『3・11を支えた小さなヒーロー達』で日本とソーシャルの未来のロードマップを示す
5月のゴールディンウィーク中に書いていた本が、いよいよ全国書店で並びました。国家の経営やソーシャルテクノロジーを今後、我々はどう利用するべきなのかについて、かなり深いところまで書きました。さわりだけ抜粋します。どうぞ宜しくお願いします。
▼「3・11を支えた小さなヒーロー達」~ソーシャル革命が示す日本の復興と未来~
http://www.amazon.co.jp/dp/4341132156
読者のみなさまには、あの東日本大震災の記憶が未だ鮮明に焼き付いている事と思います。私は一国民として震災直後の国の対応をみて、言うに言われぬ歯がゆさを感じました。これからの日本は一体どうあるべきか。震災で失った大きな傷跡を立て直す復興と同時により斬新なビジョンを描き、いち早くそこへ邁進していく行動力こそが急務と感じました。今の日本には明確な国家ビジョンがなく日々討論に明け暮れ・・・今何をなすべきかの大義を忘れ・・・いたずらに大切な時間を浪費してばかりいる感があります。
新しい時代に重要なキーワードは「情報」、「スピード」、「アクション」だと思います。これらをうまく生かせるリーダーが出現し、この深刻な国家危機を打破し、国民の皆が満足でき、若者が明日に希望が持てる、やる気を起こさせる日本を再生できることを願って筆を執りました。
東日本大震災後の政府の対応を見ると正に「情報」、「スピード」、「アクション」が不充分でした。例えば、大津波に飲まれた宮古市でも姉吉地区では「此処より下に家を建てるな」という石碑の教えを守り、全ての家屋が被害を免れました。過去に起きた大津波の歴史を教訓に街作りをしていた村の被害が最小限だったことを考えると「情報」の重要性が如実に解かると思います。また、政府の対応を見ていますと、阪神淡路大震災の情報すら充分活かしきれていたとは思えません。情報は咄嗟の判断や行動を起こすため不可欠なものです。
アメリカのNASAでは何か重大な事故が発生した時、テーマごとに複数のチームに分かれ、各チームがそれぞれ同時に解決法を導き出そうとします。それはアポロ13の時もそうでした。アポロ13では酸素用電源タンクの爆発、電力不足、二酸化炭素レベルの上昇など同時多発的に事故が宇宙空間で発生しました。その組織をまたぐ複数の専門家チームが柔軟に対応することによって、深刻な状況を回避し無事に地球に帰還することができたのです。
第5章ソーシャルシェアリングが日本を救う
まずは時代の変遷による欲求の変化を見ていきましょう。シェアの第一人者の三浦展氏も「これからの日本のために「シェア」の話をしよう」で述べている通り、時代による考え方の推移を分けますと1990年代までは「消費の時代」と言われています。
つまり個人が自己の欲求を満たすことだけを目的としていた「物欲の時代」です。次に1990年代から2011年迄は「自分探しの時代」と言われています。自分は何のために生きているのか? そして何のために仕事をするのか? など考え、自己啓発セミナーなども各地で開催され自分探しが流行っていた時代です。
そして2011年以降は「共有の時代」と言われています。共有の時代とはソーシャルシェアとかコミュニケーションの時代で、人々が共有しながら共存していこうとする高次元の欲求が強まっている時代を指します。そしてこれをビジネスにしようとする動きが米国で今、始まっております。
少し話はそれますが、テレビでも放送されたNHKスペシャル「ヒューマン なぜ人は人間になれたのか」の取材班の実験によると、人は他人が困っているのを見ると頼まれなくても自ら進んで助けますが、チンパンジーは自ずとはしないそうです。
つまりチンパンジーは助けることまではできるのですが、相手にお礼をしたり、助け合う事は出来ないようです。例えば、手の届かない場所にあるジュースを必死に取ろうとする相手を見ても自発的にステッキを渡すことは稀なようです。
そしてこれが人間とチンパンジーを分け隔てている大きな溝と言われています。つまり我々は助けられるから助け合う。この能力はある種の共感能力と考えられています。私はこの双方向の考え方はシェアそのものだと思います。