Windows 8がたどるニュー・コークの轍: 大失敗でWindows 7併売か?
マーケティングでは多くのエピソードを生んだブランドがいくつかあります。そのなかで古くからのトップブランドで多くの宣伝予算を使う、コカ・コーラはその筆頭でしょう。サンタクロースの衣装が赤いのもコカ・コーラ由来とされますし、コカ・コーラと戦うペプシからアップル社へCEOを呼ぶときには、「このまま一生砂糖水を売り続けるのか」などと揶揄されました。
そんな様々なエピソードを生んだ、コカ・コーラですが、最大のエピソードは、入念な市場調査から生み出した新バージョン、ニュー・コークの大失敗による、シェアトップからの陥落。そして、コカ・コーラ・クラシックと名付けての元の味の復活とシェア回復でしょう。このエピソードは、フォーカスグループなどによる市場調査の問題点と言語化しにくい本能的な反応などなど様々な教訓をマーケターに残しました。
そして Microsoft Windows 8も、ニュー・コークと同じ轍を踏みそうな気配が濃くなってきました。
Windows 8搭載端末、米国でも初速は低調──NPD Group調べ - ITmedia ニュース via kwout
米調査会社NPD Groupは11月29日(現地時間)、10月26日に発売されたWindows 8の米国における販売状況に関する調査結果を発表した。10月21日~11月17日のWindows搭載端末(Surface with Windows RTを除く)の販売台数は前年同期間より21%減少したという。
売れ行き鈍化はノートPCで顕著で、24%減だった。一方デスクトップPCは9%減だった。
タブレットについては、Windows 8搭載端末全体の1%以下で、NPDは“存在しないも同然”としている。
Windows 7時代のノートPC販売トレンドとの比較とか詳細分析が必要でしょうが、いずれにしろ、従来大きなてこ入れ策として機能してきた新しいバージョンのWindowsの発売がほとんど効果が出てないとは言えそうです。アップグレード版のOS出荷はWindows 7より増えたとか明るいニュースも出てはいますが、非常に安く出したことで従来との単純比較はすべきでないと私は考えます。
いずれにしろ、タブレットとPC兼用といいつつ、ユーザーインタフェースはタブレット向きに作ったOSで、タブレットとしてはほとんど出てないというのは大失敗を示すデータでしょう。もちろんSurface with Windows RTが含まれてないためで、実は非常に多くの台数出ていて大成功だというようなデータがあれば違ってきますが、その兆候はニュースでは伝わってきません。
そもそもWindows 8は"Windows"という名前の通りのマルチウィンドウOSではなく、シングルウィンドウ設計がメインのOSです。戸田覚氏の、記事で 「デスクtっっぷパソコンでは寝具るぃんどうがつらい」
Windows 8はどうして不評なのか? - デジタル - 日経トレンディネット via kwout
と書かれていますが、それは、タブレットモードでない、一般のノートPCでも同じことでしょう。しかもタッチパネルのOSのよさをだすためにとハードのコストが上がっていて買い得感が下がっています。そもそも、タブレットコンピュータは2万円から3万円、4万円程度でPCより安いという相場がもうできているところに従来のパソコンより高いタブレット兼用PCを出して売れると思う方がおかしいと考えます。
私は1995年から2000年までマイクロソフト株式会社に在籍し、そのうち長い間Windows NTのマーケティングチームに居たからこそWindowsには愛着があります。なので、変わることへの不満は一般の方より多くあって、厳しく感じているのじゃないかとも思うのですが、やはり名前に反するOSに成り下がってしまってはダメだと思うのです。また、タッチUIと従来UIの混在とか使う側にとっては混乱の極みでしょう。
パソコンOSの進化の方向としてタッチUIの取り込みというのは考えられるところではありますし、タッチパネルのノートPCで慣れれば便利なのかもしれませんが、市場はそれを拒んでいるように見えます。
従来、9x/Me系のWindowsとNT/2000系という二系列あったWindows はXPでめでたく統一されたわけですが、Windows 8から RTと7と三分立する事態になるかもしれません。三つはあまりに多すぎるのでRTは放棄されて 8と7が併売、そんな近未来を私は予想しています。
お断り:
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ジョン・スカリーは元ペプシでした、修正しました。