インターネットによるパラダイムシフトとビジネスモデル戦争に生き残る組織
今週、掲載された対談でも話したが、この5年、そこら中で予期せぬプレイヤーが全く新しい方法で新規市場に参入しては旧プレイヤーのシェアを奪ったり、新旧プレイヤーが交代する光景を見かける。大企業は変化の波を見逃し、戦いに負けるとあっという間に市場から追いやられるか、市場規模を奪われる運命を辿る。
内田和成氏が「異業種競争戦略」という本で詳しく説明をしているが、セブンイレブン、イオングループ、ジャパンネットが銀行業務を始めたりして、異なるルールを持ったプレイヤーが同じ市場を奪い合っている。
アップルなどもいい例で彼等が次々と生み出す新製品によって音楽業界から携帯業界迄、この大きな変化の渦に巻き込まれている。 今迄CDショップでCDを購入していたユーザーの一部は今では音楽サイトにアクセスしてダウンロードをしたり、アイチューンズ・ストアを利用するようになってきている。又、既存の国内の携帯ユーザーはスマートフォンを利用するようになってきている。
最近ではAmazonのキンドルや電子書籍化の流れもある。出版業界が対策を議論している間にどんどん変化の渦に巻き込まれていっている。もちろん地上波放送VSインターネット放送の動向も今後注目されている。
このような異業種格闘技が近年になって頻発しているのには複数の要因が考えられる。それはITの進化、携帯やスマートフォンの普及、市場の成熟やグローバル競争、最後には環境問題などの新しいテーマだ。そして企業がITで武装することによって企業間の境界線も曖昧になってきている。 では多くの企業はなぜ対策に立ち遅れ、渦に飲まれてしまうのか。その大きな理由は短期的に見ると新しいビジネスモデルは、自分達の既存ビジネスモデルのシェアを一時的に奪ってしまうため心理的な抵抗を感じやすいということがある。 成功企業は、成功してきた分、まわりが見えづらくなっており、世代を超えて認識を共有していないと忍び寄る変化に気付かず、同じやり方を続けようとする。大きな組織の場合、変化に気付いても、方向を転換するのに莫大な時間がかかってしまう。
それではこれからの時代、企業は新しい変化に対応し、生き残るためにはどうすればいいのだろう? 一つ考えられることとしてはまずは組織がバラバラな個人の集合体ではなく、ソーシャルテクノロジーなどを使ってひとつの脳のような働きができるように『神経回路』を社内に構築することである。
ピラミッド型の経営は一定の規模まで効果があるが、ある程度の規模まで成長し、成功を収め年月が経つと、社内のルールが整備され、世の中の変化に鈍感になり、外部からの攻撃にも弱くなる。ピラミッド型の経営は心臓部(急所)を狙われてしまえば組織全体が短期間で崩壊してしまう危険性も持つ。
ではソーシャルテクノロジーを使って『神経回路』を構築することに成功した組織はどうだろうか?それは各人が、あらゆる情報を共有しながら、危機を察知し、夢に向かって結束し、生き生きと仕事をし、先に進んでいく組織である。つまり組織で言えば、年代や部署や物理的な場所によって、バラバラになった個人ではなく、チームワークが取れ、あらゆる情報が共有され、神経回路がはりめぐらされた組織ということだ。このような組織を一旦構築することに成功すれば大企業であってもベンチャー企業並みの変化に対応できる俊敏性、内部から創造するクリエイティビティ、戦闘能力を持ち合わせる事になる。変化に対応しようとコツコツと準備をしている企業とそうでない企業とでは5年後、10年後大きな差になって現れるだろう。
ソーシャルテクノロジーを使ってさまざまな挑戦に取り組んでいる企業のインタビュー。