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元SMAP3人の「72時間ホンネテレビ」7400万視聴 vs 推定視聴数 207万人、真相に近いのはどっち?

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7400万視聴というすごい数字がでてニュースにもなったAbemaTVの72時間ホンネテレビ。延べ数であって人の実数ではないという注釈がついてはあっても、「日本国民の7割が見たの?」という印象を残しました。一方で、推定はできないが実際の「見た人」=延べでないユニークな人数、はもっと少ないと岡田有花記者が報道していました。

https://news.yahoo.co.jp/byline/okadayuka/20171106-00077818/

元SMAP3人の「ホンネテレビ」7400万視聴も、「見た人」はもっと少ない(岡田有花) - 個人 - Yahoo!ニュース via kwout

この記事で、サイバーエージェント社の決算資料で2017年9月末のAbemaTV推定月間利用者数(MAU)は948万人であることが紹介されており、アジャイルメディア徳力基彦氏の別の推定から同時視聴数で600万から700万人、そして72時間でのユニークな視聴数は1000万人を超える可能性もあることを岡田記者は記述しました。

そんな推定値はあるにしろ、Webアクセス解析である程度目安になる、ユニークなブラウザ数とかが発表されないので7400万? という数字だけが残っていた状況でした。

ビデオリサーチ社が独自調査パネルの推計で207万視聴者とニュースリリース発表も、取り下げ

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1712/04/news052.html

ビデオリサーチ、「『ホンネテレビ』視聴者207万人」リリース取り下げ トップページで謝罪 - ITmedia NEWS via kwout

運営元が言わないから分からないということではありますが、テレビでは視聴率が公表されています。どうやって調べるかというとサンプル調査による推計です。そして、その視聴率調査会社の大手ビデオリサーチがVR-CUBIC という5000人のネット利用調査パネルから、207万人という推定データを発表も、取り下げるという異例の事態が起きました。藤田晋、サイバーエージェント社長が、「昨日のビデオリサーチの記事酷かったな。元記事は削除してもらった筈だけど」と自社のサービス755に投稿しており、依頼して削除してもらったことが窺えます。

この状況に対して、インフルエンサーマーケティングなどを手がけ、視聴者数想定を書いたアジャイルメディア徳力基彦氏

今回発表したビデオリサーチの数値が、AbemaTVからすると営業妨害といえるぐらいのひどい数値だったからということなんでしょうか?
まぁ個人的にも累計の視聴者数が207万人というのはさすがに少なすぎるのではないかと思いましたが。

とこの数字をかなり実際より少ない数字だと見ているようです

結局、Webの実視聴者数は誰も分からない。調査パネルベースの 207万人も一つの「真実」であり削除させるのは驕慢

さて、表題で提起した7400万対207万という二つの数字ですが、実のところ本当の数字である視聴数は分からないのでどっちが近いのか?ということは厳密には知ることができません。ただ、7400万は延べの接続数であり、ずっと繋ぎっぱなしの人も中にはいたでしょうが、「人の数」を推定するデータではありません。

一方で、207万人というのは、視聴率推定にも使っている調査手法であり、ビデオリサーチの調査パネルからの推計視聴者数ということでは根拠がある数字といえます。

ネット業界人が間違える、「ユニークユーザー数」というアクセス解析数字の意味

では、なぜ、ビデオリサーチ社の調査データに対して、藤田氏が「酷かった」と書き、徳力氏が「さすがに少なすぎる」という感想を持ち、表明したのでしょうか?それは、Webマーケティングで使っている数字が「ユニークユーザー数」という、それらしい名前を持ちつつ、「実際の人の数」とは違う数字を扱い肌感覚として身につけているからだと推定します。Webアクセス解析データでつい「延べでない実人数」としてユニークユーザー数を紹介して扱ってしまうのですが、これは、実態としては、ユニークなブラウザ数です。同じ人が、パソコンとスマホから同じサイトを見たら「2」とカウントされるし、職場のパソコンでも見たら「3」と、いうように、複数カウントされる可能性がある数字です。

ただ、ネット業界的にそれはお約束として分かっていることであり、ややっこしいので「実数」として扱っているというだけの話です。

ビデオリサーチ社の数字はそういう重複カウントされることのない「人の数」になるので、調査パネルが同じでも数字が大きく違うことは起きる可能性があります。

ログイン不要のネット放送サービスの視聴者数は、真相は藪の中。だからこそ、調査データの取り消し「圧力」は問題

ログインが必要なNetflixのようなサービスであれば、視聴者数はIDを元にかなり正確な数字がとれます。一方で、ログイン不要だと取れるのは、似た名前だけど、実際の人の数はおぼろげにしか分かりません。マルチデバイスでも同じ人を紐付けていく方法は発展途上であり、その有効性を裏付けるデータとして、ビデオリサーチ社の調査パネルに基づく視聴者数推定値は貴重なデータといえます。

207万人がより実際に近いのか?それとも徳力氏や岡田氏の推定に近い、700万とか1000万人とかの視聴者数があったはずなのか?それは結局分からないのですが、分からないからこそ、調査パネルベースの推定値、207万人という発表は今後のネット放送の普及に向けての大きな意義ある数字として残していくべきだと考えます。

最後に、私の個人的推定を述べておきます。5000人の調査パネルが大きく外している可能性はあると思うのですが、他の調査でも実用されているわけで、外れるとしても、倍の400万人とか半分の100万人とか程度のレベルだろうと予想します。ネットマーケティング業界で慣用されている数字が実際より大きく膨らんだ数字だった、それが真相ではないかと考えています。

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