真珠はゴミから生まれる
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少し昔の話ですが、ノーベル賞を受賞した田中耕一氏。その受賞につながった研究は、普通は混ぜることのありえない薬品を「間違って」混ぜてしまったことがきっかけで生まれたのだそうです。また、最近の新聞記事で見かけたのですが、京都大学教授の森重文教授もミスをきっかけに数学の難問を解くことができたと話されています。
ミスから難問証明、現実超越した世界...数学の「ノーベル賞」 森重文・京大教授(読売新聞)
逆に言えば、もしこのようなミスの生まれようのない研究環境であったとしたら、これらの偉業はなかった(あるいはもっと遅れていた)かも知れません。そう考えると「ミスをする余地」はあえて残しておいた方が、かえって新しい発見をもたらすことになるのかも知れないなと思ったりします。 「ゼロベース思考」という思考法があります。これは「思い込みや既成概念にとらわれずに発想する思考法」のことです。お客様に価値あるアイディアや意見を提供するために、コンサルタントはゼロベースで考えることがよく求められます。
しかし、「思い込み」はそもそも無意識に形作られていることが多く、いくら気をつけていたとしても思い込みを完全にゼロにすることはできません。たとえばもし、みなさんに「今、どんな思い込みを持っていますか?」と聞いたとしても、すべてを挙げることは難しいと思います。無意識に作られてきた思い込みを避けて柔軟な発想をするためには、「思い込みに囚われないようにしよう!」と意識しているだけでは不十分なのです。
そこで、私は「思ってもみなかったことが起きてしまう状態」をあえて作り出しておくようにしています。もちろん、会社に大打撃を与えるようなミスや、人命にかかわるようなミスは避けなければなりませんが、新しい発見につながるような「正しいミス」であれば、それを許容する環境があったほうがよいと思うのです。
一例を挙げてみます。私は、パソコンのタイピングは平均よりも速い方だと思いますが(「タイピング・オブ・ザ・デッド」で猛練習しました)、一方で打ち間違いが多くあります。つい勢い余って隣のキーを押してしまい、 Backspaceキーやアンドゥ機能に頼るということが頻繁にあります。
もっと正確さを意識してトレーニングをすれば、こういった打ち間違いを減らし、入力スピードをもっと上げることもできるのかも知れません。ですが、あえて私はそうしていません。なぜかというと、これまでに何度も、打ち間違いをすることで新しいを発見してきたからです。
たとえば日本語の文を入力しているとき。数字の「9」を押そうとして、間違えて近くの「F10」キーを押してしまう。すると、入力した文字が半角英数に変換されます。一瞬何が起こったのかと驚きますが、やがてF10キーには日本語を半角英数に変換する機能があるんだなと気づきます。今でもExcelやPowerPointなどで仕事をしていて、偶然に「えぇ、そんな機能あったのか!」と発見を得ることがあります。
真珠貝は、体内に入ってきた小さなゴミにコーティングをすることで真珠を作り出すそうです。無菌状態からは真珠は生まれません。それと同じで、ミスのまったく生まれない環境からは、新しい発見も見つかりにくいと思うのです。
ゼロベース思考を促すためには、「個人の意識」だけでなく「仕事の環境」という観点からも取り組みをしておくということが必要だと考えます。みなさんの職場は「正しいミス」を許容する環境になっているでしょうか。ぜひ振り返ってみてください。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
あいさつが遅れましたが、本ブログの執筆者の井上龍司と申します(プロフィールについてはこちらをご覧ください)。本ブログでは、このように「思考」というテーマを中心に、日常の気づきやノウハウについて(体験談なども織りまぜながら)述べていきたいと思います。
それでは、今後ともよろしくお願いいたします!
ミスから難問証明、現実超越した世界...数学の「ノーベル賞」 森重文・京大教授(読売新聞)
逆に言えば、もしこのようなミスの生まれようのない研究環境であったとしたら、これらの偉業はなかった(あるいはもっと遅れていた)かも知れません。そう考えると「ミスをする余地」はあえて残しておいた方が、かえって新しい発見をもたらすことになるのかも知れないなと思ったりします。 「ゼロベース思考」という思考法があります。これは「思い込みや既成概念にとらわれずに発想する思考法」のことです。お客様に価値あるアイディアや意見を提供するために、コンサルタントはゼロベースで考えることがよく求められます。
しかし、「思い込み」はそもそも無意識に形作られていることが多く、いくら気をつけていたとしても思い込みを完全にゼロにすることはできません。たとえばもし、みなさんに「今、どんな思い込みを持っていますか?」と聞いたとしても、すべてを挙げることは難しいと思います。無意識に作られてきた思い込みを避けて柔軟な発想をするためには、「思い込みに囚われないようにしよう!」と意識しているだけでは不十分なのです。
そこで、私は「思ってもみなかったことが起きてしまう状態」をあえて作り出しておくようにしています。もちろん、会社に大打撃を与えるようなミスや、人命にかかわるようなミスは避けなければなりませんが、新しい発見につながるような「正しいミス」であれば、それを許容する環境があったほうがよいと思うのです。
一例を挙げてみます。私は、パソコンのタイピングは平均よりも速い方だと思いますが(「タイピング・オブ・ザ・デッド」で猛練習しました)、一方で打ち間違いが多くあります。つい勢い余って隣のキーを押してしまい、 Backspaceキーやアンドゥ機能に頼るということが頻繁にあります。
もっと正確さを意識してトレーニングをすれば、こういった打ち間違いを減らし、入力スピードをもっと上げることもできるのかも知れません。ですが、あえて私はそうしていません。なぜかというと、これまでに何度も、打ち間違いをすることで新しいを発見してきたからです。
たとえば日本語の文を入力しているとき。数字の「9」を押そうとして、間違えて近くの「F10」キーを押してしまう。すると、入力した文字が半角英数に変換されます。一瞬何が起こったのかと驚きますが、やがてF10キーには日本語を半角英数に変換する機能があるんだなと気づきます。今でもExcelやPowerPointなどで仕事をしていて、偶然に「えぇ、そんな機能あったのか!」と発見を得ることがあります。
真珠貝は、体内に入ってきた小さなゴミにコーティングをすることで真珠を作り出すそうです。無菌状態からは真珠は生まれません。それと同じで、ミスのまったく生まれない環境からは、新しい発見も見つかりにくいと思うのです。
ゼロベース思考を促すためには、「個人の意識」だけでなく「仕事の環境」という観点からも取り組みをしておくということが必要だと考えます。みなさんの職場は「正しいミス」を許容する環境になっているでしょうか。ぜひ振り返ってみてください。
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あいさつが遅れましたが、本ブログの執筆者の井上龍司と申します(プロフィールについてはこちらをご覧ください)。本ブログでは、このように「思考」というテーマを中心に、日常の気づきやノウハウについて(体験談なども織りまぜながら)述べていきたいと思います。
それでは、今後ともよろしくお願いいたします!
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