Feedビジネスにおける著作権問題について
iTMSとiPodのビジネスモデルについて、AACという音楽圧縮フォーマットがApple独自であり、iPodが楽曲を取り込めるのはiTunes経由だけ、という事実が「独占的」「非オープン」であると言う理由で、非難する声が聞こえてきている。フランス政府はAppleに、フランス市場から立ち去るか、技術公開をするかを迫っている。この動きがどのように展開するかは分からないが、著作権の保護や企業としての利益の追求と、反トラストの法的規制は常に矛盾をはらむ問題である。
さて、スタートしたばかりのW杯記事のFeed配信の実証実験であるが、feedpathでしか見られない、ということに対して批判的なエントリーをするBlogも散見される。曰く「オープンであることがWeb2.0 ではないか?」とか、曰く「囲い込み的なアプローチだ」などなど。注目していただけるのは有り難いことだと思う。
しかし、敢えて書くが、そんなことは百も承知の上だ。
なぜなら実際の世の中では、権利関係が複雑に絡み、ユーザー側の論理だけで話が進むことはない。ありとあらゆることに配慮しつつ、少しずつでも前に進む、気の遠くなるほどの努力が必要なのである。今回の実験においても前例がない中で、関係者全員が常ならぬ努力と工夫をもってようやくたどり着いた一つの方法であり、ベストであるとは言えないが、とにかくベターな途を模索しての結果である。アメリカンフットボールのように、倒されても倒されても、とにかく1ヤードずつでも前に進む努力を繰り返すことこそが、このゲームのルールであると僕は思っている。
クリエイティブ・コモンズやオープンソース精神は尊重するが、著作者の権利を守ることも重要な問題であり、何の制限もかけずに全部の情報を公開せよと迫るのは暴力的であると僕は思う。例えばGoogleの創業者に、ページランクをはじめとする検索アルゴリズムを公開しろと言っても応じるわけが無い。オープンソースを使ったりAPIを公開したとしても、全てをさらけ出せるわけではないのだ。理想を語るのはいいが、自分では何もせずに権利を主張することだけでは現実は変わらないだろう。この問題については多くのマスコミの方にお話を伺うことが多いが、状況を正しく認識しているからこそ、その打開が非常に難しく、強い閉塞感があると感じる。
僕はFeedは、email、Webに続くメディアとして成長すると思っている。メディアであれば広告が載ったり、あるいは購読のために課金されることは当然であると思う。紙媒体やWebで成立しているのだから、Feedもそうなると確信している。しかしながら、Feedのトラフィックは現状無駄に浪費されており、ユーザーも企業もちゃんとしたメリットを感じることができないでいる。企業はFeedの可能性を感じつつもすぐには踏み込めないし、ユーザーも情報の活用がFeedだけで完結するようにならない限りは、十分に良さを知ることができない。IE7が十分に普及することが起爆剤になるのかもしれないが、それも遅れており、待つだけではなかなか状況が好転しない。今の段階でFeedで全ての情報を公開してしまえば、メディアとしても自らのビジネスモデルを破壊しただけで終わり、新たなビジネスモデルを創造するに至らないという最悪のケースを迎えるかもしれない。それではユーザーも企業も何の得もしないではないか。
Feedがメディアとして成立してビジネスになるとき、マスメディアがどこにFeedを配信するか、あるいは全方位に公開するかはマスメディア側のオプションであり、どのような形になるかは分からない。一つ言えることはfeedpathでそれを独占できることはあり得ないし、そのつもりは毛頭ないということだ。
ただ、今は誰かが何かを始めなければ、状況が変わらない、ということだけは分かっていて、少なくともまず自分でできることをやってみよう、と考えている。その意味で、僕はBloggerであると同時に、現場でもがきつづけるビジネスマンでありたい。
++ちなみに、「玉虫色」というのは、こういう意味です。