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米国の通信業界を主体に、最新ITトレンドを追う

インターネットの雲とパイプ

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 インターネットを図で表すとき、よく雲(クラウド)を使う。これはコンピュータ業界の流儀だと言うことをご存知だろうか。先日、ラスベガスのネットワーク関連会議に出席していたら、ヒューレット・パッカード社のフェローから、この逸話が飛び出してきた。

 では、テレコム業界の人はインターネットをどのようにあらわすのだろう。

 テレコム流では、インターネットをパイプあるいはパイプラインにたとえる。この表現の違いは、両業界のインターネットに対する考え方を如実に示している。

 コンピュータ業界にとって、通信業界は異質な世界だ。

 察するところ、ベスト・エフォートと称して、どこのルータを通るか分からないが、パケットはちゃんと相手に届くと言うのが、まるで雲の中に信号が入って急に雲の外に出てくるように感じたのだろう。

 ところが、通信屋にとって、インターネットは巨大なパイプラインにほかならない。色々なデータが色々なパイプから入ってきては、出て行く。インターネットの場合は、どこかが詰まって流れが悪くなると、ほかのパイプに迂回して相手まで情報を運ぶだけに過ぎない。インターネットは、複雑なパイプ網であっても、正体の分からない雲ではない。

 逆に言えば、通信屋は配管工みたいなものだ。あっちこっちのバルブをひねっては「早く流れる」だの「安全」だのと騒いでいる。

 ところで、そろそろコンピュータ業界も「インターネット=雲」という見方を捨ててはどうだろうか。ここ10年、情報処理業界は、XMLやSOAP、ウェブ・サービスやSOAなど様々なアプリケーション通信技術を開発してきた。ずいぶん高度な分散処理アプリケーションが実現するようになったと思うが、まだ最後の一線をコンピュータ業界は越えていない。

 つまり、アプリケーション自体が、通信制御機能を組み込んでいないという点だ。いまのところ、ビデオ・ストリーミングや電子メール、電子小売の決済など、様々なアプリケーションに応じて、通信側は適切なパイプやバルブを用意しなければならない。ところが、通信屋にとってはポート番号ぐらいしか、その手がかりはない。広域イーサが整備され、長距離で分散アプリを運用する場合、この問題は重要だ。

 アプリケーションそのものが、どのような通信環境(QoSやセキュリティー条件)を求めているかを通信網に知らせる手段の整備が、これからはどうしても必要になると僕は思っている。

 このコンピュータ業界と通信業界の垣根を越えた協力関係を模索しているのが「インフラネット」と言う団体だった。そこが先頃、新しい団体に生まれ変わった。詳しくは6月27日版の日経産業新聞に書いているので、興味のある方は読んでほしい。

 そろそろコンピュータ屋さんも、床下に潜ってパイプの具合を見る時期に来ていると思うのだが。2005/6/16 at Belmont CA

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