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プロダクトマネジメントとイノベーション

日本版クラウドコンピューティングは大失敗に終わる?

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既に報道のとおり、総務省が主導して「日本版クラウドコンピューティング」構想を進めているようです。とあるベンダの方のご紹介で、昨年よりこの動きをウォッチしておりました。

IT業界においては、官庁が主導する「ニューディール系」の事業が定期的に登場しますね。かつてのシグマプロジェクトしかり、情報大航海プロジェクトしかり。「情報大航海・・・」については以前にも別のブログで「失敗する」と書いて睨まれたり・・。

どうも米国の民間企業が先んじて事業化し、日本のIT業界が置いていかれそうになると突然このようなプロジェクトが構想されるような気がします。そして、これらのプロジェクトは常に、一部のインテグレータの臨時収入となるだけで、他に何の結果も生まずに終わっていくのです。私は日本版クラウドコンピューティングも同じ運命を辿って失敗するのではないかと考えています。

「失敗」といっても、その定義が曖昧なので、人によっては成功に見える場合があるでしょう。例えば、インテグレータの官庁担当営業はハードウェアがたくさん売れて大成功に見えるかもしれません。したがって、ここでは「失敗」を「民間が儲かる仕組みが出来ずに一時的な税金の消費に終わること」としてみましょう。

IT系ニューディールはプロジェクトであって、事業化ではないということが最大の問題点です。道路行政で言えば、道路を作るプロジェクトであって、何かしらの知的財産をネタに事業化が画策されるものではありません。税金は一瞬のうちに消費され、そこから先は何の有益も生みません。これは儲かる仕組みを作れない「失敗」に位置付けられます。

米国では儲かる仕組みが出来た例があります。米国NSF(National Science Foundation)が主導した情報検索プロジェクトがそうです。このプロジェクトでは、その成果物(知的財産)をスタンフォード大が保持し、後にスピンアウトしたGoogleがそれを事業化して見事にリターンを得たわけです。日本の官庁が主導する情報大航海プロジェクトはどうでしょうか。

日本版クラウドコンピューティングも霞が関クラウドなどの箱モノ作りに税金を使うのではなく、大学等の研究資金として投資し、民間ベンチャーに知的財産を移管し、世界をリードするコンピューティング技術として事業化するまでやってもらわないと困ります。そうしないと投資した税金は将来、何の収益も生まないことになります。

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