ソーシャルストリームの申し子 Twitter
»
2009年に大ブレイクを果たしたTwitterこそ、Blogの次のマイルストーンに数えられるサービスだ。
われわれは、現在のWebの最大の特徴のひとつとして、同一のWebサイトという置き場所にデータが常にとどまっているような静的な状態から、無数のWebサイトをまたぐようにデータが流れていく動的な状態への変化を確認している。このことをわれわれはソーシャルストリームと呼んでいる。
Twitterは、Webを”サイト”という静的な固まり、場所的あるいはリスト的な概念から、”ストリーム”という動的な流れ、時間的な概念に変えつつある。従来のWebサイトとは、同一のサービス提供者のサーバー群に置かれた、特定の管理者がコントロールするコンテンツの置き場所でありリストだった。それが今や、Webは複数のサービス提供者の、不特定多数のサーバー群を流れていくさまざまなデータの流れそのものになっている。
これを単にストリームといってもいいし、データストリームと呼んでもよい。いずれにしても、Web全体で海流や気流のように情報が流れまくっていることを指す。
Blogにも当然この感覚はあった。エントリーを時系列順に表示しているのはその現れだが、普及が進むにつれてBlogには余計な機能が付加され、ツールとして重くなり、残念なことに流れを作ることよりも場を作ることへと変わっていく。ストリームの主役から自ら降りたのだ。
逆にTwitterは、Blogのエントリーよりもさらに小さく細かい情報単位での投稿を頑に守る。140文字制限という不自由さをユーザーに強いることで、より多くの情報のWebへの流入を担保したのだ。時系列順に情報を表示するためだけの機能にフォーカスすることで、かえって多くのユーザーを獲得するに至る。
このストリーム、という考えは、ライフログやライフストリーミング、あるいはアクティビティストリーミングなどという呼び方で広まり始め、SNSの世界ではFacebookが参加者のアクティビティを時系列順に表示するニュースフィードというサービスを採用したことで注目を浴びた。その後Google Readerも集約した記事のストリーミング機能を実装し始めたし、Twitter以外にも、(同じくGoogleのOBが創業した)FriendFeedなどが複数のソーシャルサービスにまたがる自分の活動履歴を一本化するサービスを始めたことで、いよいよこの” ストリーム”という概念こそがWebのこれからの潮流であることが明確になってきた。
ストリームは技術的には、Web上の非常に細小な粒度の情報群を、リアルタイムで世界中に伝達しまくる仕組みと、その概念だ。仕組み的には、短いエントリーとパーマリンク、引用された短縮リンク、そしてタグ。これを非常に速い速度で配信しつづける。
同時に、API(アプリケーションの機能を利用するためのインターフェイス)とRSSフィード(Webの更新情報をコンパクトに外部配信するフォーマット)を使って、他のメディアでも利用できるような標準フォーマットになっている。これだけだ。
たったそれだけのことなのだが、現在の起きている、あるいは今起きつつある事象や意識の流れがストリームによって表現されつつあり、Web上の記憶や記録を手中にしたはずのGoogleでさえ、その流れに追いつけていない。
日本国内でもストリーム的なサービスとしてmixiヴォイスが始まり、GREEも日記のように古い形式のデータ記述方式でなくストリーム的なサービスへと移行すると発表した。そして、ブログサービスのアメブロの黒字化をようやく果たしたはずのサイバーエージェントまでが、Twitterクローンのアメーバなうというサービスを開始している。
これらの動きのハブこそがTwitterだ。
ソーシャルメディアマーケティングの主役も、いまやブログからTwitterへと移り始めているといっていい。
ー オガワカズヒロ著『ソーシャルメディアマーケティング』より(ソフトバンククリエイティブより近日発売予定)
ー オガワカズヒロ著『ソーシャルメディアマーケティング』より(ソフトバンククリエイティブより近日発売予定)
SpecialPR