「一生に一度でOK」じゃない、肝炎検査と対策、そして「愛」
肝炎検査を呼びかけるブログ記事がはてブのホットエントリーに浮かんだのですが、「一生に一度でOK」という箇所に引っかかりました。今はそれは古いのじゃないかと
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20110111
2011-01-11 一生に一度でいいから肝炎の検査を受けよう
確かに、日本で肝炎は幼少期に感染する率が高いウィルスでした。ちょうど、「乳幼児期の集団予防接種での注射器使い回しでB型肝炎ウイルスに感染」という過去の問題の訴訟がニュースにもなっています。そして、今はこの問題は解消されたと見られています。しかし、肝炎ウィルスの感染は過去の問題とは言い切れなくなっているのです。
1月11日付のmsn産経ニュースが伝えるように、性行為などによる感染が増えているのです。特に関東、甲信越、東海という都市部で。
性行為で何が危険なのかは、明確に記事にはなく、裏づけ情報を探したのですが、一番権威がありそうな、米疾病対策センター(CDC)のFAQを見つけました。
http://www.cdc.gov/hepatitis/b/bfaq.htm#bFAQ12
Can Hepatitis B be spread through sex?
Yes. Among adults in the United States, Hepatitis B is most commonly spread through sexual contact and accounts for nearly two-thirds of acute Hepatitis B cases. In fact, Hepatitis B is 50–100 times more infectious than HIV and can be passed through the exchange of body fluids, such as semen, vaginal fluids, and blood.
体液(精液、愛液、血液)の交換で感染の恐れがあり、USでの感染の2/3の原因になっている、HIVより50-100倍感染しやすい というのです。
これを防ぐにはコンドームなどで体液の交換を防ぐこと、そして何より、リスクがある人との性行為を避けることが重要でしょう。
専門家ではないので、正確なところは識者の意見を仰ぎたいのですが、性感染症の流行は、人と人とのネットワークのありかた、複雑ネットワークが大いに関わります。スケールフリーグラフとも呼ばれる、この人と人との繋がりは、複雑に絡んでいくつかのノード(節)を切っても切れにくいという強さがあります。その一方で、特定の重要な「ハブ」へのピンポン攻撃に弱いという面もあります。逆にいうと、そのハブが感染したら一気にウィルスが伝播しうる危険性を持つわけです。
とまあ、IT系ブログスペースらしいネットワーク的なことを書きましたが、要するに、不特定多数との性行為は、「ハブ」となって感染し、伝播させるリスクを増やします。その不特定多数との接触回数が少なくても、相手が「ハブ」な人だったら、感染するリスクは高いものになります。そして、愛するパートナーを感染させてしまうリスクも増えます。
冒頭に引用したブログでの肝炎検査の呼びかけは無意味なものとは思いません。しかし、「一生に一度でいい」というタイトルの説明は実は今の日本ではかなり不適切な知識となっているということを理解していただければ幸いです。