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プロダクトマネジメントとイノベーション

なぜ電子書籍元年か?

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電子書籍元年らしいです。

KindleやiPad、nookなどのリーダーが次々に発売され話題をさらい、書店には電子書籍に関するビジネス書も並び、これから何が起こるかさまざまな予測をしていますね。

ところで、なぜ今になって電子書籍なのか、なぜAmazonもBarnes&NobleもAppleも今になって一斉にリーダーを投入してきたのかということに触れている記事はほとんどありません。(SONY等は少し前から市場に参入していたようですが)

ブロードバンド化が要因であれば5年から10年前に動きがあって良いはずです。

著作権問題が片付いたからという人もいますが、一般にはまだ片付いていませんし、片付いてもニーズが無ければ売れません。

技術が追い付いたからという人もいますが、多少劣るものの、過去にも似たようなリーダー端末は出せたはずです。

私は背景の一つが米国出版業界の低迷にあるのではないかと思います。業界の資料によれば、2009年度の米国出版業界の伸びはわずか4.1%で、一言で言うと停滞市場です。わずかな伸びは電子書籍が押し上げているだけです。この停滞市場を抜け出す戦略が各社揃って電子書籍だったのではないかと思います。よりたくさん買ってもらう、あるいは、異なる層に買ってもらうための手段ということはないでしょうか。

例えば、Amazonは電子書籍の新刊を9.99ドルで売ろうとして物議を醸していますが、価格を破壊することによって新たな需要を生み出そうとしていることが分かります。そのためには、出版社や物流の仕組みも根こそぎ変えると思いますし、印税70%というスゴ技も発表しています。

最近、AmazonはKindleを値下げしました。iPad対抗と言われていますが、Amazonは独自フォーマットによって第二の版元となり、書籍物流をおさえたいわけですから、マスを押さえることが肝要で、必要であればKindleをタダにするでしょう。Kindleのコストなんて、以後の物流ビジネスを考えれば微々たるものではないでしょうか。

さて、日本はどうなるでしょうか?

  1. 電子書籍フォーマットのスタンダードを策定する動きがあります。デファクト・スタンダードで勝負する米国民間と、スタンダード化で参入障壁を無くしてしまう日本。頭に「デファクト」が付くかどうかで天と地ほどの市場規模の差が出ます
  2. 一方で、実はそれほど浸透しないかも、という見方もあります。電子書籍というのは、「高かった書籍を安く、かつ、いつでもどこでも読めるように提供する」ことでしょうが、日本には、単行本を文庫本化して安価に小型化するというユニークなビジネスモデルが昔からあります。米ドル換算で5ドル前後で新品書籍が変えるわけですから、十分、ポータブル化が進んでいるともいえます。
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