなサイトでオンライン予約決済ができます。
楽天トラベル
じゃらん
JTB/るるぶトラベル
一休
DeNAトラベル
ちなみにホテル側はこうした複数のOTAに部屋の情報を提示してリアルタイムで予約決済するため、そうした複数入り口の予約決済を管理して在庫管理をするサービス「サイトコントローラー」や、それと連動したPMS(Property Management System)の導入やクラウド利用が、ホテルサイドではIT導入として必須となっています。
国内の「サイトコントローラー」の代表サービスとしては約4000施設に利用されているリクルート系の「TLリンカーン」、約8000施設で利用されている楽天系の「ねっぱん!」などがあります。
PMS(Property Management System)はパッケージシステムだけでなく、クラウド型も最近、NECや富士通の大手が中心に普及しているようです。
ちなみにこのOTAによる予約決済の分野は最近、OTA側が無茶な最低価格保証を宿側に求めているのではないかということで、公正取引委員会が入り、ニュースになっています。
いち早く「TaaS」が進んだこの宿泊分野でのこうした問題、課題は「TaaS」の世界にも一定のルールが必要ではないかという教訓となっています。
宿泊マーケットで、最近スタートした新規事業は民泊です。まだこれからの市場ですが、こちらも基本的にAirbnbや国内の他の民泊サイトなど、スマホ、ネットで予約決済できる「TaaS」がベースとなっています。
<飲食>
続いて飲食ですが、こちらもネット予約が主流になりつつあり「TaaS」の世界に移行しつつあります。
従来はお店に直接電話して予約していたわけですが、インバウンドとなると言語の違いもあり、外国語対応のレストラン予約サイトで、外国人が国内のレストランの予約をするケースが増えてきました。代表的な予約サイトとしては以下のようなものがあります。
Voyagin
Savor Japan
Table Check
Tokyo Dinner Ticket
Gurunavi
Tabelog
Pocket Concierge
Open Table
日本人にも馴染みのぐるなびや食べログもインバウンド対応してきています。
またレストランネット予約サービスは、新規参入、新規サービスが続々と出て来ており、まだまだ「TaaS」のプレイヤーが増えそうな市場です。
<交通>
交通もインバウンドの場合、基本的にネットで予約決済が実現できてきています。
既にOTAを通じて航空券、鉄道などのチケットはBookingできると思いますが、やはり今後の課題は電車、バスやタクシー、レンタカー、シェアサイクルなど他の交通手段です。
この分野は、「MaaS」という新しいコンセプトで一つのスマホからネット経由で全ての交通手段が予約、決済できるようになれば、インバウンド向けにも活用できると思います。
特にタクシーの分野はUberが国内のタクシー会社と提携してスマホで予約できるようになっているため一歩先んじている思われます。
<娯楽サービス>
最後に娯楽サービスですが、こちらは最近伸びているマーケットです。
国内で新しい外国人向けのオプショナルツアーが続々と生まれています。その場合はやはり外国語が話せるツアーガイドの育成が急務です。
また面白いところでは、渋谷などで夜の店でお酒を飲みながら楽しむ「ナイトツアー」など新しいタイプのツアーが人気があるようです。
ナイトツアーについては欧米人向けには非常に大きなマーケットになる可能性があると見ています。
またこうしたツアーは現在は、現地で申し込むスタイルのようですが、今後ネットサイトから予約決済できるような「TaaS」に必ず変わってくると予想されます。逆にこの領域は今あまり無いので「TaaS」が急速に伸びていく領域と思います。
<まとめ>
このようにインバウンド業界、旅行業界全体としてはOTAのサービスの中で宿泊、交通などの分野を中心に「TaaS」的な世界が普及しつつあります。今後買物、飲食、娯楽などの領域も「TaaS」に融合され、訪日外国人、旅行者にとってシームレスにスマホ、ネットでサービスが完結できる未来が早晩来るとは思います。
ただそこで最近問題となっているような、巨大するぎるOTAと現場である買物、宿泊、交通、飲食、娯楽を提供する事業者との間の共通ルールづくりが必要になってくると思われます。
特にプライシングの領域は、昨今「ダイナミックプライシング」のような需給状況でプライスをリアルタイムで変動できるような仕組みも実用されていますので、OTAも現場の事業者もそして消費者、旅行者もwin-winになるような仕組みやルールづくりが必要と考えます。
またビジネスサイドから見た場合に、大手のOTAの隙間を埋めるような、対象顧客を絞ったニッチな「TaaS」を提供する新しいプレイヤーのスタートアップも期待したいところです。
特に旅は従来のマススタイルから、個人個人にあわせたスタイルに変わっていますので、そうした個人のニッチな旅を刺激する「TaaS」サービスを期待したいと思います。
例えば逆説的ですが、昔のスマホもネットもない時代、旅はとても冒険的(Adventure)でしたよね。
あの頃ような現地に行ってから現地の人に教えてもらって、会話して楽しむような旅のスタイルを、あえて「TaaS」で提供できないでしょうか。例えば「TaaS」である部分が空白になっていて、そこは自力でなんとかしなければいけないような試練がある旅スケジュールとか。
何でもスマホで情報が手にはいる時代、そんなことを考えると逆に楽しくなります。
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