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なでしこと楽天/koboに学ぶ:公正、正直、 打算の新三原則

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なでしこジャパン佐々木監督の引き分け狙い騒動。賛否両論ありますが、ソーシャルで隠し事が難しくなった今の時代に最適な判断を佐々木監督がされたのではないか?そう私は高く評価しています。そのポイントは以下の相反する3つのポイントのバランスです。、

  1. 公正
  2. 正直
  3. 打算

1:公正
公正かどうかについて、サッカージャーナリスト、大住良之氏が「引き分け狙い…なでしこ、フェアプレー精神はどこへ 」と批判され、佐々木監督が謝罪されてように、今回は妥協されたところです。

大住氏の願いをまとめると、「W杯王者は、横綱相撲をとれ」
なんですが、佐々木監督はまだままだ、アメリカよりも弱いというか、そんな圧倒的な王者ではないという認識です。そういう見地でサッカーではそう珍しくない、「引き分け狙い」という戦術はフェアな範疇だと考えられたのだと思います。

サッカーで、フェアを逸脱したプレーの例として、「ラフプレーでわざと怪我させる」「意図的にオウンゴールして負ける」とか「怪我したふりして極端に時間を稼ぐ」とかがあります。また、実際引き分けを狙って、サッカーでちゃんと引き分けるというのは簡単ではありません。圧倒的な力の差があるならともかく、予選を勝ち抜いた同士の国際試合で、アンラッキーな失点をせずにちゃんと試合を支配して引き分けで終わらせる、そんな試合運びにも見所があります。わざと、サーブをネットに引っかける応酬とか、素人じゃあるまいしという無様なプレーとは大違いです。

シュートを外せと指示したとかは、勘違いとして撤回されましたし、FIFA(国際サッカー連盟)も不問に処すという発表をしています。ともかく、公正さは多少損なわれても守られたと見るべきでしょう。

2:正直
この、正直さは、佐々木監督の英断でしょう。IOC、国際オリンピック委員会管轄のオリンピックで引き分け狙いを隠さずに言うのはどうか? という批判も分かりますが、どうせ隠し通せないのです。1960年代の、高度経済成長期、東京オリンピックの、女子バレーボールチーム「鬼の大松」監督の「おれについてこい」で金メダルをとった時代とは大きく変わっています。

後からばれるほど問題になりやすいネットクチコミの時代を理解し、憶測される前に正直に認めるこの行動は後々より賞賛されると確信しています。

3:打算
公正で正直というのは両立しうるものですが、それで結果を損なったり、評判を落としては元も子もありません。行動と発言を周りがどう受け止めるのか?そして、勝利というミッションを与えられた監督という職務をどうまっとうできるのか、そんな打算もバランスをとる必要があります。

佐々木監督は、自分の行動と発言がどう報道されてチームに影響を及ぼすのか、ちゃんと打算されたいたと思います。多少の批判は受けてもそれは制御可能な範囲で、少なくとも選手への批判は最小限にできる という判断です。

公正、正直、打算のバランスこそ必要な時代に:

私がこの3つの要素が大事だと気づいたのは、Z会、寺西隆行氏のこの記事であり、発端となった、トランスコスモスの萩原雅之理事のKoboのレビューに関する発言、

これだけ評判形成プロセスが可視化されている社会にあって、このような状況に陥っても正直が最大の戦略だと思う。ついでに言えば会社としての決定を楽天のどのレベルの責任者が決定し、実行しているのかは興味がある。

からです。

http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1207/31/news009.html

Business Media 誠:正直・公平こそ最強の戦略だ (1/2) via kwout

リスクマネジメントとして正直・公平が大事というのは同意なんですが、実際は結果も出さねばなりません。利益やシェアなどビジネスの目標は遂行されねばならない組織で、正直・公平を求めろというのはなかなか難しい面を感じます。

そこに、成果と世間の反応といった要素のキーワード、「打算」を加えることでより現実的でうまくいくと思います。

ビジネス界で打算がいちばん上手いのは孫正義氏で、孫氏に比べると、楽天の三木谷氏はまだまだ未熟です。ビジネス誌向けの発言がソーシャルでどう伝わるかとかの打算がたりません。また、公正で正直でないかというと、おそらくご自身の気持ち的にはやましいことがなく、公正・正直な行動をされているのではないかと想像します。例えば、「コンピューターリテラシーが低い方にとって初期設定は、多少難しいところがある」とかの発言はご自身の気持ちに正直なんでしょう、。

ただ、企業のトップだと違う常識で諫められるとかいうことが減るはずで、そういう慣れが足りなくて、ネガティブなレビューを見せなくするとかいう判断になってしまったのでしょう。

公正と正直は大事ですが、自分や狭い組織での公正と正直が、世間とずれてしまうことがあります。外がどう受け止めるかの経験を積み、打算が高精度で行えるようにが、これからのリーダーに求められていくことでしょう。

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