オルタナティブ・ブログ > 熊谷修司の最高のチームを創る >

組織、マネジメントの理論とその実践を、スポーツ・学校を通して考える。

補欠とは・・・

»

卓球女子パリオリンピックの代表選手が決定(内定)した。東京オリンピックに出場した伊藤美誠選手は惜しくも落選。その悔しさは本人にしかわからない。代表が内定した後、伊藤選手が「私はリザーブには向いていない」という発言があったそうだ。(その場面を見たわけではないが)。どういう意味で「向いていない」のかは詳しいことはわからない。

リザーブ(補欠)とは何か。補欠を選ぶのは卓球協会の仕事であって、選手が「やりたい」「やりたくない」と宣言するものではない。協会の使命は「リザーブも含めて最高・最強のチーム編成をすること」に尽きる。

高校野球では予選の前にメンバー発表を行う。レギュラーは9人しかいない。「自分は補欠に向いていないから、補欠は辞退します」という話は聞いたことが無い。それは監督が決めること。補欠も含めてチームなのだ。

「オリンピックの補欠」で思い出すのは、スキー複合の阿部雅司選手。アルベールビルオリンピックではノルディック複合のリーダー格でありながら、直前になってメンバーから外された。チームは日本初となる金メダルを獲得したが、その陰に阿部選手はいた。補欠になった瞬間阿部選手は裏方に徹し荷物運びや雑用を黙々と行った。「チームのために自分ができること」をやり遂げたのだった。(その次のオリンピックで阿部選手は見事に金メダルを獲得する)

IMG_6951.jpg

 また、長野五輪ではスキージャンプのテストジャンパーとして選ばれたのが西方仁也選手だった。長野オリンピックの前大会であるリレハンメルで銀メダルを獲得したジャンパー。地元長野でのオリンピック出場を目指したが、代表入りを逃していた。ラージヒル種目では1本目が終わったあとに、試合続行が危ぶまれるほどの降雪。競技を続行させるためにテストジャンパーはひたすら飛んだ。西方選手がK点超えの大ジャンプを見せたことで競技が再開された。(詳しいことは『試走者たちの金メダル』(伊藤龍治 著)。映画『ヒノマルソウル』そもそも西方選手がテストジャンパーにいること自体、外国チームは驚いたという。

 チームにはレギュラーも補欠もないのだ。それぞれがその役割を果たす。全員がメンバー、それだけなのだ。(写真は阿部雅司さんの許可をいただき掲載させていただきました。阿部さん、ありがとうございます。)

Comment(0)