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市販プラズマクラスター発生機のウイルス除去効果ほぼゼロ

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プラズマクラスター技術で、空気中に浮遊する「新型コロナウイルス」の減少効果を実証というニュースが流れてきました。しかし、これで即、市販のプラズマクラスター家電で新型コロナウィルス対策ができるというわけではありません。

長崎大学の研究機関による実験では、3リットルという非常に小さな空間で 約1,000万個/cm³ という高濃度のプラズマクラスターを発生させて効果があったとしています。一方、実際に売られているシャープのプラズマクラスターイオン発生装置は、約1畳というトイレ用の狭い空間向け装置

商品を高さ2.2mの天井に取り付けて、「標準」運転時に部屋中央(床上1.2m)で25,000個/cm³のイオンが測定できる

としています。長崎大学の効果を確認したという実験とは濃度が 約400倍違うわけです。あくまで理論実験として発表されていますが、現実の家電とは約400倍違う条件での実験であり、家電の購入選択の参考材料には使えないことがわかります。

約400倍の濃度差をグラフにしてみましたが、その差は圧倒的です。戦争のスケールでたとえると、4万人 対 100人 というような差に相当します。

プラズマクラスターの実験と市販品

一方、実際のプラズマクラスターイオン発生装置は、インフルエンザの浮遊ウィルス除去効果で実験され論文が発表されています。

新規電気製品の浮遊ウイルス除去効果、HEPAフィルター装着空気清浄機に遠く及ばず」 日経メディカル 2011/10/18の記事が分かりやすいのですが、実際に近い環境で現物の家電を使ってインフルエンザの浮遊ウィルス除去効果を実験したところ、HEPA空気清浄機の効果と比べて プラズマクラスターやナノイー などの新家電の効果は遠く及ばないことが確認されたことがわかります。
プラズマクラスターについては
実験の結果、まずプラズマクラスターイオン発生機では、活性ウイルス量の推移は、コントロールの経時的自然減衰、すなわち何もしない状態のウイルス量変化と変わらなかった。
とされ、何もしない状態とウィルス量は変わらずと効果がまったく確認できていないことが分かります。
大手家電メーカーの発表や製品だからと、その謳い文句に釣られるのは損です。逆に言うとHEPA空気清浄機はインフルエンザウィルスに対する効果が確認されています。換気が第一とされる新型コロナウィルス対策ですが、HEPA空気清浄機も補助で使うことを検討すべきでしょう。
なお、小松市のカラオケ店で空気清浄機を使ったのにクラスター感染発生という報道がありました。テレビの映像を見て私が確認した限りこれはHEPA空気清浄機能を持たない別の原理の製品のようです。
高い「空気清浄機」だからと安心するのではなく、HEPAのような規格や機能を確かめた上で、対策をとることが大事でしょう。
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