エコカー開発ベンチャー テスラに学ぶ事業モデル
テスラという企業がアメリカで評判になっている。
100%モーターで稼働する電気自動車を開発しているベンチャーだが、社名を冠した彼らの製品は単なる実用車ではない。時速0→100Kmにわずか5秒程度の加速力を持つ一種のスーパーカーメーカーである。エコカーの開発をしているわけだから、テスラの燃費がいいのは当たり前として、一回の充電で350Kmほど走ることができるのは立派だ(一回の充電でどのくらいの時間がかかるのかが問題だが・・・)。しかも、ボディはロータス・エリーゼかロータス・ヨーロッパに酷似した、非常にクールなデザインとなっている。流行のエコカーで劇速、かつカッコいい、となれば、カリフォルニア州のシュワルツェネッガー知事や俳優のジョージ・クルーニーらをはじめとする、セレブ達がこぞって購入し始めているのも当然かもしれない。
日本で事業に成功した人がフェラーリあたりを乗っているとやっかみ混じりに、成金扱いされたりして、足を引っ張られることがよくあるものだが、このテスラなら言い訳は利きそうだ(笑)。成功したらいい家に住んでいいクルマに乗る、そういうことで自分の成功を実感し達成感を得る、というのはあまりにステレオタイプではあるが、それ自体を否定する必要はない。それはそれで、事業の成功は社会の活性につながるわけだし、そのモチベーションを維持するために必要な夢であれば肯定的に考えるべきだろう。
テスラ以外にも電気自動車を作ったり、エコにからめた事業開発を行っている企業は多いが、テスラがユニークかつ愉しいところは、そういう社会的な成功者のモチベーションアップのための玩具として、プライドをくすぐりつつ社会にも地球にも本人の為にもなる、という価値を提供していることなのだ。事業プランを書いた人は、人間というものをよく知っている、といえるかもしれない。(僕もそういう事業モデルを考えねば)
ところで、このテスラ、メルセデス・ベンツに電気自動車用のリチウムイオン電池の供給をする契約をしたらしい。
数日前に、メルセデスが7年以内に石油を使った内燃機関の自車利用の全廃を発表したらしいとのニュースが出たが、背景にはテスラがいる、のかもしれない。
セレブを始めとする社会感染力をもったミーム達の心に響く製品(この場合はテスラロードスターなど)をデモとしてリリースし、その反響をベースに地道なB2B的事業でマネタイズする。これは僕たちIT系のスタートアップにも共通する良い事業モデルだ。
どんな業界からも僕たちは学ぶことができる、いや学ぶべきだ。
一つの事実から抽出した真理を変換して、自分たちの事業に役立てる。それが事業家にとって、もっとも安上がりかつ効果的な武器であり、起業家にとっての最良の資質であると思う。