「カーブアウト」は本当にベンチャーに効果的か?
最近、タイトルが同じようなトーンになってしまって恐縮です。
さて、日経BP社NBonlineの「カーブアウトは日本に適したベンチャー企業の育成法です」を大変興味深く読ませていただきました。大手企業で育成できないイノベーションを外部に切り出し、関連会社のベンチャーとして育成するテクニックです。
木嶋さんは大手企業からのベンチャー創出を以前から啓蒙されています。この分野は私の専門でもあり、自身の研究にあたっては木嶋さんの著書・論文を数多く参考にさせていただきました。その成果をOA学会誌などにも寄稿させていただいております。(「大手IT企業における「速攻スピンオフ」に最適な人材の育成と組み合わせ」)
ところが、私の研究によると若干事情が異なるのです。自身の経験や他のIT企業の動向調査を通じて明らかになったことは、カーブアウトやスピンオフというテクニックを使っても大手企業から効果的にベンチャーを切り出すことはかなり難しいというものでした。
それはなぜか?
私の仮説は、ベンチャーを切り出す意思決定、ベンチャーの経営、ベンチャーの商流構築といったベンチャーの成否を握るすべての活動に親会社が関与してしまうためだ、というものです。逆に、ベンチャー側もそれを期待するところがあります。すなわち、親会社で育成できないイノベーションの創出に親会社が積極的に関与してしまうジレンマが発生していると言えます。
このような傾向は日本だけではなく、米国の著名企業でも見受けられるようです。
これとは逆に、言葉は悪いのですが、親会社と完全に縁を切ったり、ケンカ別れして出来たようなベンチャー、あるいは、商流をまったく一から作り上げるようなベンチャーの方が成功度合いが桁違いに大きいケースが多く見られます。
私の研究はまだまだ仮設の段階ですが、成功した企業がイノベーションを創出することはかくも難しいということでしょう。
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