大学よどこへゆく? - イノベーションの発信地たりえるか?
日経新聞が11日、12日と2日わたって「国立大学改革の方向」と題した記事を掲載しました。大学がイノベーションの核になるための課題と方策を問題提起したものです。
民間企業がR&Dに大規模な投資をするのはリスクが高いため、ハイリスクなR&D投資は国家予算で賄い、大学をそのためのイノベーション創出の場とする、という理屈は先進国のみならず発展途上国でも常識的です。
さて、経産省は毎年、2,000億円~3,000億円もの予算を産業振興に投じています。言い換えると、経産省は世界最大規模のベンチャーファンドであるわけですが、その成果は出ているでしょうか? 産学連携予算なる明細もありますが、それが大学に投じられてイノベーションに繋がっているかというと、先の日経新聞の記事である通り、はなはだ疑問です。経産省予算は外郭団体や大学の職員を養い、残りは民間企業に分散して行方不明となるだけです。
一方、日本政府は米国債を累積で500兆円ほど買っていると言われています。そのうちの何割かは米国国家機関のR&Dに利用されているようです。経産省予算の10倍~100倍程度の対米投資と言えます。最近、中国の残高が日本を抜きましたが、日本はこれまで、米国のR&Dをもっとも強く支えて来た国と言えるでしょう。
その結果、日本は豊かになったか?と言うとそうではなく、米国の大学発ベンチャーの若い創業者が億万長者になっただけです。
なぜ日本はR&D投資のリターンを享受できないのか? なぜ、ジャパンドリームと成りえる億万長者が日本でもっと輩出されないのか?
それは日本政府がR&D予算の投資先を間違えており、R&Dを担う人材を取り違えているからではないでしょうか。(ここでいうR&DはハイリスクR&Dです)
これは大学の努力不足でも民間のヤル気不足でもなく、カネが足りないからでもありません。単に全体最適がなされていないだけです。
日本の有り余るカネを日本の大学に投じ、日本全国の優秀な人材がそこでイノベーションを創出し、彼らに知的財産を引き渡し、それを担って世界からカネを集める。このようなサイクルが出来て初めて大学は本来の目的「University」を達成するでしょう。