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組織、マネジメントの理論とその実践を、スポーツ・学校を通して考える。

素晴らしい指導者が目の前にいた

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今年の高校野球界で話題を集めた慶応高校野球部の森林監督、仙台育英高校の須江監督。このお二人については「素晴らしい指導をされている」とこのブログでも書かせていただいたが、目の前にも素晴らしい指導者がいた。

 私がかつて勤務していた札幌のS校でバスケットボールの指導に長年携わっているM先生。(実名を書きたいところだが、本人の許可をまだ得ていない)。先日、M先生から試合の案内をいただき応援に行ってきたが、「こんな指導者はなかなかいないのだろうなぁ」と感じた。当日は他校の試合も含め3試合観戦したが、女子のバスケットボールのコーチングではよく見かける場面なのだが、とにかく細かく指示をする・怒る指導が目についてしまう。「前だ、後ろだ、右だ、左だ」と。選手が考える場面はあるのだろうか・・・。あれでは選手は育たない。コーチのロボットになってしまう。

 M先生は違う。大声を出して細々指示をするようなことはなく、良いプレーに「ナイスプレー」と声をかけ拍手する。タイムアウトでも、まず選手たち同士で話し合わせ、それから話をする。選手の成長を第一に考えている指導なのだ。私が在職していた2年間、コロナで練習もままならい状況で2回も全道大会に進出している。自ら考える選手たちはプレーも素晴らしいが、態度も立派。オフィシャルを任せれば北海道で一番と言われ、今年のインターハイ決勝でのオフィシャルも務めた。人を育てている指導がM先生の指導なのだと思う。

 高校の部活動での体罰、大学体育会を舞台にした犯罪、プロ野球の世界での暴力行為。今年の日本のスポーツには、バレーボール、サッカー、ラグビー、ハンドボールなどの活躍と好成績で明るい話題が多かっただけに、残念な記事には暗澹たる思いがする。M先生のような指導者が一人でも増えて欲しいと願うばかりだ。

IMG_6212.JPG 試合後、選手たちに話をする機会があり、そこで「ナイスゲーム。最後までよく走った。M先生は勝ち負けを超えたところにいるすごい指導者なんだ。このバスケットを大切に受け継いでほしい」と言った。真剣なまなざしで話を聴いてくれる選手。思わず涙声になってしまった。

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