野菜ジュースは野菜の代わりにならない
食事と健康に関して長年の疑問がありました。野菜ジュースは野菜の代わりになるのか?という疑問です。
これは、野菜を摂取することの本質はなにか?ということに関わる問題です。ビタミンCとかカリウムとか、水溶性繊維とかの成分だけ考えれば、不溶性の繊維(ジュースになると捨てることになるカス)以外は取れそうに見えます。野菜ジュースメーカーは、ジュースにする過程で失われる成分を添加して補うなどしている、ただし、不溶性の繊維以外、という説明もしています。
一方で、「コップ一杯でほらこれだけの量の野菜が摂れる」という手軽さは、野菜の本質をなにか無くしているのではないか?そんな疑問が残りました。というのも、食事として野菜を摂取するのはかさばるので、お腹がふくれるし、腹持ちも比較的良くて、食べた感がそれなりに得られます。一方野菜ジュースはあくまで「飲みもの」であり食事になるかというと腹にたまる感が全くありません。
つまり、野菜ジュースで野菜不足を補おうというのは「栄養成分」の話であって、食事としての野菜が野菜ジュースで代替できるわけでないのです。その、食事たる野菜を飲み物たるジュースに代替したとしたら、人は野菜の代わりに他のものを食べることになります。野菜の代わりに白米のご飯や、肉類などを摂っておいて野菜不足は野菜ジュースで補うという食事が野菜を食べるのと同じになれるのか?そこを問題にすべきなのでは?ということを長年もやもやと考えてきました。
健康のための食事では、栄養成分以外、加工法などが大事
そういった長年の疑問を解消してくれたのが、UCLA助教授の津川 友介氏の著作、「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」でした。もちろん、栄養分が不足していて病気になることもあるので、葉酸不足が問題になりやすい妊婦は積極的に摂取とかいうことはあるそうですが、健康にいいというエビデンス(=科学的根拠、人間による大規模調査での統計的証拠)は栄養分では以外の要素が非常に大きいと説いています。
この本では、健康にいいということが複数の信頼できる調査で報告されているグループとして、1 魚、2 野菜と果物、 3茶色い炭水化物、 4オリーブオイル、 5 ナッツ類 の5グループを挙げています。一方、一般に健康にいいとされる、フルーツジュースは100%でもフレッシュジュースでも、少数の研究で健康に悪いことが示唆されている、避けるべき食品として挙げられています。そして、今回のテーマ、野菜ジュースについて津川氏は研究が行われていないのでいいか悪いか分からないとしながらも、健康にいいというエビデンスがある、ジュースでない通常の野菜の摂取を薦めています。
つまり、野菜ジュースは、野菜の代わりにはならないわけです。
エビデンスは強さが大事
専門家が言うのだから、論文になっているから、と、人は健康情報のニュースやTV番組で右往左往してしまうわけですが、根拠たるエビエンスにも強さのレベルがあると津川氏は説明します。
一番弱いのが、健康食品の宣伝でもでてくる「個人の感想」です。イメージにも左右されるしどうにでもなるものでしょう。
次に弱いのが動物実験で判明というエビデンスです。有害かどうか?というレベルであればラットの実験でもわかるでしょうが、それが、人間の健康とか肥満にどう関係するかとなると、なんとも分からないのが実情です。専門家もこれから調べるというのを「分かった」とか報道されることがよくあります。
多少参考になるかもというのが、人間での少数での実験です。実験担当者もわからいようにする二重盲検法などが可能であればよりエビデンスが高まります。しかし、よりほかの研究で覆される可能性もあるわけです。
津川氏が強いエビデンスとして、信用がおけるとするレベルは、人間による大規模調査や、複数の調査を横断的に分析するメタアナリシスです。ただし、多くの人での結果を見ていくのは非常に大変なので、野菜ジュースが健康にいいのか、悪いのか?とかの関心がありそうなこともエビデンスが無いので分からないということが起きることにも繋がります。
野菜不足を補えるのは、野菜か果物の摂取しかない
「寝不足に効くのは仮眠しかない、20分や30分寝たら寝不足解消になる」とよく言ってました。寝不足を補うのに寝る以外のことでなにか効くものという話で結局寝るしかないというのは身も蓋もないようですが、睡眠の代わりになる魔法のようなことはないわけです。
野菜が不足も、同じで、摂取が簡単な野菜ジュースで補えるという証拠はないと津川氏は指摘しています。野菜が不足しているなら野菜ジュースやサプリで補うではなく、野菜が入ったサラダなり、惣菜なりを食べる、そう考え方を改める必要がありそうです。