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総選挙の小選挙区で無効票最大の理由を徹底検証

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第46回総選挙の小選挙区で無効票率が過去最高となりました。これを不正選挙の傍証にする人もいます。果たしてこの無効票が多かったことは合理的に説明可能なのでしょうか?また、朝日新聞の識者の意見

誰に入れたらいいか分からないが棄権はしたくないと悩んだ結果、白票を選択した有権者が多かった

は、正しいのでしょうか?
実は、元々朝日新聞の記事 投票率最低なのに…選挙区の無効票「過去最高」に沿ってデータを検証すればかなり簡単に理由は浮かんできます。記事でのデータに係る箇所はいかの通りで、高知、大阪、熊本、東京の順で高い値となりました。

204万票は投票者数の3.31%に当たる。計算方法が異なるので単純比較はできないが、総務省の集計では、これまでの無効票率は2000年の2.99%が最高だった。

 都道府県別で割合が高かったのは高知県の5.24%、大阪府4.63%、熊本県4.44%、東京都4.20%の順。高知県選管の担当者によると、県全体の無効票約1万7千票のうち半数以上が白票で、候補者以外の名前を記した票も多かったという。

これを元にフリージャーナリストIWJ岩上安身氏は自身のメルマガでネット上での疑問の声を紹介されています。

ネット上では、「過去最低の投票率のなか選挙に行くような投票意識の高い人が、わざわざ白票を投じるだろうか」という指摘もある。そうした疑念から出発して、「自民党の得票率を上げるために、投票率を低くし、白票を増やしたのではないか」という疑惑を述べる者もいる。

この無効票が増えたは、小選挙区についての現象であることに注目すべきです。46回総選挙では 小選挙区比例代表並立制下で空前の多党化が進んだことが特長です。比例代表並立制なので、比例では入れたい政党があっても、小選挙区ではその政党が選べないというケースが頻発したのが特長です。高知県の選挙管理委員会が公表したデータを見るとそれは一目瞭然です。
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第45回総選挙は自民と民主の二大政党激突選挙で、そこに1区で元県知事の橋本大二郎氏が割り込むという構図でした。不出馬の主要政党はみんなの党ぐらいです。

一方、第46回では選択肢が少ないことが一目瞭然です。1区では民主党か自民かが選べますが、話題の第3極や大きな支持を得つつも惜敗した橋本氏支持で、自民や民主にはイヤという層の行き場がありません。更に2区、3区では自民か共産かという2択になっています。保守が強い土地柄で小選挙区への興味が薄れるような構図の中で、民主、みんな、未来、維新といった多くの主要政党が小選挙区では選べませんでした。

岩上氏が紹介した意見は、無効票率が、多かったのは小選挙区であったという重要なポイントを見落としています。わざわざ白票を投じに行ったわけではなく、比例で投票したい、応援したい政党があったけど小選挙区では選べなかった状況が高知では起きました。

大阪は、46回総選挙で維新が台風の目となって躍進した地域ですが、読売新聞がまとめた候補者一覧を見て分かるように公明党が候補者を出した選挙区で自民と維新が推薦に回りました。この結果、公明、民主、共産の3択の大阪3区と大阪4区5区、そして公明、未来、共産の3択の大阪6区でそれぞれ10%を超える極端に高い無効票が発生しました。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121227-00000136-san-pol.view-000

大阪4選挙区、無効投票率が突出…有権者から不満(産経新聞) - 写真 - Yahoo!ニュース via kwout

このように、多党化の中で、選択肢が限られた小選挙区も多発した第46回総選挙。
岩上氏は以下のように疑問形で、意見を述べていますが、数字をまともに見てないのか大いに疑問です。

ただし、白票を増やすために、現実にどんな手段が用いられたのか、という点については曖昧で、想像の域を出ない。何が原因であるかはさておくとして、無効票が過去最高であったという事実は忘れるわけにはいかない。

有料メルマガの読者に寄り添うために、分析を省略してぼやかしたのじゃないか?ジャーナリストとしてのプライドがどこに行ったのか?そう疑問を感じずにはいられません。

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