日本版SOXでみんなHappy
ここ最近、「日本版SOX」が熱い注目を集めている。正直言って、読者はそれほど興味を持たないのかと思っていたが少し違った。よく考えると、SOX(米国企業改革法)は日本にそのまま持ってくるにはイマイチなネーミングであるにも関わらず、先日の記事では、エンタープライズチャンネルでダントツトップのアクセスを記録した。
今日も東芝ソリューションの担当者に話を聞いたが、なるほど、その理由を垣間見た気がした。日本版SOXは、ITを構築する者と使う者を結びつけ、さらには、ITベンダーをも幸せにする可能性がある。説明を聞くと、ゼロサムの世知辛さに慣れつつある耳には小気味いい期待感が響く。たとえば、IT業界を苦しめてきた企業の経営者の言葉「ITは分からないなあ、担当者に聞いてくれないかなあ」という感覚が許されなくなる。
7月13日に金融庁企業会計審議会が公表した「日本版SOX法」の草案では、財務報告に関わる内部統制の評価および報告の義務について明記している。一例を挙げれば、各業務領域において利用されるコンピュータなどのデータが適切に収集、処理され、財務報告に反映されるプロセスになっていることを証明しなくてはいけない。紙ベースの伝票をコンピュータで電子処理できるようにしなければ、粉飾決算の疑いをかけられる可能性すらある。そして、責任者は紛れもなく経営者だ。
実際に米国では、エンロン、ワールドコム、アーサーアンダーセンなどの大企業が容赦なく倒産に追い込まれたのもの記憶に新しい。 というわけで、日本版SOXが実現した場合、経営者はITを他人事として放置することはとてもではないができなくなる。どこまで強制力を持つかはまだ不明だが、違反した場合のブランド力の低下や株価の下落といったリスクも併せて考えれば、ビジネスへの影響力は決して小さくない。
裏を返せば、今まで難しかった「ITと経営の統合」を実現するための絶好の機会になるかもしれない。そうなると、ITベンダーも黙ってはいない。コンテンツ管理や運用管理、ビジネスインテリジェンスなど、日本版SOXに対応しようとするとさまざまなIT製品が関わってくる。アンテナを効かせているITベンダーは既に、日本版SOXをどうやってビジネスに生かしていくかについて作戦を練っているようだ。個人的にも、このキーワードでIT業界が盛り上がってくれる方が、前向きで健全な気がする。できれば、強制力は大きい方がいい。