ZyngaがYahooとの電撃的提携を発表。YahooユーザーにFarmVilleやMafiaWarsを提供
世界最大のソーシャルアプリ・プロバイダーであるZyngaが次なる一手を発表した。今度はなんとYahooとの提携だ。
米国ブログメディア(Mashable,TechCrunch,VentureBeat,BusinessInsider等)によると,Zyngaが米国Yahooと提携,彼らの持つ大ヒット・ソーシャルゲーム,FarmVille,MafiaWarsなどをYahooからアクセスできるようにすると発表した。
Yahooホームページはじめ,Yahoo Games,Yahoo Mail,Yahoo
Messengerなどからもアクセスできるようにするとのこと。つまりYahooユーザー6億人(現在のFacebook以上だ)が潜在的な利用者となったわけだ。
特にYahoo Gamesは,Facebookなどのソーシャル・プラットフォームを除いたオンラインゲーム・ポータルとして世界最大規模で,Comscore社によると2009年5月時点で1900万人を超える月間アクティブ・ユーザーを持っている。
【Comscore社調査,オンラインゲームサイト・ランキング】
Zyngaの狙いは,新たなユーザー層,ユーザー流入経路を開拓することで,Facebook依存度を下げることだ。そのパートナーとして,リアルではセブンイレブン,ネットではYahooと,超大手との提携を矢継ぎ早にすすめているのだ。
・ ゲームデベロッパーに新たな収益源 ~ Zyngaが米国セブンイレブンとタイアップ (5/24)
一方,Yahooの狙いは短期的には延べ2.3億人を超えるZyngaユーザー,特にFacebookプライバシー問題に敏感になっているソーシャルゲーム・ユーザーの獲得だ。長期的にはZyngaをはじめとするソーシャルアプリをYahoo内にとりこむことで,弱点だったソーシャルグラフを獲得することだろう。
これは日本におけるYahoo Japanとモバゲー提携と同様の,いわゆる同床異夢のスキームだ。
・ Yahooとモバゲーの強者連合,そのインパクトと背景にある競争戦略を読む(4/30)
Zyngaは,Facebookとの仁義なき争い(関連記事)を経て,5月18日に長期業務提携(関連記事)を結んだが,投資家からするとFacebook依存率を下げることが(リスクヘッジのために)最大の経営課題と言える。
ちなみにZyngaの主要株主であり,最も成功したベンチャーキャピタリストの一人であるJohn Doerr氏(著名VCのKleiner Perkinsのパートナー)は,TechCrunchとの電話インタビューで 「Zyngaは、Kleiner Perkinsがこれまでに投資した中で最も成長の早い会社だ」 と話している。
この言葉の意味するところは,Zyngaこそ,彼らが過去に投資したGoogle,Amazon,AOL,Compaq,Sun Microsystemsなど,あらゆるIT系エクセレント・カンパニーより急成長している最重要ベンチャーだということ。そのために彼ら腕利きのベンチャーキャピタリストも全面的にZyngaの多角的展開をバックアップしているのだろう。
今後も,TwitterやMySpaceなどのメガソーシャルメディアへの横展開,独自サイトZyngaLiveの立ち上げ,さらには日本をはじめとする海外への本格展開など,Zyngaの攻勢は続くはずだ。
【ビジネスのヒント】
・ Amazonの賢いビジネスモデル ~ ローテクで稼ぎ,ハイテクに挑む (5/8)
・ 創業2年で売上300億円超,利益40億円超。ソーシャルコマース"Groupon" 成功の秘密 (5/6)
・ Evernoteが絶好調!ユーザー数は300万人突破,有料会員率は2% (5/4)
・ ループスのB2Bフリーミアム・モデル ~ 自社ソーシャルメディア活用とその効果を公開 (3/31)
・ 名著「フリー」に学ぶ,無料からお金を生み出す具体的な戦略とは? (11/23)
・ 米国,英国,中国,ブラジルの事例に学ぶ,無料音楽DLから収益を生みだすマジック (11/24)
【ソーシャルゲーム関連】
・ プラットフォームとデベロッパーの仁義なき戦い,Facebookと衝突したZynga,4つのシナリオ (5/12)
・ Zynga推定売上は540億円!プラットフォームであるFacebook売上規模とほぼ同等か? (5/1)
・ Yahooとモバゲーの強者連合,そのインパクトと背景にある競争戦略を読む(2/10)
・ 米国・英国ソーシャルゲームユーザー動向調査。広告誘導や仮想通貨に関して (3/12)
・ 米国・英国ソーシャルゲームユーザー動向調査。55%が女性,平均年齢は43才 (3/11)
斉藤Twitter。ご連絡などお気軽にどうぞ。 http://twitter.com/toru_saito
ループス社Twitterアカウントはこちらです。 http://twitter.com/LooopsCom
最新の筆者著書です。 『Twitterマーケティング 消費者との絆が深まるつぶやきのルール』