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「玉川上水の木を500本近く伐採して道路をつくる」というデマ

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「玉川上水の木を500本近く伐採して道路をつくる」という話がTwiterやFacebookなどで出回っているのですが、これはデマです。
http://hamusoku.com/archives/7886507.html

玉川上水で500本近くの木がなぎ倒される道路計画→5/26住民投票、投票率50%以下なら開票すらしないと市長が発言、東京都小平市民投票いけよ!【拡散希望】:ハムスター速報 via kwout

こういう写真付きで情報が流れると、江戸時代からの歴史ある玉川上水の貴重な樹木500本が切られようとしている、そう直感的に思うでしょう。
しかし、事実は違います。その500本の木というのは、道路用にと30年前に取得された土地にどうせ時間がかかるからその間はと植えられた木なのです。



2013/5/24 13:30 追記
読売新聞の記事がWebから読めなくなっていたので、キャッシュデータから引用します。

雑木林の一帯は、蚕糸の研究所の跡地。1986年に「小平中央公園」をオープンするため、市が土地を取得し、都市計画道路の部分は保存樹林として、無償で借り受けていた。市まちづくり課は「周辺には桑畑が広がっており、現存する木々は、公園の開設に伴って植樹したものが多い。公園以外の土地を市が借りたことで、宅地化を免れてきたとも言える」と話す

昨年12月、都は新たに都市計画道路案を決定。道路幅をほぼ全域で28メートルから36メートルに広げ、片側2車線の車道両脇に約10メートルにわたって歩道や植樹帯などの「環境施設帯」を設け、良好な住環境や緑化空間を確保するとした。都は「雑木林を移植し、可能な限り残したい」としている

つまり、
:「元々あった雑木林を無くす
「道路用地として、準備された期間のお陰で雑木林ができたが、その期間が終わる
というのが事実です。と考えます。

また、東京都立図書館デジタルアーカイブ 近代の地図より[都市計畫東京地方委員會/編] 都市計畫東京地方委員會 [1939] T/66・290/5008/1939「小平學園」を引用します。

Snap2539 Snap2542

公園があると、問題になっている玉川上水の北、西武線の東、津田塾の西の土地は、畑または空き地となっています。後に、蚕糸の研究所ができて雑木林になった可能性も否定できませんが、いずれにしろ、この道路計画があったから、利用されず雑木林として残ったと考えます。

そういう計画道路用地が一時的に雑木林になるともう、樹木を守れ運動が起きて切れないとなってしまえば、怖くてそういう利用はできなくなります。これは本末転倒ではないでしょうか?

いずれにしろ、 玉川上水で500本近くの木がなぎ倒される道路計画 という煽りはデマです。都は「雑木林を移植し、可能な限り残したい」と考えています。
≪追記以上

また、玉川上水沿いの遊歩道を道路が横切ることですが、そもそも人工的な用水路たる玉川上水には多数の道路が横切り橋がかかっています。元々道路や人の生活と共存する用水市施設として作られた用水路なのですからこれは設計当初からあったことです。

結局の所、樹木が切られると聞くと心が痛む人が多くいるし、できれば切らずに済めばとも思うわけですが、人類の文明自体が樹木を切り森林を切り開いて発展してきました。
今回、一度受けた木々を切ろうとしているわけですが、別の場所でもいいから植えて樹木に親しむ場を設ける、自動車と人がギリギリに通る道ではなく、ゆったりとした街路樹のある道路に変えていくとかそういう対応で補っていけるのではないか、そういう結論に至りました。

ともあれ、市民運動は単純化して危険を煽らないと盛り上がりにくいのですが、その際に正確さを二の次にするという危険を感じます。

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