コマーシャルオープンソースへの道(3)
「エンドユーザと開発者がタッグを組んで望ましいソフトウェアを共同開発し、それを好きな場所で好きなように動かす」というモデルは大きく分けると、「共同開発」と「運用」の2つのフェーズに分かれます。
まず、共同開発がどのように発展してゆくかを見てみましょう。
ユーザとエンジニアが一体化する共同開発の意義はヒッペル氏の「ユーザイノベーション」、チェズブロー氏の「オープンイノベーション」などの学識者によっても認められていますが、オープンソースコミュニティというのはその最も現代的なスタイルでありましょう。
さて、共同開発は何もソースコードをオープンにするだけが芸ではなく、MicrosoftのMSDN、SAPのNetWeaverプロジェクト、Salesforce.comのAppExchange、ソフトベンダ各社のベータプログラムなど、コードをクローズドにしたままでも十分に成り立つ場合があります。複雑なソースコードを擁するミドルウェアやOSなどでは、ベンダ側のライセンスモデルのしがらみもあって、クローズドなコミュニティで回す方が好都合な場合もあります。
重要な点は、共同開発をきっちりと仕切ってユーザをリードするモデレータ、いわゆるプロダクトマネージャ、あるいはプロジェクトマネージャの役割が必要なことで、これは一般の開発プロジェクトでも同じことです。ボトムアップ型のコミュニティではこの役割がボランティアベースとなり、立場が曖昧になり、コミュニティ自体が衰退してゆくケースが多く見られます。
MicrosoftやSAP、SugarCRMなどのコマーシャルプロダクトのコミュニティでは、当然ながらソフトベンダがコミュニティを仕切ります。この仕切り役が存在すること自体がコミュニティ運営の成功の秘訣であり、付加価値でもあります。
さて、ソフトベンダがソースコードを公開するタイプの開発スタイル、あるいは、ビジネスモデルをコマーシャルオープンソースと呼びますが、ソースコードを公開することでさらにイノベーションが加速することがその狙いであり、「特許は公開した方がイノベーションが加速する」としたヒッペル氏の理論を実践するものでもあります。