そば湯騒動に見る統計を読み違える方法
「そばの茹で汁を平気で飲む彼氏」 という匿名ブログ投稿で始まった、そば湯飲む/飲まない騒動。西日本にそば湯を飲む習慣がない とかいうキャリコネニュースの記事が出て、そんなこと無い、大阪ではそば湯を飲むと大西宏氏が反論されるなど波紋を呼んでいます。大西氏はこう書かれてますが、はっきりいいますと福岡のそば事情を知らないのに人を 安いそば屋にしか行ってない可哀想な人呼ばわりする失言だと思います。
福岡のそば事情は知らないのですが、関西生まれ関西育ちでも、思わず、えっ、西日本はそば湯を飲まない、それどころかそば湯を知らない人がいるのかと驚いてしまいました。
関西でも、いやその他の西日本でも「手打ち」と書かれていて、そば湯がでてこないお店を見つけるほうが難しいのではないでしょうか。おそらくその福岡出身の女性は「手打ち」のそば屋さんに行った経験がなかったのでしょうか。
"おそらくその福岡出身の女性は「手打ち」のそば屋さんに行った経験がなかったのでしょうか。"とまで書かれた自信はこのそば屋店舗数のデータを見たからでしょう。
- 福岡県のそば屋数は10万人あたりの都道府県別順位で27位の17.23軒とそれなりにある。
- だから、彼女はそば屋に行く度合いはそれなりにあったはず
- なのに、そば湯を知らないとは、「手打ち」じゃない安いそば屋にしか行ってなかったのではないか?
という論理を組み立てたのでしょう。しかし、そこには大きな落とし穴がありました。
統計を語るときはデータをよく吟味すべし
元のサイトの新・都道府県別統計とランキングで見る県民性 [とどラン] のそば店データを問題が分かるように一部省略して引用します。
そば屋店舗数ランキング 順位 都道府県 店舗数 偏差値 総 数 人口10万人 あたり 1 長野県 1,109軒 52.26軒 77.99 2 山形県 586軒 51.36軒 77.2 3 福井県 357軒 44.91軒 71.52 4 栃木県 874軒 44.01軒 70.74 5 群馬県 851軒 42.89軒 69.75 6 山梨県 305軒 36.01軒 63.7 7 石川県 363軒 31.32軒 59.58 8 沖縄県 430軒 30.39軒 58.76 9 茨城県 842軒 28.73軒 57.3 25 宮城県 409軒 17.57軒 47.48 26 佐賀県 145軒 17.26軒 47.21 27 福岡県 877軒 17.23軒 47.18 28 愛知県 1,213軒 16.30軒 46.36 全国 24,924軒 19.58軒
出所は、タウンページに掲載されているそば屋ランキングだそうですが、異常値だなと気づいたのは沖縄県に430軒そば屋があって、ランキングが8位だという点です。以前沖縄に行った時に そば屋は見かけなかったのにそんなに多いのでしょうか?食べログのそば店ランキングを見るに、沖縄県のそば店で、スコアがついているのは41軒、掲載数も43軒のみです。 食べログの掲載率はそんなに低いのかと他の県を調べると、率で6位タウンページで305軒そば屋があるという山梨県の食べログそば店掲載数はスコアありが271軒、総数352軒でした。山梨県はむしろ食べログの掲載数が多くなっています。
なぜ、こんな食い違いが起きるのか?みなさんもご察しの通り、沖縄そばの店をこのランキングは入れてしまったために、沖縄で、蕎麦が人気 であるかのような変なランクにしてしまったわけです。データを一通り眺めて異常値が無いかチェックしないとこうなるという例でしょう。
福岡、佐賀の「そば屋」のかなりは、そばもあるけどメインはうどんの、うどん(そば)屋
そんな、統計の罠があるという前提で、とどランの そば屋とうどん屋は対立しないというコメントを読むに、「そばの茹で汁を飲む」発言者の隣、佐賀県出身の私はその真相がよくわかります。
相関ランキングではラーメン外食費用やラーメン店舗数と正の相関が高く、そば文化圏とラーメン文化圏は重なっているようだ。
一方、そばと対立関係にあると言われているうどん屋店舗数とも弱いながらも正の相関がある。これはそば屋が多いところはうどん屋も多いことを意味していて興味深い。そばとうどんの対立よりも、麺好きという風土の方が大きな影響を与えていると言えそうだ。
そば屋店舗数 [ 2014年第一位 長野県 ]|新・都道府県別統計とランキングで見る県民性 [とどラン] :
福岡や佐賀のうどん屋さんのほとんどで、そばも置いていて食べられますが、メインはうどんなのです。食べログで福岡県そば店ランク200位あたりをみると 屋号に うどん だけ入っている店が多数入っていることがわかります。これらのランク入りしている店の多くはおそらく、「手打ち」のそば店ではありません。売り物はうどんであり、また、博多うどんでは手打ちに価値を感じません。
うどん屋とそば屋の件数が比例的な相関関係にあるという裏にはそんな、蕎麦も出すうどん店、うどんも出す蕎麦店があるという事情を理解すべきでしょう。
一方で、その土地の人々が日常的に、そばとうどん どっちを食べているかは別の話です。福岡出身の女性、そばを食べたことがないわけではないでしょうが、福岡・佐賀だと蕎麦を食べる頻度はあまりありません。30年前の私の子供時代、そばは大晦日に食べる食べ物でした。
また、そばを食べる場合も盛りそばよりは、かけそばが多くを占めます。私もそうですが、地元に居て、福岡の地元で育った女性が、そば湯を出すそば屋に行ったことがなくても何ら不思議ではありません。
大西宏氏は、そば店の統計を見て、福岡でもそば湯を飲むのは一般的なのだろうと勘違いされたのは、統計の意味を一歩踏み込んで考えなかったから起こった間違いだと思います。こういう間違いは誰でも起こり得るものです。また、"おそらくその福岡出身の女性は「手打ち」のそば屋さんに行った経験がなかったのでしょうか。"という推論はある意味正しいのですが、福岡の男性や女性の多くが「手打ち」のそば店に入ったことがない、そして、その女性が責められるいわれもない、ということは気づかれなかったようです。
土地勘の無いことを統計で語る怖さを改めて思い知りました。