情報は予後を左右する/音のインパクトとユーザビリティ
今回は、ひとくちコラムを、2本。
情報は予後を左右する
以前(2003年~2006年)、筆者の事務所には、ロボロフスキー・ハムスターが勤務していた。ハムスターというのは、病気を隠す生き物である。だから、福利厚生には、細心の注意を払っていた。
この社会では、ハムスターたちのように、「強さ」の鎧を身にまとう方が、うまい生き方なのかもしれない。
だが、筆者は、病気になれば病気になったと書く。
体験談や医療情報は、できるだけ知らしめる方が、(自分のためにはならないが)、他者のためになる可能性があるからだ。
とくに、今回筆者が罹患した突発性難聴のように、早期治療が極めて重要な病気では、情報を持っているか否かが鍵となる。
筆者の場合、耳の異常を感じた数時間後、随伴症状の眩暈の状態から、ネットで調べて病名にアタリを付けた。
そして、半径5km以内の耳鼻咽喉科のWebサイトを調べ、この病気の情報が載っている医院をピックアップ。翌日、その中で設備の整った総合病院へ。CT、メニエールの検査を受け、他の病気を除外診断。
帰宅後、最初の薬を服用。
随伴症状の回転性めまいと頭痛と吐き気は、発症前後三日間で消失。昨日の時点で、聴力は9割回復した。
まだ安静を指示されてはいるが(とはいえ、ずっと台所仕事をし、一日数時間以上PCにも向かっている...)、二歩前進一歩後退を繰り返しながら、体調も、回復しつつある。
発症から24時間以内に治療を開始したこと、低音障害型であったことが、聴力回復の要因であろう。
両耳の耳鳴りという有難くない後遺症があり、医師は悲観的だが、筆者自身は、時間はかかっても、改善すると思っている。
なお、発症の原因はといえば、仕事には全く関係ないことである。筆者の場合、非常に幸運なことに、取引先、顧客、編集者に恵まれてきたため、仕事がストレスになったことはない。
5年ほど不規則な生活をしていて疲労が蓄積し、具体的な改善策を検討し始めた矢先に、睡眠不足を引き起こす私事のトピックがあったことが原因である。
それにしても、インターネットが普及し、医療機関のWebサイトが充実している現在であるからこそ、容易に情報を入手でき、治療に結 びつけることができたのである。
情報は、予後を、左右する。
ありし日のロボロフスキー・ハムスター「ソクラテス課長」
音のインパクトとユーザビリティ
突発性難聴の患者数は多いとはいえないが、症状のよく似た病気に、ヘッドフォン難聴があるという。
その名のとおり、これは、ヘッドフォンを使う人なら誰でも患う可能性がある。
筆者は、DTM作業をする際、細心の注意をはらっている。
Windowsのボリュームコントロールの音量は、通常「1」、最大でも「5」である。
そもそも、頭の中の音楽を出力するだけであるから、全ミュートでも(ミキシングはできないが)入力には支障ないので、できるだけヘッドフォンを使わずに作業を進め、休憩も適度に取っている。
また、携帯プレーヤー(Creative ZEN)を聴く場合のボリュームも、基本的に、「3」以上には設定しない。
したがって、自分がボリュームを設定する側ならば、ヘッドフォン難聴になる可能性はきわめて低い。
しかし、他者が設定したボリュームの音楽を聴く場合は、どうか。
ネット上には、高音圧且つボリュームのデフォルト値を最大に設定したサウンドがあふれている。
時折、再生ボタンをクリックする前に、デフォルト設定を確認することを忘れ、大きな音が鳴り響いて驚き、慌てふためいてボリューム調整ツマミをドラッグすることがある。
音のインパクトと、ユーザビリティには、相反する部分があるのだろうか。