コロナ対策で合唱こそ本物のマスクじゃなきゃ意味がない
新型コロナ対策を徹底して、高校生の合唱コンコクール開催 といったニュースが相次いでいます。
その一方で、郡山ではコンクールに向けた合宿練習でクラスター感染が発生しています。
河北新報 https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/202008/20200822_63010.html
フェースシールドやマスクを着用した上で約2メートルの間隔を空け、十分な換気もしていたという。
福島テレビ https://www.fnn.jp/articles/-/76560
社会人・大学生サークルと中学生は午前中は別々に練習を行い、午後に合同練習をした。その時間も30分程度だった。
郡山第一中学校の生徒は練習中はフェイスシールドやマスクを着用、2mの間隔をあけて室内は常に換気するなど感染対策をとっていた。
一方、学生や社会人の合唱サークルはマスクをつけていないメンバーもいたとされている。
クラスター感染発声をうけて、福島県の合唱コンクールはより対策を徹底したとして以下のような見出しで福島民報は報じています。
> 29、30日、郡山で県合唱コンクール 無観客開催、マスク着用
> 2020/08/29 08:42
しかし、この見出しでは「マスク着用」というのは歌う前までの話で歌唱する時点で外したと報じています。(太字は筆者による)
県合唱連盟は無観客での開催のほか、演奏時以外のマスク着用、二メートルの距離の確保、演奏後の速やかな解散を参加団体に提示している。
しゃべる時、歌う時こそ、マスク着用を
今、買い物でも、電車でも、屋内ではマスク着用が、新型コロナウィルス対策で常識となっています。とはいっても、食べる時は外さねばならないからと、飲食店店内ではマスクを外し、会話もしています。その流れで、カフェやファミレスで長時間マスクなしにお喋りをして、お店を出たらマスクをして外を歩くという リスクへの備えという観点では逆の現象も起きているのが2020年8月の日本の状況でしょう。
合唱についても、全日本合唱連盟が出したガイドラインでは歌唱時のマスク着用は努力義務であり必須とされていません。
全日本合唱連盟では、合唱活動における感染症拡大予防のガイドラインを策定いたしました。また、感染防止対策のための汎用版も作成いたしましたので、ご利用ください。https://t.co/vGxqKVvo6x
-- 全日本合唱連盟 (@JCA_from1948) June 29, 2020
https://jcanet.or.jp/news/COVID-19.htm にある 合唱活動における新型コロナウイルス感染症拡大防止のガイドライン 2020年6月29日 第1版 では
(3)練習当日の対策
ウ)練習時
①団員の距離は前後 2m 以上、左右 1m 以上を確保し、団員同士が向かい合う配置は避ける。
②指導者・伴奏者と団員との距離は、適切な距離を確保する。
③座っている団員と立っている団員が混在しないようにする。
④咳エチケットを実践する。
⑤マスクは飛沫拡散防止の効果があるため、着用が望ましい。
としています。マスクは必須とは書いてないし、マスクのグレードにも言及していません。
また、3層構造のサージカルマスクでは歌いにくいということで、東京混声合唱団により「歌えるマスク」が考案されています。
会話する時にはマスク、なら歌うときこそマスクを着けなきゃ意味がない
取扱説明書にも記載のとおり、このマスクは「感染を100%防ぐものではありません」と書かれています。ただ、この感染への理解は私からすると間違っています。
マスクをしていれば、ある程度の飛沫は抑えられますが、マスクで防げない小さな飛沫に関しては換気が効果があります。新しいホールでは空調の環境が整っているので換気も十分行えますし、設備が整っていない練習場所では、練習時間を短くしたり、窓を開放したりして感染対策をしています。
といいます。しかし、小さは飛沫、マイクロ飛沫とかエアロゾルとも呼ばれる粒子はサージカルマスク、(3層構造の不織布マスク)で防ぐことができます。換気も大事ですが、歌うのなら会話よりはるかに高い、新型コロナウィルス感染リスクがあるのでマスクが必要です。
テレビなどでマスク無しで歌う人たちを我々は日常的に観ています。しかし、それは会話よりリスクが高いという研究が多数あります。
2020.8.24. Aerosol Science and Technology
Exhaled respiratory particles during singing and talking (歌唱や会話中の呼気粒子)では、
左:青:エアロゾル粒子の質量放出率 右:赤:呼気中フレームあたりの平均飛沫数
を見るに、歌唱時にサージカルマスクを着用する効果が高いことが読み取れます。
2つのチャートでは値がずれていて、最初の図はマスクの効果が絶大で、図2はかなり緩和程度と違った結果が出ているように私には見えます。この論文の評価は専門家にお願いしたいところですが、少なくとも
「歌うならマスクすべき」ということが言えるでしょう。
テレビでの歌唱は大勢が合唱するケースはあまり多くないのか、多いのか私は把握していませんが、独唱や二人の合唱と比べると、人数が多いほど指数関数的に感染のリスクが高くなることが論理的に考えられます。合唱は、呼吸を合わせて一斉に深く吸うので、一人の感染者が大勢に一気に感染を広げるということは、米国、欧州、日本でも岐阜や郡山でのクラスター感染から考えれることでしょう。
新型コロナウィルス、だいぶ分かってきたとは言っても、まだまだわからないことが多数あります。日本では「飛沫感染」と「接触感染」が原因とされています。しかし、「3密」を避けるという対策や 電車などで会話を控えよという 対策は「空気感染」Airborne Transmissin があることを示唆していますし。また、「COVID-19は空気感染する」とWHOが初めて言及しました。(空気感染、「3密」と言ってるのだから認めて当然でしょ 国立病院機構仙台医療センターの西村秀一氏に聞く 2020/08/07 日経メディカル)
全日本合唱連盟のガイドラインに従っているというのは、一つのやり方ですが、ガイドラインを守っていてもクラスター感染が起きたということは、そのガイドラインを疑いより保守的に、安全に 新型コロナへの対処が必要ということを示しています。「歌えるマスク」とかいうのも、感染症の専門家が検証して大丈夫と言っているものではありません。
大人が自己判断で、カラオケスナックで歌ってクラスター感染というのは、自己責任という面もあります。しかし、部活動で大人の指導の元で行われる部活動で新型コロナ感染者が出たことを我々は重く見るべきでしょう。「対策徹底し」と指導者が言っていたとしても、マスコミがそれを真に受けてそのまま報道するのは報道機関としての倫理や使命を果たしているのか?数々の感染者が出ている合唱のありかたを今一度、責任ある大人は考えて、青少年に指導すべき、そう考えます。