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プロダクトマネジメントとイノベーション

1000万台のパソコンを売る無名会社

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タイ政府は100ドルPCを100万台調達するそうです。100ドルPCについては以前、こちらに書きましたが、米国MITメディアラボが主導する超低価格PCプロジェクトが生産するパソコンです。

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タイ政府は、第二弾として全小学生に同PCを与えるそうなので、総調達数は800万台ぐらいになるでしょうか。

MITメディアラボの当初の計画では、アジアや中南米向けに年間に1千万台ぐらいの規模で生産を行う計画だったようですが、タイ一国でその規模に達してしまいますから、早くも計画を上方修正することになりそうです。このご時世に「上方修正」などらやましい限りです。台数ベースでみれば、このプロジェクトはそのうち、DELLを抜いて世界最大のパソコンメーカーとなるでしょうが、これほど知名度の無いパソコンメーカーも珍しい。

さて、このプロジェクトが面白いのは、MITメディアラボの当初のアイディアに対し、先に$29Mもの投資があり、それから生産技術を詰めていったところです。すなわち、ものづくりによる創業ではなく、ことづくりでカネを集めたことです。

こういう「ことづくり」による事業化はまさに米国の得意とするところで、そのためには、技術経営にもとづいたアイディアの説明能力と、投資側の理解能力が必要となります。そして何より、「誰もやっていないことは最大のチャンスである」というオプション志向が欠かせません。投資家は$29Mで、世界最大のパソコンメーカーになるための宝くじ(権利)を買ったわけです。

DELLの時価総額はいまや$50B(5.1兆円)を超えていますから、世界最大のパソコンメーカーになれば、$29Mは1700倍ぐらいに化けるわけですね。

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