「鈍感力」を鍛える
今回は、先日亡くなった作家で医師の渡辺淳一氏のベストセラーで有名になった「鈍感力」を取り上げ、筆者の持病を題材として「鈍感力」を鍛えるひとつの方法を述べます。
なお、写真は掲載していませんが、病気に関することなので、もしかしたら気分が悪くなる方もおられるかもしれません。読んで気が滅入る恐れがある場合は、パスなさってください。
■「鈍感力」への賛否
「鈍感力」に対しては、「鈍感力」の概念と有用性への賛同とともに、「鈍感力」を獲得する方法が提示されていないことへの批判が読者から数多く寄せられています。筆者はWebサイトの対談記事を読んで「鈍感力」に興味をもったのですが、Amazonのカスタマーレビューを見て、あまりに評判が悪いことに驚きました。
筆者は永年、慢性蕁麻疹(蕁麻疹)に苦しんでいるので、皮膚への刺激やアレルギーに関する記述については、「おっしゃることは分かるが、具体的にはどうしたらよいのか?」と思わずにいられませんでした。問題の指摘だけに終わっていて、解決策が提示されていないからです。
■慢性蕁麻疹で死を意識
慢性蕁麻疹といっても、なじみのない方にはどのような症状なのかピンとこないと思います。「かゆくて、少しうっとうしいだけではないか?」と思われるかもしれません。しかし、かなりひどい症状もあるのです。
昨年の初め、筆者は生まれて初めて自らの死を意識しました。2カ月もの期間にわたって、連日38度以上の高熱が続いたのです。タイミングも最悪で、中小企業診断士になるために延べ15日間の実務補習に参加していた時期でした。肺の機能も落ち、歩くのをまったく苦にしなかった筆者が、少し歩いただけで息が切れました。「このまま体が弱っていくのかもしれない。死を目前にしたときは、こんな感じなのだろうか」などと気持ちも弱くなっていきました。
■原因を突き止めたがジレンマに陥る
病院でインフルエンザや溶連菌の検査などの検査を受けましたが、結果はすべて陰性。結局、病院では原因がわからず、抗ヒスタミン剤の副作用であるという結論に自分でたどり着きました。薬によってドライマウスになり、嚥下(えんげ)障害を起こしており、それが原因となって高熱を出していたのでした。
原因にたどり着いたのはいいとして、そこからが大変でした。薬には副作用がありますが、服用しなければ蕁麻疹が悪化するため、服用をやめても続けても問題があるというジレンマに陥ってしまったのです。いろいろ考えた末、薬の服用をやめると決断しました。
■論理と感情で対処
対処は、論理と感情の両面です。薬を服用し続ければ、蕁麻疹は悪化しないかもしれませんが、命に関わります。蕁麻疹はかなりひどい状態でしたから、「服用をやめても、それ以上悪化しない」と考えました。論理によって、薬の服用をやめると決断した訳です。
薬をやめたら、今度は症状との付き合い方を考える必要があります。経験的に、筆者の蕁麻疹を誘発したり増悪(ぞうあく)したりする要因が分かってきていたので、体調を見ながら、そうした要因を避けるようにしました。嗜好品や食べ物を極端に制限するのは、それ自体がストレスになるので、体調がよければ摂ってよいと自分でルールを決めたのです。
また、増悪するとは言え、掻いてもよいことにしました。ときには痛い目に遭うこともありますが、「掻いてはいけない」と思うことがストレスになるからです
薬は、症状によっては飲んでよいことに決めました。ただし、一番弱く、市販もされている薬です。条件付きで薬を飲んでもよいと決めたのは、心の保険や安全弁のようになっています。
■「鈍感力」は鍛えられるか
今回は、「鈍感力」を鍛えるひとつの事例として、筆者が持病と折り合いをつけている方法をご紹介しました。
対象にもよりますが、筆者は「鈍感力」を鍛えることができると考えています。前述した、論理的な分析と判断、それと感情の制御がポイントだと考えます。